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「糖尿病」になったら治療を一生続けないといけない? 3つの治療法・継続するコツを医師が解説!

 公開日:2025/04/23

糖尿病治療は長く継続する必要がありますが、実際には途中で挫折してしまったり、自分の都合の良い方法にアレンジしてしまったりする人が多いようです。糖尿病を悪化させず、合併症を防ぐには正しい治療を継続することが重要です。そこで今回は「赤塚クリニック」の赤塚先生に、糖尿病治療を継続するコツについて解説していただきました。

赤塚 元

監修医師
赤塚 元(赤塚クリニック)

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名古屋大学医学部卒業。その後、岡崎市民病院臨床研修・消化器内科、三重県立総合医療センター消化器内科、三重大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科に勤務。2010年、三重県津市に位置する「赤塚クリニック」の院長に就任。日本内科学会認定総合内科専門医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医。

糖尿病治療とは?

糖尿病治療とは?

編集部編集部

糖尿病の治療では、何をするのでしょうか?

赤塚 元先生赤塚先生

そもそも、糖尿病治療の目標は「健康な人と変わらない人生を送ること」とされており、健康な人と変わらない寿命を確保し、糖尿病によって起こる様々な合併症を抑えることが必要です。そのためには、血糖・血圧・脂質代謝を良好にコントロールし、適正体重を維持することが重要であり、治療には「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3本柱があります。これらの治療をおこなって、重篤な合併症を予防するのが糖尿病治療の目的となります。

編集部編集部

3つの治療法について、詳しく教えてください。

赤塚 元先生赤塚先生

食事療法では、摂取エネルギーを適正に保ち、体重をコントロールすることを目指します。食事から摂取する1日のエネルギー量を身長や日常の身体活動量から計算し、バランスよくエネルギーを摂取するようにします。

編集部編集部

運動療法とは?

赤塚 元先生赤塚先生

有酸素運動と筋トレなどのレジスタンス運動を並行しておこなうと、効果が高まるとされています。糖尿食後に血糖値が上昇するのを抑える効果もあります。

編集部編集部

それらに薬物療法を加えるのですね。

赤塚 元先生赤塚先生

そうです。ただ、多くの糖尿病患者さんで最も必要なのは食事療法と運動療法です。薬物療法はあくまでもこれらを補完する役割であり、食事と運動で血糖をきちんとコントロールできるのであれば、薬剤を使用しなくてもいいケースもあります。

糖尿病治療は一生続く?

糖尿病治療は一生続く?

編集部編集部

「糖尿病治療は一生継続する必要がある」と聞きました。本当ですか?

赤塚 元先生赤塚先生

糖尿病治療の目的は、完治を目指すというより、合併症をコントロールして健康な人と変わらない人生を送ることです。糖尿病は主に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に分類されます。1型糖尿病に多いとされる、インスリンの分泌機能が完全に損なわれている患者さんは、生涯にわたってインスリン注射を継続する必要があります。2型糖尿病は体質などの遺伝的要素に生活習慣などが組み合わさることで発症しますが、血糖値を下げることはできても血糖値が上がりやすいという体質は変えることができません。また、2型糖尿病を発症した時点でインスリンを分泌する能力が半分に落ちていることも報告されています。そのため、2型糖尿病も生涯にわたって血糖コントロールをすることが必要です。

編集部編集部

2型糖尿病でも治療の継続が必要なのですね。

赤塚 元先生赤塚先生

ただし、食事や運動を見直すことでインスリンの分泌機能が回復し、血糖が上手くコントロールできるようになれば、薬物療法がいらなくなる患者さんもいらっしゃいます。

編集部編集部

でも、食事療法や運動療法はずっと続けなければならないのですね。

赤塚 元先生赤塚先生

そうですね。糖尿病治療の食事療法や運動療法は「糖尿病のため」に限ったことではなく、様々な病気の予防にもつながります。そのため、健康管理の一環と考えて継続してほしいですね。

編集部編集部

途中で中断してしまったらどうなるのですか?

赤塚 元先生赤塚先生

患者さんの自己都合で治療を中断してしまった場合には、血糖などの管理状態が悪化し、合併症がさらに進行してしまう場合があります。また、糖尿病性神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症など重篤な合併症を招き、失明したり、人工透析が必要になったりすることもあります。そのため、治療を自己判断で中断することは非常に危険です。どうしても治療を続けることが難しい場合は、必ず主治医に相談しましょう。

糖尿病治療を継続するコツ

糖尿病治療を継続するコツ

編集部編集部

糖尿病治療を継続するコツはありますか?

赤塚 元先生赤塚先生

生活習慣が一因となって発症した糖尿病の場合には、その生活習慣を変えることが重要です。しかし、今までの生活習慣を変えるには力が必要です。頑張ったらその頑張りを褒めてもらいたいものです。一番身近にいて褒めてくれる人は自分です。少しでもいいから先月の自分よりも健康にいい生活を送ることができたら、ぜひ自分を褒めてください。最終的に目標とするベストな生活を見据え、それに近づけていくことが重要です。それができていれば、自分で自分を褒めてもいいと思います。

編集部編集部

自分を褒めることも大切なのですね。

赤塚 元先生赤塚先生

はい。それから、通院が負担だという患者さんもいらっしゃいますが、今までお答えしたとおりで、こればかりは「通院しなくてもいい」とは言えません。糖尿病になった自分の体のメンテナンスに必要な時間だと割り切って、継続して通院していただきたいと思います。なお、通院間隔については主治医と相談していただければと思います。

編集部編集部

食事療法と薬物療法で血糖をコントロールできている場合も、定期的に通院する必要はありますか?

赤塚 元先生赤塚先生

コントロールが正しくおこなわれているか、合併症の前兆は現れていないかなどを確認する必要があります。患者さんの病状によって通院間隔は異なりますが、必ず定期的に医師の診察を受け、状況を確認しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

赤塚 元先生赤塚先生

心筋梗塞・脳卒中・下肢動脈疾患などの「大血管障害」や、糖尿病性神経障害・糖尿病網膜症・糖尿病性腎症などの「細小血管障害」は、糖尿病でなければ簡単には発症しません。しかし、血糖コントロールが悪い糖尿病の患者さんには、それらの合併症が簡単に起こってきます。一方で、糖尿病と診断されても、その後の治療で合併症の発症を防ぐことが可能です。患者さん一人ひとりに人生があり、糖尿病の治療をおこないながら、患者さんが望む人生を送れるサポートをするのが糖尿病専門医であると思います。私も重大な責任を担っていることを覚悟して、日々診療をおこなっています。困っていることや悩んでいることがあれば、ぜひ遠慮なく医師にご相談ください。

編集部まとめ

「一生治療を継続しなければならない」と聞くと、ガッカリする人も多いかもしれません。しかし、糖尿病の治療は何も特別なことではなく、健康的な生活をして血糖コントロールをすることです。改めて健康を見直す機会を与えられたと考え、ポジティブに取り組んでいきましょう。

医院情報

赤塚クリニック

赤塚クリニック
所在地 〒514-2211 三重県津市芸濃町椋本890番地1
アクセス 三重交通バス「椋本」バス停 徒歩3分
診療科目 内科、糖尿病内科、消化器内科

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