「睡眠時無呼吸症候群」になりやすい人の“7つの特徴” 太っていなくても注意【医師解説】

睡眠時無呼吸症候群というと、「太っている人が発症するもの」というイメージを持っている人も多いと思います。じつは、必ずしもそうではなく、痩せている人でも発症することがあるのです。一体どのようなことなのか、田中クリニックの田中先生にメディカルドック編集部が聞きました。

監修医師:
田中 佐和子(田中クリニック)
睡眠時無呼吸症候群とはなに?

編集部
睡眠時無呼吸症候群とはなんですか?
田中先生
簡単にいうと、睡眠中に呼吸が止まる病気のことをいいます。医学的には就寝中、1時間に5回以上、10秒間以上の呼吸停止が見られたり、呼吸が弱くなる「低呼吸」を繰り返したりすると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
編集部
睡眠時無呼吸症候群を発症するとどうなるのですか?
田中先生
睡眠中に何度も呼吸が止まると、自然と眠りの質が悪くなります。そのため日中に過剰な眠気を感じるようになり、集中力が低下したり、仕事や勉強に影響を及ぼしたりすることがあります。また運転や操縦の仕事についている場合には、大きな事故につながりかねません。
編集部
そのほかにどのようなリスクがあるのですか?
田中先生
怖いのは、血液中の酸素が不足することにより、心臓や脳の負担が大きくなることです。それにより脳卒中や心筋梗塞、狭心症などを発症するリスクが高くなります。そのほか、睡眠時無呼吸症候群は睡眠中の血圧や血糖値を上昇させるため、高血圧や糖尿病とも深い関わりを持っています。
編集部
睡眠中のことなので、なかなか自分で気づいていない人も多いのでは?
田中先生
はい。日本人の30〜60代のうち、約7人に1人が睡眠時無呼吸症候群ではないかといわれています。しかし、治療を受けているのはその一部であり、多くの人が無自覚のまま放置しているとされています。もし同居の家族や仕事仲間などに睡眠中の無呼吸や低呼吸を指摘された場合には、早めに医療機関を受診しましょう。
どんな人が睡眠時無呼吸症候群になりやすいのか?

編集部
睡眠時無呼吸症候群になりやすいのはどんな人ですか?
田中先生
たとえば、以下に当てはまる人は睡眠時無呼吸症候群になりやすいとされています。 ・肥満 ・顎が小さい ・舌の根本が落ち込む(舌根沈下) ・飲酒の習慣がある ・睡眠薬を使用している ・鼻炎がある ・扁桃・アデノイド肥大
編集部
いろいろな要因があるのですね。
田中先生
これらのなかで特に多いのが肥満です。なぜなら、太っていると首や喉の周りに脂肪が沈着し、寝ているときに気道が圧迫されやすいから。そのため、睡眠時無呼吸症候群になりやすいのです。
編集部
では「痩せていれば睡眠時無呼吸症候群のリスクは低い」と言えるのでしょうか?
田中先生
いいえ、必ずしもそうとはいえません。じつは、欧米人と日本人を比較してみると、欧米人は肥満の人に睡眠時無呼吸症候群が多く見られるのに対し、日本は痩せている人にも多く見られるのです。その理由は、日本人は人種的に顎が小さいから。顎が小さく後退していると舌の根本も後ろ側に位置するようになり、気道が狭くなってしまうのです。
編集部
太っていても、痩せていても睡眠時無呼吸症候群になる可能性があるのですね。
田中先生
はい。どんな人でも睡眠時無呼吸症候群になる可能性を持っています。放置するとそれだけ合併症のリスクも高くなりますから、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には早めに医療機関を受診してください。
睡眠時無呼吸症候群の治療法

編集部
睡眠時無呼吸症候群はどうやって治療するのですか?
田中先生
検査の結果、軽症から中等度と診断された場合には、主にマウスピースによる治療がおこなわれます。これは就寝中、特殊なマウスピースを装着して気道を確保するもの。対症療法ではありますが、マウスピースは非常に小型で持ち運びも便利なので、旅行へ行くときなどにも持参しやすいですし、体に負担が少ないというメリットがあります。
編集部
マウスピースはどこで作るのですか?
田中先生
マウスピースは歯科で作ります。通常、睡眠時無呼吸症候群の検査は内科でおこないます。マウスピースが必要と診断された場合には、その検査結果を持って歯科を受診してください。
編集部
重症の場合にはどのような治療をおこなうのですか?
田中先生
中等度でも日常生活に支障が出ている場合や、重症の場合にはCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)療法をおこないます。これは陽圧を発生する医療機器を使って、気道の閉塞を防ぐ治療法です。就寝中に専用のマスクを鼻に装着し、圧力をかけた空気を気道に送り込むことで、気道が狭くなるのを防ぐのです。専用のマスクが煩わしいといって嫌がる人も多いのですが、この治療をおこなうことにより心血管疾患や脳血管疾患、生活習慣病などの発症リスクを低下できることがわかっています。必要と判断された人は、CPAP療法を継続するようにしましょう。
編集部
睡眠時無呼吸症候群を予防することはできるのですか?
田中先生
はい。たとえば肥満を予防したり、飲酒を控えたりすることは睡眠時無呼吸症候群の予防に重要です。また、口呼吸から鼻呼吸に変えたり、寝る姿勢や枕を変えてみたりすることも役立つかもしれません。そのほか、鼻炎などの症状がある場合には耳鼻科で治療を受けることも大切。顎が小さいという骨格上の問題は改善することは困難ですが、こうした要因を一つずつ見直すことで、発症リスクを低減できると思います。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。
田中先生
睡眠時無呼吸症候群はほかの疾患に比べて、自覚症状が少ない疾患です。そのため、周りのアドバイスを受けて医療機関を受診したところ、睡眠時無呼吸症候群と診断されたという人が圧倒的に多いのです。治療をして、初めて自分の症状に気づくことも多く、「自分では気づかなかったけれど、そういえば日中、ずっと眠気や頭痛に悩まされていた」「朝の目覚めはこんなに爽快なものだったのですね」と感動する方も少なくありません。自覚症状の有無に関わらず、「就寝中に呼吸が止まっている」と家族や仕事仲間から指摘されたり、日中に強烈な眠気を感じたりしたことがある場合には、ぜひとも専門医の診察を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
睡眠時無呼吸症候群はただの睡眠の問題ではなく、心臓や脳などさまざまな臓器に障害をもたらす疾患です。合併症を予防するためにも早期発見が大切。周囲から指摘されたらぜひ、その機会を逃さず、一度診察を受けてみましょう。
医院情報

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