【闘病】苦しさを周囲に理解されづらい『ベーチェット病』 再発・入院には「また?」の声…

のりっこさん(仮称)は、2002年頃に腸管型ベーチェット病を発症しました。当時の主治医からは「潰瘍や出血が続くと最悪の場合、人工肛門が必要になるかもしれない」とも告げられ、すごく不安だったそうです。しかし今では治療法と薬が見つかり、たまに再燃はあるものの、症状は落ち着いているといいます。そんなのりっこさんに、これまでの治療や罹患してからの体験を語ってもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年11月取材。

体験者プロフィール:
のりっこさん(仮称)
1981年生まれ、福井県在住。ご主人とのりっこさんの2人家族。2002年頃、製造業の仕事をしていたときに腸管型ベーチェット病を発症。現在は販売の仕事をしながら趣味の編み物を楽しんでいる。受診した診療科は婦人科(性器の潰瘍)、消化器内科(下痢、腹痛、下血)、皮膚科(関節の紅斑)。
突然の発熱と腹痛に襲われて

編集部
腸管型ベーチェット病が判明した経緯について教えてください。
のりっこさん
2002年のある日、急に腹痛と下痢、発熱、下血があり緊急で病院に駆け込みました。その場で即入院となり、はじめは「出血性大腸炎」と診断されたのです。そして半年後に同じ症状が再発しました。さらに膝に紅斑や性器の周辺の潰瘍、口内炎も現れたので、精密検査を受けることにしました。その検査の結果、腸管型ベーチェット病と診断されました。
編集部
腸管型ベーチェット病が判明したときの心境について教えてください。
のりっこさん
「腸管型ベーチェット病? なにそれ? 私は死ぬの? 大腸が無くなるの? 失明するの?」と不安で毎日涙していました。当時放送されていたドラマ「愛しき君へ」や映画「夏々」でベーチェット病が題材にされていたこともあり、余計に落ち込んでしまいました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
のりっこさん
「まず内科的治療をして様子を見てから、薬を服用し経過観察をする」とのことでした。「最悪の場合は外科手術が必要になるかもしれない」とも言われました。腸管型ベーチェット病と判明した当初は、ペンタサを中心に服用していました。でも、現在はペンタサとヒュミラをメインに治療をしています。医師からは「月に一度通院して経過を観察しましょう」と言われており、現在も通院中です。症状が再発したときはプレドニンを追加して、外来で経過を見つつ、必要に応じて入院治療をしていただいています。
第三者から病への理解を得られない苦しみ

編集部
腸管型ベーチェット病発症後は、生活にどのような変化がありましたか?
のりっこさん
現在の仕事は販売業なので、お客様対応でストレスを感じることがあります。自分で選んだ仕事なので、弱音を吐けずにしんどいと感じるときもありますね。また、3年前まで主人の両親と同居していたのですが、病気が発症してから約10年間、両親から病気への理解が得られずに苦労しました……。入院が必要になったと話すと「また?」と嫌な顔をされたり、見た目が元気に見えるせいか、病気のことを信じてもらえなかったりすることもありました。入院のたびに点滴の針を入れた腕と入院用のリストバンドを見せて、ようやく入院の了承を得ていました。今では「入院する」と言えば了承してもらえるようになりましたが、当時は理解を得られず、大変でした。
編集部
薬の副作用などはありますか?
のりっこさん
プレドニンを追加すると副作用が出ます。気分の浮き沈みや不眠、食欲増進などがありますね。
編集部
症状の改善、悪化を予防するために気をつけていることはありますか?
のりっこさん
ストレスを溜めないよう、無理をしすぎないように心がけています。体調を崩さないことを第一に考えていますね。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
のりっこさん
病院内にある難病支援センターで相談したり、愚痴をこぼしたりできる環境があったことが支えになりました。難病支援センターは今でも頼りにさせてもらっています。また、主人の「大腸が無くなって人工肛門になっても、眼が見えなくなってものりっこはのりっこ。これからも一緒だよ」という言葉にも救われました。主人は「難病情報センターから情報を得るくらいしかできず、何もしてあげられない」と私と同じように落ち込み、会社の人に相談していたようです。でも、その気持ちだけでも嬉しかったし、夫が病気を理解し寄り添ってくれたのも心の支えでした。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
のりっこさん
普段は皆さんと変わらない生活ができています。ただ、胃腸だけでなく10年前から膝にも炎症が出て、膝に水が溜まることが増えました。そのたびに整形外科で診てもらっています。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
のりっこさん
「ちゃんと頼れる人や場所があるから大丈夫だよ。しっかり前を向こう」と背中を叩いてあげたいですね。当時は情報も治療法も少なく、途方に暮れて落ち込んでいたので。
「外見では分からない辛さもある」と知ってほしい

編集部
腸管型ベーチェット病を意識していない人に一言お願いします。
のりっこさん
腸管型ベーチェット病は、外見にあまり症状が出ないので、理解してもらえないのも仕方ないとは思っています。でも、少しでもベーチェット病の辛さであったり、病気の辛さをわかってもらえたりしたら嬉しいですね。特に再発した時に「ああ、またか」と思わないでほしいな、と思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
のりっこさん
主治医とは長い付き合いなので、気兼ねなく意見を言い合える関係です。「どうにもならない患者ですが、これからもよろしく」と感謝しています。たまに研修医の先生に診てもらうこともありますが「主治医がいない代わりです……」と遠慮せずに、自信を持ってしっかり診ていただけたらなと。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
のりっこさん
ベーチェット病は症状の組み合わせによっていろんな型があって、外見からはわかりにくい病気だと思います。でも、病気によってままならないことがある、ということを少しでも皆さんにご理解いただけると嬉しいです。
編集部まとめ
のりっこさんに取材をさせていただき「近しい人に病気の理解を得られないことは、大きなストレスだっただろうな……」と考えさせられました。病気と戦っている本人がいちばん辛いはずなのに、それを理解されないのは本当に苦しかったと思います。腸管型ベーチェット病のように、外見からはわかりにくい病気はあります。闘病者と周囲の人間の、互いが理解し寄り添う気持ちを持つことが、病と戦うときに何よりの支えになるはずです。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。