「心臓が悪くなった」ときの対処法とは? 心臓リハビリテーションの流れや継続のコツも医師が解説!

高木先生

気持ちはよくわかります。しかし、医師の管理のもとであれば、運動はむしろ心疾患の大切な治療の一部です。適切な運動をおこなうことで、心肺機能の改善やQOL（生活の質）の向上、再発予防にもつながります。ただし、自己流の運動はリスクを伴うため、専門的な指導のもとでおこなうことが重要です。

高木先生

心筋梗塞や心不全などの心疾患を持つ人が再発を防ぎ、安心して日常生活を送るための心臓リハビリテーションというプログラムがあります。医師や看護師、理学療法士など専門知識のあるスタッフのもとで、運動療法を中心に、栄養指導や服薬管理、心理面のサポートなども含め、包括的にADL（日常生活動作能力）やQOLの回復を目指します。

高木先生

心筋梗塞、心不全、狭心症、心臓の手術後など、ほぼ全ての心疾患および、下肢動脈の閉塞や狭窄のある人が対象です。一度、心不全や心筋梗塞で入院し、その後なかなか運動をしていない人も適応になる場合があります。また、現時点で診断がついていなくても、例えば「動くと心臓が気になる」といった場合も適応になることがあるので、まずは医療機関で相談してみましょう。

高木先生

「CPX（心肺運動負荷試験）」という検査をおこなえば、個々の心肺機能を正確に測定できます。この結果をもとにすると、無理なく効果的な運動強度を設定することができ、安全性を確保しながらリハビリテーションに取り組めます。

高木先生

はい。例えば「パワープレート」という振動トレーニング機器を使って、関節や筋肉に負担をかけすぎずに効率的な運動がおこなえる医療機関もあります。振動によって筋力や血流の改善が期待でき、高齢の人でも安心して使えるのが特長です。

高木先生

継続することが最も大切です。無理なく実践できる運動内容であること、そして取り組みやすい雰囲気があることが重要です。医療機関での心臓リハビリテーションは、専門スタッフの伴走があることで不安が和らぎ、前向きに続けられるかと思います。

高木先生

「これならできる」と思える内容から始めることが大切です。いきなり負荷の高い運動を目指すのではなく、本人の体力や生活リズムに合ったメニューを選ぶことで、無理なく継続できます。また、実際の筋力や運動レベルを定期的に測定して、実際の効果を具体的に数値化することも励みとなり、習慣として定着しやすくなります。

高木先生

心臓リハビリテーションは運動だけではなく、食事や生活習慣の見直し、服薬管理、心理的サポートも含めた包括的な取り組みです。特に高齢者の場合は、複数の疾患を抱えていることも多いため、「心臓リハビリテーションに通っているから安心」と思わず、自宅での生活も含めた日常生活全体を見直すことが回復や再発予防につながります。

高木先生

手帳やノートに自宅での生活状況を記録しておくのがおすすめです。例えば、「1日に何歩歩いたか」「運動中の息切れはどうだったか」などをメモしておくと、体調管理に役立ちます。また、心臓リハビリテーションに通えば、自宅で取り組む運動プログラムについても、専門知識のある理学療法士などから具体的な指導が受けられるので、より安全に継続しやすくなります。

高木先生

ご本人が前向きに取り組めるよう、無理に励ますのではなく「見守る姿勢」が大切です。体調の変化に気づいたら早めに医療者に伝える、通院や生活のサポートをおこなうといった、身近な人の支えがリハビリテーションの継続に大きく影響します。終わった後のねぎらいの言葉なども、非常に大きな力になるでしょう。

高木先生

体を動かすことは、筋力の維持・向上だけでなく、精神面にも好影響をもたらします。運動を続けることで活力が湧き、前向きな気持ちにもつながるのです。心不全パンデミックが懸念される現代では、寿命は延びても要介護となる期間が10年近くあるとも言われており、健康寿命を少しでも延ばすために、リハビリテーションの重要性がますます高まっています。心臓リハビリテーションに興味のある人は、ぜひ一度お近くの医療機関に相談してみてください。