親指の付け根の痛みが腱鞘炎やリウマチではない危険性 「母指CM関節症」とは?
親指の付け根に痛みを感じたとき、それがどういった疾患によるものかを自分で判断するのは難しいものです。腱鞘炎やリウマチも考えられますが、「母指CM関節症」の可能性もあります。そこで、母指CM関節症の初期症状や診断方法、ほかの疾患との違いについて、片岡利行先生(かたおか整形外科手の外科クリニック)に話を聞きました。
監修医師:
片岡 利行(かたおか整形外科手の外科クリニック)
親指の付け根が痛い… どんな原因が考えられる?
編集部
親指の付け根が痛みます。
片岡先生
親指はほかの指と異なり、さまざまな方向に動かせることや、ほかの指よりも大きな力がかかることが多かったり、スマートフォン操作などで長時間細かな動きを続けたりすることが多いため、痛みを訴える方が少なくないのです。
編集部
どんな原因が考えられますか?
片岡先生
「強くぶつけた」「突き指をした」など、明らかな怪我や外傷でない場合、腱鞘炎やリウマチなどの原因が考えられます。それ以外でよくみられる疾患としては、「母指CM関節症」があります。
編集部
母指CM関節症とはなんですか?
片岡先生
親指の付け根の関節を「母指CM関節」と呼ぶのですが、この関節の表面にある関節軟骨がすり減ってしまうと、母指CM関節症が起こります。骨と骨の滑りが悪くなるため、関節の炎症や腫れ、痛みを引き起こすのです。
母指CM関節症、腱鞘炎やリウマチとの違いは?
編集部
違いを明らかにするために、まず「腱鞘炎」とはどういう状態か教えてください。
片岡先生
「腱鞘」とは、腱が通るトンネルのようなものです。手首や手指を使いすぎると、腱や腱鞘に炎症が生じ、腱鞘炎となります。手首の親指側にある腱鞘に起こる腱鞘炎を「ドケルバン病」、親指の根元の手のひら側にある腱鞘に起こる腱鞘炎を「母指ばね指」と呼ぶこともあります。
編集部
では、リウマチとはどんな疾患ですか?
片岡先生
関節リウマチは、関節にある「滑膜」と呼ばれる部分が何らかのきっかけで異常に増えてしまい、炎症を引き起こす疾患です。多様な症状を引き起こしますが、指のこわばりや痛みから発症するケースが多く見られます。
編集部
母指CM関節症になりやすい人はどういう人ですか?
片岡先生
親指をよく使う人はなりやすいですし、普通の生活を送っていても、年齢を重ねると関節軟骨が減少するため、加齢も母指CM関節症の要因のひとつです。また、女性ホルモンの「エストロゲン」は関節の軟骨の状態を良好に保つ役割があるので、更年期などでホルモンバランスが急激に変化した人も母指CM関節症になりやすいと言えます。
編集部
そういった特徴があるのですね。
片岡先生
ただ、例えば腱鞘炎の原因も使い過ぎですし、リウマチも中年以降の女性に発症しやすいため、「上記に当てはまるから母指CM関節症」と自己判断せず、痛みを感じたら医療機関に相談しましょう。
母指CM関節症の診断方法、治療法とは?
編集部
医療機関に相談した場合、どのようにして母指CM関節症と診断されるのですか?
片岡先生
親指の付け根の関節部分に腫れがあって、その部分を押したときや、親指を手の甲側に強く動かしたときに疼痛が出現した場合、母指CM関節症の可能性が高いと言えます。確定診断のためにはさらに単純レントゲンを撮り、関節の空間が小さくなっていたり、消失していたりといった所見や、周囲の骨のとげのようなものを確認します。
編集部
母指CM関節症と診断された場合、医療機関ではどのような治療をするのですか?
片岡先生
まずは痛みの出にくい動作指導を行い、痛みや炎症を抑える外用薬や親指の動きを少し制限する装具を使用します。疼痛が強い場合は、鎮痛剤の内服や衝撃波、局所注射などを行います。保存加療を続けても疼痛が続き、日常生活に支障を来たす場合などには手術療法も検討されます。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージがあればお願いします。
片岡先生
親指は手の基本となる指で、ほとんどの場合、物をつかむ際には親指とそのほかの指を使って行います。ですから、親指が痛いと色々な動作に不都合を来してしまいます。さらに、進行すると親指に変形を来すこともあるので、親指に痛みが出てきたら早めに整形外科、できれば「手の外科」など手指を専門としている医療機関を受診するようにしましょう。
編集部まとめ
親指の付け根の痛みについて、母指CM関節症を中心に、腱鞘炎やリウマチなどについても解説していただきました。いずれの場合も、早めに整形外科を受診することが大切です。正確な診断を受けることで、適切な治療につながり、症状の悪化を防ぐことができます。気になる症状がある場合は、お近くの整形外科、可能であれば手の外科などに相談してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒566-0024 大阪府摂津市正雀本町1-21-4 |
アクセス |
阪急電鉄「正雀」駅より徒歩5分 JR「岸辺」駅より徒歩14分 |
診療科目 | 整形外科、手の外科、リハビリテーション科 |