「飛蚊症」は放置すると“失明リスク”があることをご存じですか? 原因・対処法も眼科医が解説!

「飛蚊症」は、モノを見ているときに黒い虫のようなものが動いて見える状態のことを指します。飛蚊症を放置すると網膜剥離が進行するリスクもあり、その場合には早急な治療が必要になります。今回は、飛蚊症の症状や原因、放置するリスクなどについて、「秋野眼科医院」の秋野先生に解説していただきました。
目次 -INDEX-

監修医師:
秋野 邦彦(秋野眼科医院)
飛蚊症とは?

編集部
まず、飛蚊症について教えてください。
秋野先生
目の前に小さな虫やゴミのようなものが飛んで見えることを飛蚊症と言います。そのほかにも、目の前に雲のようなものが浮かんで見えたり、墨やたばこの煙を流したように見えたりすることもあり、見え方は人それぞれです。
編集部
どのようなときに、症状が表れるのでしょうか?
秋野先生
ある日突然見えたり、気がついたら見えるようになっていたりと、個人差があります。患者さんに話を聞くと、快晴の空を見たときに飛蚊症が目立ったり、真っ白な壁紙を見たときに出やすかったりすることがあるようです。また、疲れたときに症状が強く出る人も多くいます。目の前に見えるゴミのようなものは完全に消えることはありませんが、徐々に慣れてきて、次第に気にならなくなってきます。
編集部
見える位置に基準はあるのですか?
秋野先生
いいえ。視界の中心部に見えることが多いようですが、人によっては視界の端に見えることもあります。また、見える数も人それぞれで、1つだけ見えるという人もいれば、たくさん見えることもあります。見える日もあれば見えない日もあるというように、症状には個人差が多く見受けられます。
飛蚊症の原因

編集部
飛蚊症の原因はなんですか?
秋野先生
飛蚊症の原因は、硝子体の濁りです。硝子体とは、眼球の大部分を占めているゼリー状の組織であり、水晶体の後ろにあって眼球の形を保持したり、網膜を保護したりする役割を担っています。本来、硝子体の成分は99%が水で透明ですが、硝子体が濁ってしまうと、その影が網膜に映り、目の前に見えるようになるのです。
編集部
なぜ、硝子体が濁るのでしょうか?
秋野先生
硝子体が濁る原因は多岐にわたります。生まれつきのものもありますし、加齢によって徐々に濁りが生じるものもあります。また、強い近視や遺伝性の硝子体の疾患なども関係しています。そのほか、網膜裂孔や網膜剥離など病的な要因によって起きることもあります。
編集部
病気が原因になることもあるのですか?
秋野先生
はい。例えば、硝子体の背後にある網膜という組織は、カメラでいうフィルムに該当する部分ですが、硝子体が加齢などによって液化すると引っ張られ、網膜に裂け目や穴ができてしまいます。この状態を網膜裂孔と言い、飛蚊症の原因になることがあります。
編集部
そのほかにも危険な疾患はありますか?
秋野先生
網膜裂孔が進行すると網膜剥離といって、網膜が剥がれた状態になってしまいます。網膜剥離が起きると視野が一部欠損し、視力低下や飛蚊症がみられることもありますが、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。しかし、そのまま放置すると失明することもあるため、大変危険です。
飛蚊症の治療法・予防法

編集部
飛蚊症を感じたら、どうしたらいいのでしょうか?
秋野先生
病的な飛蚊症を放置することで網膜剥離が進行し、失明に至ることもあるので、飛蚊症に気づいたら早めに眼科を受診しましょう。特に網膜剥離は50歳代以降に発症することが多いので、そのあたりの年代で突然飛蚊症を自覚した場合には、網膜裂孔や網膜剥離の可能性を調べてもらうことが大切です。
編集部
飛蚊症の検査では、どのようなことをおこなうのですか?
秋野先生
飛蚊症の検査では視力や眼圧を測るほか、散瞳剤(さんどうざい)を点眼して瞳孔を開き、硝子体や網膜に異常がないかを調べる眼底検査もおこないます。目薬の効果が切れるまで5〜6時間程度かかるので、その間は車の運転をすることができません。公共の交通機関を使って眼科を受診しましょう。
編集部
どのように飛蚊症を治療するのですか?
秋野先生
生まれつきのものや、加齢などによる飛蚊症の場合には特に治療は必要ありません。しかし、網膜剥離や網膜裂孔を原因としている場合には、それぞれの疾患に応じた治療が必要になります。網膜裂孔の場合、まだ剥離していなければレーザーを裂孔の周囲に当てて網膜を焼きつけて、穴を閉じるレーザー光凝固法がおこなわれます。一方、網膜剥離を起こしている場合には手術が必要です。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
秋野先生
眼科において、飛蚊症は非常に多く遭遇する症状です。これに加え、光がチカチカ見えるという光視症の症状がみられたら、網膜剥離の前兆であることが多いとされています。このような異常を感じたら、できるだけ早めに眼科を受診してください。また、目に異常はなくても念に1回は眼底検査を受けることも大切です。近視がある人は20代でも目の疾患を発症するリスクがあるので、定期的に眼底検査を受けましょう。近視がない人でも加齢とともに目の疾患を発症する可能性が高まるため、40代になったら眼底検査を年1回受けることをおすすめします。
編集部まとめ
飛蚊症は決して珍しい疾患ではありませんが、放置すると網膜剥離が進行し、ひどい場合には失明してしまうこともあります。「いつものこと」と油断せず、念のため眼科を受診するようにしましょう。
医院情報

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| アクセス | 東京メトロ有楽町線「千川駅」 徒歩1分 |
| 診療科目 | 眼科 |



