目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. もしや発達障害? 「子どもの喋り始めが遅い」と判断する基準をご存じですか?【医師解説】

もしや発達障害? 「子どもの喋り始めが遅い」と判断する基準をご存じですか?【医師解説】

 公開日:2025/09/18
「子どもの喋り始めが遅い」と判断する基準をご存じですか 原因も医師が解説

「子どもの喋り始めが遅いのだけど、これは病気じゃないか」と悩んでいるお父さん、お母さんもいるのでは? 特に初めての子どもだと戸惑いも多く、誰にも相談できず困っている人も多いかもしれません。そこで、子どもの喋り始めが遅い原因や取るべき対応について、20条小児科・内科クリニックの佐藤先生に教えてもらいました。

佐藤 琢史

監修医師
佐藤 琢史(20条小児科内科クリニック)

プロフィールをもっと見る
地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立総合病院、地方独立行政法人 静岡県立病院機構 静岡県立こども病院、金町こどもクリニック 院長などを経て現職。日本小児科学会 小児科専門医。日本小児科学会、日本小児感染症学会の会員。

子どもの喋り始めが遅いのはなぜ?

子どもの喋り始めが遅いのはなぜ?

編集部編集部

子どもの喋り始めが遅い原因はなんですか?

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

そもそも子どもが喋り始めるタイミングは個人差が大きく、一人ひとりで違うのは当然です。しかし、場合によっては何らかの原因で喋り始めが遅れていることもあり、たとえば難聴、自閉スペクトラム症などの発達障害、発達性言語障害なども原因として考えられます。

編集部編集部

病気が原因で喋り始めが遅いということもあるのですか?

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

場合によってはそういうこともあります。たとえば難聴などの聴覚障害は、喋り始めが遅れる原因のひとつになります。聴力が低下しているために周囲とのコミュニケーションが難しくなり、その結果、子どもの喋り始めも遅れてしまうのです。

編集部編集部

そのほかにも自閉スペクトラム症が関係していることもあるのですか?

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

はい。自閉スペクトラム症やADHD(注意欠如・多動性障害)などの発達障害が関係していることもあります。発達障害があると情報処理が遅れたり、周囲とのコミュニケーションが困難になったりして、発語が遅れることがあるのです。そのほか、知的障害や脳機能障害なども、喋り始めるのが遅れる原因になります。

喋り始めるのが遅れる原因

喋り始めるのが遅れる原因

編集部編集部

発達性言語障害とはなんですか?

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

簡単にいうと聴覚障害、知的発達の遅れ、自閉スペクトラム症など特定の原因がなく、言語の理解や表現のみが遅れる状態のことを「発達性言語障害」といいます。医学的には、発達性言語障害は「表出性」と「受容性」に分類され、表出性とは言葉を理解することはできるものの、自分の気持ちを言葉で表現することが難しいという状態、一方、受容性とは、言葉の意味を理解することが難しい状態のことをいいます。遺伝的要因や脳発達の問題、聴覚情報処理の問題などいろいろな原因が考えられています。

編集部編集部

いろいろな原因が考えられるのですね。

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

はい。そのほかにも性格や環境なども大きく関係しています。たとえば性格的におとなしい子どもや家族との会話が少ない環境に育った子どもは、喋り始めが遅れることもあります。

編集部編集部

一般的に、どのようになったら「喋り始めが遅い」と判断できるのですか?

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

喋り始めるタイミングは個人差が大きく一概に言うことはできませんが、一般に言語の発達は子どもの成長に伴い、段階的に進んでいきます。一応、年齢に応じて言語発達の目安が定められており、そこから大幅に遅れると言語発達が遅れていると評価されます。たとえば生後2カ月頃から赤ちゃんは音を発するようになり、1歳になる頃から「パパ」「ママ」など簡単な言葉を話し始めます。2歳になると2つの言葉を組み合わせて簡単な文章を話すようになり、3歳や4歳になると「自分は幼稚園へ行く」など、主語と述語で構成される文章を口にできるようになります。

編集部編集部

その基準から大幅に遅れると言語発達遅滞と評価されるのですね。

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

理論上ではそうなります。しかし、必ずしもそうとは言えず、個人差が非常に大きいので慎重に考える必要があります。実際には1歳半健診や3歳健診の際に、子どもの言語能力が評価される機会があり、ここで遅れが見られれば医師や言語療法士などのサポートが必要になることもあります。ただし、これらの健診で遅れが見つかっても、すぐさま言語発達遅滞と診断されるわけではありません。自己判断せず、小児科などの医療機関で適切に診断を受けることが大切です。

子どもの喋り始めが遅いかも、と心配になったら?

子どもの喋り始めが遅いかも、と心配になったら?

編集部編集部

子どもの喋り始めが遅いかもしれない、と思ったらどうしたらよいのでしょうか?

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

もし、1歳半健診3歳健診が近ければ、そこで医師に相談してもよいでしょう。そうでなければかかりつけの小児科や公共の支援センター、保健センター、子どもセンターの窓口に相談をしてみましょう。

編集部編集部

子どもの言語発達を促すために家庭でできる取り組みはありますか?

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

とにかくお父さんやお母さんが、子どもにたくさん話しかけてあげることが大切。たくさん会話をすることで、子どもはどんどん言葉を覚え、会話をする力が育っていきます。あわせて、家族内で会話をすることも大事。夫婦間でよく話をする家庭の子どもは、発語がスムーズといわれています。

編集部編集部

話をすることが大切なのですね。

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

はい、もし兄弟や姉妹がいたらよく遊ばせるとよいでしょう。それから児童館や公園へ出かけ、同じ年くらいの子どもと積極的に触れ合わせるのもよいと思います。実際、「保育園で0歳から積極的に周囲と関わっている子どものほうが、言葉が早い」「兄弟がいる子どものほうが、一人っ子の子どもよりも言葉が早い」というデータもあります。ただし、個性もありますし、本人の限界の問題もありますから、もし言葉が遅くても見守ってあげるようにしましょう。

編集部編集部

現在ではスマートフォンやタブレットを子どもに与えて大人しくさせるケースも多いと思います。

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

それは、子どもの発語や脳の発育によい影響を与えないと考えられています。たしかにスマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスを通して、子どもはたくさんの言葉に触れることになりますが、あくまでも受動的な刺激であり、能動的に言葉を発する能力を磨くことはできません。また、子どもにデジタルデバイスを見せると、目が悪くなる、内斜視になる、脳が萎縮するといった問題も指摘されています。小さいうちはできるだけデジタルデバイスを与えず、その代わりに、お父さんやお母さん、兄弟、友達と会話する機会を多く設けるようにしましょう。

編集部編集部

最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあれば。

佐藤 琢史 先生佐藤 先生

「うちの子は1歳半だけど、あまりしゃべらない」と、心配しているお父さんやお母さんはたくさんいます。しかし、子どもの発語には個性があり、「まだ焦らなくてもいいのでは?」と思うケースもたくさんあります。ただ、一人で考えているとどうしても焦ってしまうかもしれません。心配なときはかかりつけの小児科医にご相談ください。なにより、お父さんやお母さんがたくさん子どもに話しかけ、成長を支えてほしいと思います。

編集部まとめ

特に初めての子どもの場合、子どもの発育に対して悩むことも多いと思います。そんなときは、ぜひかかりつけの小児科医に相談を。また同じ年齢の子どもがいるお父さんやお母さんとつながりを持っておくのも、悩みの解決に役立つかもしれません。

医院情報

20条小児科内科クリニック
所在地 〒080-2470 北海道帯広市西20条南3丁目29の2
アクセス JR根室本線「西帯広」駅より車で8分
診療科目 小児科、内科

この記事の監修医師