「うつ病」と「適応障害」は何が違うかご存じですか? 症状についても医師が解説

現在は、「働く人の適応障害」が増えていると言います。一方で、うつ病の人も相変わらず多く、最近では新型うつ病など新しいタイプの病態もよく見られるようになりました。似たような症状も見られるうつ病と適応障害ですが、一体何が違うのでしょうか? メンタルドクタークリニックの紫藤先生にメディカルドック編集部が聞きました。

監修医師:
紫藤 佑介(メンタルドクタークリニック)
うつ病と適応障害の違いとは?

編集部
うつ病と適応障害は、一体何が違うのですか?
紫藤先生
どちらもストレスをきっかけに発症することが多いので、混同されてしまうことは少なくありません。しかし、両者には明らかな違いがあります。簡単な見分け方は、ストレスの基から離れたときに症状がなくなるのが適応障害、ストレスの基から離れても症状が続くのがうつ病です。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
紫藤先生
たとえば仕事がストレスの基になっている人の場合、適応障害であれば仕事へ行く前には頭痛や腹痛などの身体症状が見られたり、不安や落ち込みなどの精神症状が見られたりしますが、仕事が休みの日などは、そのような症状は目立ちません。また、仕事と関係のない用事なら、こなすこともできます。
編集部
うつ病の場合にはどうですか?
紫藤先生
うつ病の場合には、仕事のある日も休みの日も、常に気分が落ち込んだ状態が続きます。何をしても楽しくなく、頭痛や腹痛などの症状が見られたり、気持ちが塞ぎ込んだりしてしまいます。
編集部
ストレスから離れているときに症状があるかどうかで、見分けることができるのですね。
紫藤先生
そのほか、適応障害は発症の引き金となる事柄が明確ですが、うつ病の場合には原因が明確ではないということも挙げられます。また、うつ病は脳のなかでセロトニンが不足することによる脳の不調、適応障害は心のストレス反応によって発症します。しかし実際は、適応障害からうつ病へ移行することもあり、明確に判断ができないケースも少なくありません。
適応障害からうつ病へ移行することもある

編集部
なぜ、適応障害からうつ病へ移行することがあるのですか?
紫藤先生
たとえば、職場で部署の異動を希望しているのに叶えられない、転職したいのに辞められないなど、ストレスにさらされ続けると適応障害が悪化してしまうことがあるからです。そうするとストレスの基から離れてもストレスを感じるようになり、うつ病に移行してしまうことがあります。
編集部
ストレスの基が解決されなければ、うつ病へ移行することもあるのですね。
紫藤先生
特に、もともと生真面目だったり、頑固だったり、完璧主義だったりする場合には、ストレスを溜め込みがちです。そのような人は、うつ病へ移行するリスクが高くなるかもしれません。また過去にうつ病を発症したことがあったり、家族に精神疾患を発症した人がいたりすることも、うつ病へ移行するリスク要因になります。
編集部
適応障害の段階でしっかり治療をおこなわないといけないのですね。
紫藤先生
はい、まずはストレスの基を除去するために環境を調整することが大事です。そのほか仕事前に不安になったり、ストレスを受けた状況で症状が強くなったり、眠れなくなったりする人も多いので、薬を使ってそれらの症状を和らげることもあります。
うつ病と適応障害の症状とは?

編集部
うつ病と適応障害では、症状が異なるのですか?
紫藤先生
抑うつ状態の持続性や気分の落ち込みの程度に違いはありますが、だいたいの症状は似ています。
編集部
どのような症状が見られますか?
紫藤先生
主に精神症状、身体症状、行動面の障害という3つに分類されます。身体症状では吐き気、動悸、めまい、眠れない、頭痛、腹痛などの症状、精神症状ではイライラ、不安、抑うつ、気分の起伏がなくなる、集中力や思考力が欠如するといった症状、行動面の障害では出社拒否や不登校、他人に対して攻撃的になるといったトラブルが見られるようになります。
編集部
そうした症状が見られたら、早めに医師に相談した方が良いのですね。
紫藤先生
はい。適応障害はうつ病の手前とも言われており、適切な時期に対処をしないと、そのままうつ病へ進行してしまうリスクがあります。そのためできるだけ早めに医療の力を借りて、治療を開始することが必要です。
編集部
最後にメディカルドック読者へのメッセージがあれば。
紫藤先生
適応障害の場合は、ストレス自体を取り除くことで症状の改善が期待できますから、できるだけ早期に医療が介入することが大切です。反対に、ストレスを感じる状況にずっと身を置き続けると、うつ病に移行するリスクもあります。適応障害に比べてうつ病は治療期間が長く、薬物療法に頼らざるを得ないケースも多くなります。医師が診察した結果、休職や休学した方がよいという判断にいたれば、診断書を発行してもらうこともできますから、困ったことがあれば早めに医師に相談してほしいと思います。
編集部まとめ
適応障害もうつ病も症状は似ており、一般の人が自分で見極めるのは困難。しかし治療期間の長さや治療の程度でいえばうつ病の方が深刻です。もし気になる症状があれば適応障害の段階で治療を開始し、うつ病へ進行することを防ぐようにしましょう。
医院情報

| 所在地 | 〒105-0004 東京都港区新橋2-15-8 新橋W・Bビル8階 |
| アクセス | JR「新橋」駅烏森口より徒歩1分 |
| 診療科目 | 精神科、心療内科 |


