「検便」の前日の注意点をご存じですか? 誤って“陽性”にならないためには?【医師解説】

便潜血検査は、便のなかに血液が混ざっているかどうかを調べる検査のことをいいます。一体どのようなときに検査が必要なのか、前日の食事の注意点、検査の内容や費用などを、阿部内科の阿部先生に詳しく聞きました。

監修医師:
阿部 圭一朗(阿部内科)
便潜血検査とは? 検査が必要な人って?

編集部
便潜血検査とは、どんな検査ですか?
阿部先生
便の中に混ざった微量な血液を検出する検査です。目には見えない出血を発見することで、大腸がんや大腸ポリープなど、下部消化管の異常を早期に見つける手がかりになります。
編集部
なぜ便に血が混じると問題なのですか?
阿部先生
便に血液が混ざるということは、消化管のどこかで出血が起きているということ。特に腸で出血があるということは、炎症やポリープ、がんなどの異常が起きている可能性があります。とくに大腸がんは出血が初期サインであることが多いため、早期発見につながります。
編集部
症状がなくても検査を受けるべきですか?
阿部先生
はい。特に40歳以上の人は、症状がなくても年1回の定期検査が推奨されます。大腸がんは初期に症状が出にくいため、無症状の段階での発見が非常に重要です。
編集部
そのほか、どんな人が検査を受けた方がよいのでしょうか?
阿部先生
家族に大腸がんの人がいる場合も、受けることをお勧めします。なぜなら大腸がんには遺伝性のものがあり、両親や祖父母、親戚など血縁関係に大腸がんを発症した人がいる場合は、発症リスクが高くなるからです。そのため40歳を待たず、もっと早い時期から定期的に便潜血検査や内視鏡検査(大腸カメラ)を受けることも検討してよいと思います。
検査の流れ

編集部
便潜血検査はどこで受けられますか?
阿部先生
自治体の健康診断、職場の健診、またはかかりつけ医のクリニックなどで受けられます。検査キットを受け取り、自宅で便を採取して提出するのが一般的です。
編集部
どのように便を採取するのですか?
阿部先生
キットに付属しているスティックで便の表面をなぞるように採取します。トイレに敷く専用シートなどを使えば、簡単におこなえると思います。検査によっては1日分の便を採取することもありますが、2日分の便を採取することで、その精度が高まります。
編集部
採取した便はどうやって提出するのですか?
阿部先生
採便容器に入れた後、指定の袋に入れて医療機関や健診会場に提出します。通常は1週間以内に結果が出ます。陰性なら基本的に問題ありませんが、陽性だった場合は大腸がんなどの疾患の可能性が疑われるため、内視鏡検査(大腸カメラ)などの精密検査を受ける必要があります。ただし、痔や生理でも陽性になることがあるので、詳しくは医師の指示に従ってください。
検査の注意点、費用

編集部
検査前に食事などで注意することはありますか?
阿部先生
検査前日は、赤身肉やレバーなど鉄分を多く含む食品を控えるとより正確な結果が得られます。そのほか、脂質の多い食品や高カロリーな食品、ケーキやお菓子など糖質を多く含むものも避けるようにしましょう。また、ビタミンCの過剰摂取も結果に影響を与えることがあります。
編集部
痔の症状があるときや生理中に検査しても大丈夫ですか?
阿部先生
出血のある状態では、便潜血が陽性になる可能性が高く、正確な判定ができません。痔の出血がひどい場合や生理中は、日程を変更してもらうとよいでしょう。
編集部
「陽性=がんの可能性が高い」ということですか?
阿部先生
いいえ、陽性反応はあくまで「出血がある可能性」を示すもので、必ずしもがんとは限りません。重要な疾患ではなく、たとえば痔やちょっとした炎症でも陽性になることがあります。正確に診断するには内視鏡検査(大腸カメラ)が必要です。
編集部
費用はどれくらいかかりますか?
阿部先生
自治体の健診では無料〜数百円程度が一般的です。健診ではなく、医療機関にて自費で受ける場合は1000〜2000円程度です。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。
阿部先生
便潜血検査が1回でも陽性の場合にはがんの可能性が否定できないため、必ず内視鏡検査(大腸カメラ)を受けるようにしましょう。大腸がんは、早期の段階で発見し治療をおこなえば、高確率に完治することができます。
編集部まとめ
便潜血検査だけで特定の疾患を確定診断することはできませんが、がんをはじめとするスクリーニングには非常に有用な検査です。必ず定期的に便潜血検査を受け、疾患の早期発見に努めましょう。
医院情報
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診療科目 | 内科、消化器内科、皮膚科、小児科、心療内科 |