40代以上の女性必見! 「ばね指」の原因・なりやすい人の特徴・治療法を医師が解説
近年、スマートフォンの使いすぎで「ばね指」になり、指の痛みや動かしにくさを訴える人が増えているそうです。命に関わる疾患ではないものの、放置していると手術をしないといけなくなる場合もあります。今回は、ばね指の原因やなりやすい人の特徴、治療法について、「よこやま整形外科 手とリウマチクリニック」の横山先生に解説していただきました。
監修医師:
横山 光輝(よこやま整形外科 手とリウマチクリニック)
「ばね指」の原因やなりやすい人の特徴を整形外科医が解説
編集部
まず、ばね指について教えてください。
横山先生
指には「屈筋」と呼ばれる関節を曲げる筋肉があり、それぞれの屈筋の端には「屈筋腱」があります。そして、その腱を滑らかに動かすために、「腱鞘」というトンネルがあります。この腱鞘と、その中を通っている屈筋腱がこすれ合って炎症が起き、ばね指を引き起こします。なお、ばね指は「屈筋腱腱鞘炎」とも呼ばれています。
編集部
もう少し詳しく伺えますか?
横山先生
手指を曲げ伸ばしするときには、腱鞘の中を腱が行ったり来たりして動きます。手の腱鞘が何らかの原因で厚くなったり硬くなったりすると、腱鞘とその中を通っている屈筋腱がこすれ合って「通過障害」を起こし、炎症のために腫れてくるのです。そのため、腫れた部分が引っかかって、指を伸ばそうと強い力を加えると「カクン」と跳ねるようになります。このような状態をばね指と言います。
編集部
なぜ、通過障害が起こるのでしょうか?
横山先生
通過障害が起こるのは、むくみなどによって腱鞘の厚みが増したり、硬くなったりするのが原因です。ではなぜ、厚くなったり硬くなったりするのかについては、現時点ではよくわかっていません。ただし、更年期でホルモンの働きが低下している40~50代の女性に起こりやすいため、女性ホルモンとの関係が深いのではないかと考えられています。ほかにも、パソコン作業や楽器の演奏などで指をよく使う人、関節リウマチの人、透析を受けている人などに起こりやすい傾向があります。
ばね指の治療法 保存療法・手術療法について解説
編集部
ばね指には、どのような治療法があるのですか?
横山先生
大きく分けると、「保存療法」と「手術療法」があります。基本的に、まずは保存療法で様子を見ますが、症状の種類や程度などによっては手術療法が検討されます。
編集部
保存療法では何をするのでしょうか?
横山先生
手指を安静にしながら、適度な手指のストレッチをおこないます。自分でできない人やストレッチ以上の介入が必要とされる人は、医療機関でリハビリを受けて、手指の運動やストレッチ指導などを実施したり、なかなか痛みが取れない場合には、ステロイド注射をおこなったりします。
編集部
ばね指は保存療法だけで治るのですか?
横山先生
腱鞘の狭窄がひどくない場合は、注射によって完全に治ることもあります。ただし、ステロイド注射は炎症を抑える代わりに、腱の組織を傷めてしまいます。そのため、腱鞘への注射は最小限にとどめるようにしなければなりません。
編集部
一方で、手術療法が検討されるのは、どのようなケースですか?
横山先生
大きく分けると2つのケースがあります。1つは「引っ掛かりが強く、指を伸ばすときの痛みがひどくなったとき」です。炎症というのは周りの組織にも広がるので、最初は腱鞘だけだった炎症が、周りの関節の「変形性関節症(ブシャール結節)」を引き起こす可能性があります。そのため、ばね指なのに関節痛が強い場合、早期の手術を推奨します。
編集部
もう1つは?
横山先生
「第二関節(PIP関節)が硬くなって動きが鈍くなったとき」です。指が完全に伸ばせなくなったり、曲げてもしっかりと曲がらなくなったりした状態のまま過ごしていると、だんだん関節自体が硬くなってしまい、関節周りの組織が硬くなって自分の力では動かせなくなる「拘縮(こうしゅく)」という状態となります。そうなると、腱鞘を開く手術をおこなっても、手術後に関節をほぐすリハビリが必要となり、時間がかかります。痛みや引っ掛かりを避けて動かさずにいたら、徐々に関節自体が固まってきた場合は、早めに手術を検討します。
ばね指の手術の流れや費用の目安を解説
編集部
ばね指の手術は、どのようなものですか?
横山先生
腱鞘が腫れて、腱の動きが悪くなる疾患なので、腱鞘を切り開く手術をおこないます。トンネルの屋根に切れ目を入れて広げるイメージです。痛みや傷に負担のかからない範囲であれば、翌日から指は使えるようになります。
編集部
入院は必要ですか?
横山先生
いいえ。手術は局所麻酔をして5分程度で済むため、日帰りでの手術が可能です。なお、手術の傷を確認するために、手術翌日に受診していただきます。また、拘縮などで関節が硬い人はリハビリが必要なので、術後のリハビリに通っていただく場合もあります。
編集部
費用の目安についても教えてください。
横山先生
保険適用なので3割負担の場合、手術費用は指1本につき6000円程度です。そのほかに、痛み止めや抗生剤などの薬代がかかります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
横山先生
手をよく使う人や、更年期に差し掛かった人は、腱鞘炎やばね指になりやすいです。ほとんどの場合、痛みや動かしにくさから発症して、放置していると関節が硬まってしまいます。そうなる前に痛みや動かしにくさを感じた時点で、できるだけ早く整形外科に受診をしましょう。早期に対処することで、手術を避けることも可能になります。受診する際には、手や指を専門に治療している医療機関がおすすめです。
編集部まとめ
今回は、ばね指の原因やなりやすい人の特徴、2つの治療法について解説していただきました。40代以降の女性に多い疾患で、受診を我慢して指が動かなくなってしまう人も多いとのことでした。「手には年齢が出る」などと言われますが、できるだけいい状態を保ちたいですね。気になる症状がある人は、我慢せず、手や指を専門とする医療機関に相談してみましょう。
医院情報
所在地 | 〒920-0854 石川県金沢市安江町14−1 |
アクセス | JR「金沢駅」 徒歩10分 |
診療科目 | 整形外科 |