【闘病】「大腸がん」で2度手術 後悔は『”要精密検査”を放置してしまった』こと

30代で大腸がんを経験された「ゆか」さん(仮称)。大腸がんは部位別の罹患者数が日本で最も多いがんであり、30代から患者数が増加し始めるがんでもあります。罹患者数は現在も年々増加しており、日本人なら誰もが注意すべきがんの1つです。ゆかさんは早期大腸がんで2度の手術を経験し、現在は社会復帰も果たしています。彼女の体験から、大腸がんを早期発見する重要性やセカンドオピニオンの大切さについて知る機会にしましょう。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年11月取材。

体験者プロフィール:
ゆかさん(仮称)
30代女性。2022年秋、健康診断にて便潜血を指摘され、翌2023年3月に近所のクリニックで大腸カメラを行い、大腸ポリープを発見した。大学病院に紹介を受け、内視鏡でポリープを切除してもらったところ、早期の大腸がん(上行結腸癌)と宣告を受けた。その後、セカンドオピニオンや追加手術を行い、ステージⅠのがんと判明。現在は経過観察しながら、仕事と家事・育児を両立している。
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セカンドオピニオンのおかげで手術への踏ん切りがついた

編集部
はじめに、ゆかさんご自身の闘病体験を通して一番伝えたいことを聞かせてもらえますか?
ゆかさん
何よりも大切なことは、検診を含めて病気の予防を意識することです。私の場合も検診で指摘され、手術を経て今も元気に過ごせています。もし病気になってしまったとしても、早期発見であれば、私のようにほぼ元通りの生活ができる可能性は高いです。だからこそ、正しい情報を知って、早期治療することがとても重要だとお伝えしたいです。
編集部
ありがとうございます。では早期大腸がんが判明した経緯についても教えていただけますか?
ゆかさん
きっかけは健康診断で「便潜血」と指摘され、精密検査になったことからです。その時はまったく自覚症状もなかったのですが、近隣のクリニックで大腸カメラを受けたところ、大腸ポリープが見つかりました。その日のうちに大学病院宛ての紹介状を書いていただき、大学病院で手術を受けました。そして、手術後の病理診断の結果、「早期大腸がん」と宣告されました。
編集部
ゆかさんは年代も若いですから、ショックも大きかったのではないでしょうか?
ゆかさん
「悪い夢でも見ているのかな?」という感じでした。外来では「良性だと思う」と言われていたこともあって、自分も「良性だ」と信じて安心しきっていたため、理解が追いつきませんでした。
編集部
医師からはどのように治療を行うと説明を受けたのですか?
ゆかさん
まずはESD(内視鏡的粘膜下層はく離術)という手法で内視鏡手術を行い、大腸ポリープを切除し、その後必要があれば追加的外科手術も検討するとの話でした。追加手術に関しては、大腸がんガイドラインでは「弱く推奨する」に該当するということで、追加手術を受けるかどうかは私の判断に委ねられました。
編集部
判断の難しいところですが、ゆかさんはどうされたのでしょうか?
ゆかさん
手術する場合は大腸を大きく切除する必要があるとのことで、とても大きな決断になります。そこで、家族の勧めもあり、がんの専門病院でセカンドオピニオンを受けることにしました。その病院の大腸外科では、追加手術を推奨されたため、そのまま手術を受けることにしました。
編集部
追加手術はどのように行い、どのくらい大腸を切除したのですか?
ゆかさん
2023年8月に追加手術を行い、傷が小さくて済む腹腔鏡手術で行いました。切除したのは約25cmほどです。幸い、病理検査でステージIのリンパ節転移なしだったので、今は3か月に1回の通院と検査で元気に過ごせています。
ネガティブな情報が多いからこそ普段通りの生活のありがたみを感じられた

編集部
話は少し前の時期に戻りますが、病気が判明してから生活にどのような変化があったのでしょうか?
ゆかさん
常に意識していたのは、元々の生活を変えないことです。病気が判明してからも極力今までと同じ生活を送るようにしていました。がんのことばかり考えていても塞ぎこんでしまいますし、何よりも自分自身が辛くなってしまいます。ですから、普通に出勤して、友達とも遊びに行くなど、生活はなるべくそれ以前と変えないようにしていました。これは心の支えになる部分でもあったと思います。ただ、通勤時間や家事の途中などに自分の時間ができると、ふと不安になってがんについて調べてしまい、ネガティブな情報に心を乱されることも少なくありませんでした。色々な情報に苦しめられ、不安を解消するために情報を探し、余計に振り回されて疲れることも多かったです。
編集部
振り回されることも多かったと思いますが、ゆかさんが心の支えにしていたものは何でしょうか?
ゆかさん
やはり家族です。2023年に2回の手術を行いましたが、2回ともお気に入りの家族写真を病院に持っていき、病室に飾って元気をもらっていました。コロナウイルスの感染防止のため、面会こそできませんでしたが、夫が息子の動画を送ってくれたので、それを見て癒されていました。
編集部
ご家族にとっても大変な期間でしたね。
ゆかさん
家族、両親、妹たちにとても心配をかけたと思います。特に入院中や療養中、仕事と両立させながら、2歳の息子の育児をしてくれた夫には感謝しかありません。これからの人生は、今まで以上に周囲の人への感謝を忘れず、できる限りの恩返しをしていきたいと思っています。
編集部
ほかにも何かありますか?
ゆかさん
病室が4人部屋だったこともあり、同室の方と仲良くなり、たくさんお話したり、術後のリハビリで一緒に歩く練習もしたり、夕陽を見に行ったりするのが楽しかったです。入院中ではありましたが、良い思い出でもありますし、大部屋で良かったと思います。また、そこからのご縁で、今でも連絡を取り合っている方もいます。
編集部
ゆかさんの現在の体調についても教えてください。
ゆかさん
今は体調も良好で、仕事や育児など全く支障なく過ごせています。ただ私の場合、食べ物には気を付けようと思っていて、自炊中心のバランスが良い食事を摂るようにしています。また、睡眠をしっかりとること、できるときは運動をすることも意識しています。メンテナンスも重要ですから、胃カメラと歯医者の定期健診も続けています。
編集部
仕事にはいつ頃から復帰されたのでしょうか? また、普段の生活で意識していることはありますか?
ゆかさん
仕事は追加手術から3カ月後の2023年11月に復帰しました。ありがたいことに以前と同じ職場・職種・時間帯で働けており、充実した日々を送れています。意識していることは、今回の闘病を経て、「やりたいことはちゃんとやろう」と思うようになりました。
若いからと油断せずに1度は内視鏡検査を受けてほしい

編集部
ゆかさんの経験を通して、もし昔の自分に声をかけられるなら、どんなことを伝えたいですか?
ゆかさん
健康診断で「要精密検査」と出たら、とにかく早く受診してほしいです。私の場合、もともと便秘体質で、出血することもありました。思い込みはよくないのですが、精密検査という結果が出るのも便秘のせいだと思っていました。「いつかは受診しなければ」という気持ちがある一方で、あまり急ぐ気持ちにもなれず、日々の生活の忙しさや保育園の役員など、色々なことに忙殺されていたと思います。健康診断の結果が届いてから初回受診までに半年近く経っていたため、すぐに受診できていれば、大腸を大きく切除せずに済んだかもしれません。そういった後悔が今もあるからこそ、健診結果を甘く見ないでほしいです。
編集部
ゆかさんが大腸がんについて甘く見ている人、普段病気を意識せずに暮らしている人にアドバイスするなら、どんなことを伝えますか?
ゆかさん
私が人生初の大腸カメラをしたのが30代前半、そこで見つかったポリープが大腸がんでした。30代くらいだと、大腸カメラをしたことがないという方がほとんどではないかと思います。しかし、20~30代でもがんにならないとは限りませんから、年齢を問わず、気になる人は、大腸カメラを受けてみることを個人的におすすめしたいです。
編集部
次に、医療従事者に伝えたいこと、期待することはありますか?
ゆかさん
医療従事者の方には本当に感謝しかありません。手術も上手にしていただき、入院中は毎日体調を心配してくれて、本当にありがとうございました。特に私の主治医は自分の見解をしっかりと伝えてくれて、私の質問にも丁寧に答えてくださる方で本当に信頼できました。今回の私を含め、医療知識のない人が急に医学的な内容を説明されても、その場で即座に質問したり、理解したりすることは難しいと感じています。患者にとって、しっかりコミュニケーションをとってくださると安心感につながり、とても嬉しく感じるので、医療従事者の方もぜひ気にかけてみてほしいです。
編集部
本記事の読者にゆかさんからメッセージをお願いします。
ゆかさん
健康は何ものにも代えがたいものだと思います。もちろん、健康診断をしっかり受けて予防することが何よりも大切ですが、日頃から自分の健康に気を遣うことも忘れてはいけません。今は医療の進歩のおかげで、たとえがんになってしまったとしても、早期治療できれば社会復帰も大いに期待できます。私もがん宣告を受けた日、すべてを失ったと思いました。しかし、しっかり治療を受けた今、予想もできなかったくらい元気に過ごせています。ですから、病気になってしまっても、正しい情報と知識を身につけ、早期治療を行うことが本当に大事だと感じます。
編集部
早期発見、早期治療は本当に大事だと思います。
ゆかさん
私ががんになったとき、「もう仕事は続けられない」と思い、一度は退職するつもりでいました。しかし、両親から「重要な決断は急がないほうがいい」と言われ、仕事は辞めずに休職させてもらいました。今思えば、あの時退職せずに踏みとどまってよかったと、今は本当に感じています。30代はこの先まだまだお金がかかりますし、通院にもお金がかかります。当時は病気のことで頭がいっぱいでしたが、目の前のことだけでなく、将来を見据えた正しい選択をすることが重要だと切実に感じました。私の場合、入院中に病院併設のがん相談センターにも相談し、色々な悩みや不安の解決策をアドバイスしてもらいました。第三者や専門家だからこそもらえる意見もありますから、そういうところを活用するのも一案かなと思います。
編集部まとめ
ゆかさんのお話にもあった通り、若い人でも大腸がんにかかる可能性はあります。自分の健康を守るには定期健診だけでなく、内視鏡検査で細かく見てもらうことも重要です。日頃から健康に意識を向け、健康診断で精密検査の結果が出たり、少しでも異変を感じたりしたら早期受診を心がけることが大切です。

記事監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。