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【闘病】「皮膚筋炎」と「シェーグレン症候群」を抱え、生きる希望を見いだせず憔悴…

 更新日:2025/06/16
【闘病】「皮膚筋炎」で全身に激痛、"どす黒く腫れた足" 「シェーグレン症候群」も抱えながら…

自己免疫性疾患のシェーグレン症候群皮膚筋炎を抱えているさくらださん(仮称)。病気になったことで気づいたことや、ご家族への思い、そして、看護系大学の実習指導教員の立場であるさくらださんだからこそ感じた、看護学生さんへの想いなどを語ってもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年11月取材。

さくらだ あこさん

体験者プロフィール
さくらだ あこ(仮称)

プロフィールをもっと見る

北海道在住、1978年生まれ。看護系大学で実習指導教員として勤務。2005年にシェーグレン症候群と診断され、外来で定期的に経過観察を受けていた。2015年に皮膚筋炎と間質性肺炎を併発し入院。ステロイドと免疫抑制剤による治療で寛解となった。退院後も再燃と寛解を繰り返しているが、現在は内服治療を続けながら職場に復帰している。
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Instagram:@sakurada_aco
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難病だと分かりショックだったが、原因が分かりほっとした気持ちに

難病だと分かりショックだったが、原因が分かりほっとした気持ちに

編集部編集部

病気が判明した経緯について教えてください。

さくらだ あこさんさくらださん

2005年頃から年に1〜2回唾液腺炎を繰り返し、そのたびに耳鼻咽喉科で処方された抗生物質の内服薬で治療していましたが、原因はわかりませんでした。ある時、同じような症状で別の耳鼻咽喉科を受診し、これまでの経緯を話したところ、医師から「ほかの病気の可能性もあるので、血液検査をしてみませんか」と提案されました。

編集部編集部

血液検査ではどのような結果だったのでしょうか?

さくらだ あこさんさくらださん

リウマトイド因子が高値であることがわかり、医師から「将来的に関節リウマチのような症状が出る可能性があります。詳しい検査を希望されるなら、大学病院を紹介しますよ」と言われました。その時点では自覚症状は特になかったのですが、やっぱり不安になって、紹介された大学病院で検査を受けることにしました。検査の結果、唾液や涙がほとんど分泌されていない状態だったことと、自己抗体のひとつである抗SS-A/Ro抗体が陽性だったことから、シェーグレン症候群と診断されました。

編集部編集部

皮膚筋炎とそれに伴う間質性肺炎が判明した経緯についても教えていただけますでしょうか?

さくらだ あこさんさくらださん

2015年の8月ごろ、左手の親指と人差し指の間に、激しいかゆみを伴う発疹が出ました。また、普段は10km走れるジョギングも、100m走っただけで息切れするようになってしまって。体調の変化には気づいていたのですが、仕事や子育てで疲れているのかなと思って、しばらく様子を見ていたんです。ところが、9月になると発疹が背中全体に広がって、どんどんひどくなってきて……。ちょうどその頃、シェーグレン症候群の定期受診があったので主治医に相談したのですが、血液検査では特に異常は見つからず、この時点ではまだ原因はわかりませんでした。その後、主治医の勧めで皮膚科を受診したところ、「原因不明のじんましん」と診断され、ステロイドの内服薬が処方されました。内服を始めると発疹はいったん治まりましたが、処方された薬を飲み切った途端に再発して、みるみるうちに全身へと広がっていきました。

編集部編集部

症状は悪化する一方だったのですね。

さくらだ あこさんさくらださん

そうなんです。10月に入ると、発疹による全身の激しいかゆみに悩まされて、眠れない日が続きました。それに加えて、全身の筋肉に激しい痛みが広がって、動くたびに歯を食いしばるような状態でした。両足は靴が履けないほどにひどくむくんで、どす黒く腫れ上がってしまいました。仕事中には、ペンを持つと指先が青白くなって冷たくなり、手全体が硬直することもありました。次回の定期受診は11月の予定だったのですが、あまりに急激に症状が悪化したので、大学病院に相談して予約を早めてもらいました

初回入院当日_皮膚筋炎の症状として下腿全体の腫れ

編集部編集部

その際の診察ではなんと言われたのでしょうか?

さくらだ あこさんさくらださん

血液検査の結果、筋肉の損傷を示すクレアチンキナーゼ(CK)や間質性肺炎のマーカーであるKL-6が高値を示していて、さらに皮膚筋炎特有のJo-1抗体も陽性であることがわかりました。医師からは「皮膚筋炎と間質性肺炎を併発している可能性が高いですが、確定診断のためにもう少し詳しい検査をしていきましょう」と説明を受けました。その後、筋電図や画像診断などの検査を経て、11月下旬に確定診断がつきました。

編集部編集部

診断がついたときの心境について教えてください。

さくらだ あこさんさくらださん

シェーグレン症候群も皮膚筋炎も聞き慣れない病名だったので、医師から告げられたときは「えっ? 何の病気だろう?」と戸惑いました。医師からは、どちらも「原因不明で治療法が確立していない難病」と説明を受けました。“難病”という言葉を聞いて、「本当に大変な病気になってしまった……。自分はこの先どうなってしまうんだろう」と不安な気持ちがどんどん大きくなっていきました。一方で、病気について調べていくうちに、これまでの症状がぴったり当てはまることに気づき、「この病気が原因だったのか」と腑に落ちました。そして、これからはちゃんと治療を受けられるかもしれないと思えて、少しほっとした気持ちにもなりました。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか? まずはシェーグレン症候群から教えてください。

さくらだ あこさんさくらださん

シェーグレン症候群には根本的な治療法がなく、乾燥症状に対する対症療法が中心です。私の場合、日常生活に大きな支障はありませんでしたが、医師からは「乾燥が気になるようなら、飲み薬や目薬、うがい薬などを実際に試しながら、自分に合うものを見つけていくといいですよ」とアドバイスを受けました。

編集部編集部

それでは、皮膚筋炎とそれに伴う間質性肺炎の治療についても教えてください。

さくらだ あこさんさくらださん

「副腎皮質ステロイドと免疫抑制剤を中心とした薬物療法が必要」と説明を受けました。初めて入院したときは内服での治療で寛解に至ったのですが、2020年に再燃して2回目の入院をしたときには、内服だけでは効果が不十分だったので、ステロイドパルス療法に切り替えることになり、さらにエンドキサンパルス療法も併用しました。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

さくらだ あこさんさくらださん

シェーグレン症候群については日常生活に大きな支障はありませんでしたが、皮膚筋炎と間質性肺炎で入院した際には、明らかに筋力が落ちていると感じる場面が多くありました。特に退院直後は、近所のスーパーで足に力が入らず、途中で車椅子を借りることもありましたし、商品を入れたかごを持ち上げることすらできないこともありました。

編集部編集部

家事などはどうされていたのでしょうか?

さくらだ あこさんさくらださん

退院してからの1カ月間は安静が必要でしたが、その後はリハビリを兼ねて、少しずつ家事を再開していきました。今でも、体調が優れなかったり疲れがたまったりすると、足に力が入らなくなったり、手指が腫れたりすることがあるので、そういう時は無理をせず夫にバトンタッチしています。病気をきっかけに、夫は毎日ご飯を作ってくれるようになり、息子たちも食器洗いや洗濯物干しなどを分担して手伝ってくれるようになったので、とても助かっています。

家族、仕事仲間、看護学生さんに支えられた闘病生活

家族、仕事仲間、看護学生さんに支えられた闘病生活

編集部編集部

病に向き合う上で心の支えになったものを教えてください。

さくらだ あこさんさくらださん

初めて入院した頃(2015年)は、まだコロナ禍ではなく面会が許可されていましたので、家族や友人、職場の上司など、たくさんの方々がお見舞いに来てくれました。夫はちょうど仕事が繁忙期で、家事や子どもの世話にも追われ、とても大変な時期でしたが、時間を見つけては面会に来てくれました。また、お見舞いの品を持って病室を訪れてくれた方々や、片道2時間以上かけて遠方から足を運んでくれた方々もいて、本当にありがたかったです。それから、親身になって話を聞いてくれる主治医や看護師さん、さらには実習中の看護学生さんの存在も、私にとって大きな支えでした。

編集部編集部

特に印象に残っているエピソードなどがありましたら教えてください。

さくらだ あこさんさくらださん

初めての入院生活を終えて自宅に戻ったばかりの頃、退院できたことを喜んだのも束の間、筋力が落ちていて体が思うように動かず、気持ちもすっかり滅入ってしまった時期がありました。そんな私を見かねた夫が、ある日Hilcrhyme(ヒルクライム)というアーティストの『大丈夫』という歌を聴かせてくれたんです。「俺が大丈夫って言えば君はきっと大丈夫で」という歌詞にすごく背中を押されて、そこから少しずつ前向きな気持ちを取り戻すことができました。今でもこの曲は私にとって大切な一曲で、つらいときや自信がもてないときには、いつもこの曲に勇気をもらっています。

編集部編集部

お子さんへの想いもお聞かせください。

さくらだ あこさんさくらださん

初めて入院したとき、長男は小学6年生、次男は小学2年生でした。突然の入院で2カ月間家を空けることになってしまい、不憫な思いをさせてしまったと申し訳なく感じていましたが、息子たちは親に心配をかけまいと気丈に振る舞ってくれていました。今でも「ママ、無理しないでよ」と声をかけてくれたり、さりげなく手伝ってくれたりと、子どもたちなりに気遣ってくれているのが伝わってきて、とても嬉しいです。子どもに余計な心配はかけたくないので、少しでも長く症状が落ち着いていてくれるといいなと思いながら、日々を過ごしているところです。

編集部編集部

看護学生さんはなぜ支えになったのですか?

さくらだ あこさんさくらださん

これも初めて入院したときのことですが、実習中の看護学生さんが私の担当になってくれたことがありました。その頃の私は、ステロイドの副作用で不眠や抑うつ状態に陥っていて、さらに一生治らない病気を抱えて生きることへの希望が持てず、すっかり憔悴しきっていました。そんな中、その学生さんは毎日のようにそばにいてくれて、泣いている私の背中をさすりながら、じっくりと話を聴いてくれたんです。私のつらさや思いを否定せず、ありのままを受け止めてくれるその姿勢に、どれほど救われたかわかりません。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

さくらだ あこさんさくらださん

「自分を守れる自分になってね。つらいときは休んでいいし、むしろ休むことが大切だよ」と伝えたいです。病気になる前の私は、人に頼ることが苦手で、限界まで自分を追い込む生き方をしていましたが、今は休むことは決して弱さではなく、自分を守るための大切な力なんだと心から実感しています。

「見えない病気」を抱えている人に、少しでも思いを寄せてほしい

「見えない病気」を抱えている人に、少しでも思いを寄せてほしい

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

さくらだ あこさんさくらださん

現在は2カ月に1回のペースで定期受診して、その時の病状に合わせて薬の調整をしてもらっています。治療としては、プレドニン錠(8mg/日)、リンヴォック錠(7.5mg/日)、プラケニル錠(200mgと400mgを交互に1日ずつ)を服用しています。体調には波がありますが、薬が効いているおかげでつらい症状もなく、血液検査の数値も安定しています。ただ、病気が再燃すると筋力がものすごく落ちてしまって、それを取り戻すのにかなり時間がかかるんです。なので、無理のない範囲で筋トレやジョギングなどを取り入れながら、できるだけ身体を動かすようにしています。

編集部編集部

お仕事の方はいかがでしょうか?

さくらだ あこさんさくらださん

実習期間中(看護系大学で実習指導教員として働いている)はフルタイムで働いていますが、体調が優れないときには職場と相談して、時短勤務にしてもらったり、お休みをいただいたりなど、柔軟に対応してもらっています。職場の先生方からは「少しでも長く働いてほしいから、無理をしないでね」と温かい言葉をいただくこともあって、理解ある環境に恵まれていることを本当にありがたく思っています。また、病気の経験はつらいものでしたが、患者さんの目に映る世界を体験できたことは、私にとって大きな意味があり、看護師としての成長にもつながったと感じています。学生たちと一緒に『患者さんにとって本当に望ましい看護とは何か』を考えるうえでも、この体験は大いに役立っています。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

さくらだ あこさんさくらださん

医療従事者の方々には、患者さんの気持ちに寄り添い、その人の人生にともに向き合おうとする姿勢を大切にしてほしいと思います。特に、難病患者が抱える課題は、症状や治療だけでなく、日々の生活や仕事、結婚、出産など多岐にわたりますし、そうした課題が複雑に絡み合っていることも少なくありません。だからこそ、患者さんの全体像をしっかりと捉え、病気と向き合いながら「自分らしく生きる」ために何ができるかを一緒に考えていくことが、患者さんにとって何よりも大きな支えになるのではないでしょうか。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

さくらだ あこさんさくらださん

私自身もそうですが、世の中には外見からは病気を抱えていることがわからない人が多くいます。こうした「見えない病気」を抱える方は、病気のつらさを理解されにくく、誤解されたり、偏見の目で見られたり、心ない言葉に傷ついたりすることも少なくありません。病気は必ずしも「見える」ものではないということを、もっとたくさんの方々に知っていただけるといいなと思いますし、困っている方がいたら、そっと優しく手を差し伸べられる社会になってほしいと願っています。

編集部まとめ

人を頼ることは実はとても難しく、さくらださんのように、限界まで頑張ってしまう人も少なくないのではないでしょうか。さくらださんがインタビューでおっしゃられていた、「どれだけ多くのことを成し遂げるかではなく、どれだけ自分を大切にしながら、周りの人たちと支え合って生きていけるか」という言葉を、読者のみなさんもぜひ心に留めていただけると嬉しいです。

 

田島 実紅

記事監修医師
田島 実紅(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師