「緑内障」の人がやってはいけないことはご存じですか? 発症リスクが高まる“NG行動”も医師が解説!
「緑内障は喫煙で悪化する」という話を耳にしたことはありませんか? そのほかにも「逆立ちやうつ伏せになると緑内障を発症する」という話もあります。こうした緑内障に関する説は、果たして本当でしょうか。それとも単なる都市伝説? 「小江戸眼科内科 白内障・緑内障・糖尿病クリニック」の庄司先生に教えていただきました。
監修医師:
庄司 拓平(小江戸眼科内科 白内障・緑内障・糖尿病クリニック)
緑内障は喫煙で悪化するって本当?
編集部
緑内障は喫煙で悪化すると聞いたことがあります。本当ですか?
庄司先生
はい。いくつかの論文で「喫煙が緑内障発症や進行する危険因子とされている」という報告があります。
編集部
それはなぜですか?
庄司先生
タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる働きがあります。目の毛細血管が収縮して血流が悪化することが、緑内障の進行と関連しています。また、血管が縮むことにより、目の房水排出が滞って眼圧の上昇につながります。さらに、喫煙することによって活性酸素が作られ、目の網膜にダメージを与えることも示唆されています。
編集部
緑内障と診断されたら、すぐに禁煙した方がいいですか?
庄司先生
現状、国内だけでなく世界各国の緑内障に関するガイドラインを確認しても、「積極的に禁煙を勧める」という記載はありませんでした。ただし、特にヘビースモーカーは緑内障が進行しやすいという報告があるので、本数を減らすか禁煙することを推奨します。
編集部
飲酒についてはいかがでしょうか?
庄司先生
飲酒には血管拡張作用があり、一時的には眼圧が下がることが知られています。しかし、「習慣的な飲酒は緑内障進行に関連する」という報告が多いので、飲酒量も多くなりすぎないように心がけた方がいいでしょう。
「逆立ち」や「うつ伏せ寝」などの習慣は緑内障と関連する?
編集部
そのほか、生活習慣が緑内障の原因になる行動はありますか?
庄司先生
例えば、寝るときにうつ伏せの姿勢をとる人は、緑内障のリスクが高くなります。うつ伏せになると重力によって、房水の出口が狭くなり、眼圧が上昇するリスクが大きくなります。目のことを考えるのであれば、仰向けの姿勢で寝ることをおすすめします。
編集部
ほかにもありますか?
庄司先生
逆立ちをすることも眼圧の上昇につながりますが、長時間逆立ちをしている人はほとんどいないと思われます。ただし、「ヨガのポーズ」で逆立ちに近い姿勢をとるものがあります。アジア太平洋緑内障学会の診療ガイドラインでは、この点についての記載があります。いわゆる「頭に血が上る姿勢」は眼圧を上昇させることが知られているので、そのような姿勢を長時間おこなうことは避けた方がいいでしょう。近年、一部の外科手術の中には頭位を下げた状態で手術をおこなうことがあるのですが、こうした手術と緑内障進行の関連も注目されています。
編集部
日常的におこなっている行動で気をつけることはありますか?
庄司先生
例えば、首が締まるような洋服を着たり、ネクタイをきつく締めたりする行為は眼圧の上昇につながります。また、長時間うつむいてスマートフォンを使ったり、パソコンに向かったりする姿勢も眼圧を上げる可能性があります。加えて、力んで頭に血がのぼるようなスポーツで眼圧が上昇することもあります。
編集部
眼圧が上がらないよう、避けた方がいい食べものや飲みものはありますか?
庄司先生
過度なアルコールを長期間にわたって摂取すると全身の臓器に障害が表れ、目にも影響が及び、緑内障の発症リスクにつながると言われています。ただし、適量のアルコールであれば、血管を拡張させて眼圧を下げる効果も期待できるので、飲みすぎない程度にしましょう。
緑内障を予防するために日常的に気をつけること
編集部
緑内障を予防するために、気をつけた方がいいことはありますか?
庄司先生
緑内障は40歳を境に、発症が増えてきます。そのため、40歳を過ぎたら定期的に眼科で検査を受けることをおすすめします。
編集部
眼圧を測ってもらえばいいのでしょうか?
庄司先生
もちろん、眼圧値は緑内障と非常に強く関連する重要な指標の1つです。とはいえ、緑内障は眼圧が高くなることで発症する場合と、眼圧が正常であるにもかかわらず発症する場合があります。特に日本人は後者の割合が非常に多く、緑内障患者全体の7割を占めるという報告もあります。そのため、眼圧検査だけでなく眼底検査や視野検査もおこない、正しく診断することが必要です。
編集部
そのほか、気をつけるべきことはありますか?
庄司先生
日常生活では定期的に目を休め、疲労を溜めないことも重要です。「サングラスをすると緑内障を予防できる」「サプリメントや食事で緑内障を予防できる」という話もありますが、それらの真偽は定かではありません。医学的根拠をもとに述べると、緑内障と生活習慣の関係はまだまだ不明な点も多いのが現状です。早期発見に努めるために、まずは定期的に検診を受けることが最も重要であると考えます。近年の医療機器の発展により、かなり早期の緑内障から検出可能になってきた一方で、「緑内障を発症しているにもかかわらず未治療のケースが9割に達する」という報告もあります。早期の段階で発見して適切な治療をおこなえば、ほぼ全ての患者さんが緑内障による失明を免れることができると考えられています。なにか心配なことがあれば、一度眼科に相談することをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
庄司先生
緑内障は、日本における中途失明原因圧倒的第1位の病気です。近年は進行を抑制する治療選択肢が増えているものの、いったん失われた視野や視力は戻すことができません。緑内障と診断されたとしても早期であれば適切な治療をおこなうことにより、ほぼ全ての人が一生涯見えにくさを自覚することなく過ごすことが可能です。ウェブサイトなどで緑内障と生活習慣の関連性は色々と提唱されていますが、医学論文や最新の医学研究においても、多くの生活習慣と緑内障の関連性は未だ明白ではありません。ご自身が緑内障を心配されるのであれば、まずは一度眼科を受診することが最も確実な予防法だと思います。
編集部まとめ
インターネットや雑誌などで緑内障に関する記事が散見されますが、医師が語っているものはそれほど多くなく、そこで語られている情報は玉石混交といっても過言ではありません。不安なことがあれば眼科医に確認するのが一番です。1人で悩まず、まずは気軽に相談してみましょう。
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診療科目 | 眼科、糖尿病内科 |