睡眠時無呼吸症候群の治療は一生続くの? 「CPAP療法」は途中で辞められる?【医師解説】
睡眠時無呼吸症候群の治療として広く使われている「CPAP療法」。この治療を始めると、「一生続けなければならないのか?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。そこでCPAP療法がどのような治療法なのか、そして継続の必要性や途中で辞められる場合があるのかなどを、医師の岩間先生(日本橋循環器科クリニック)に解説してもらいました。
監修医師:
岩間 義孝(日本橋循環器科クリニック)
睡眠時無呼吸症候群って? 医師が解説
編集部
睡眠時無呼吸症候群(SAS)について教えてください。
岩間先生
疾患名の通り睡眠時に無呼吸となってしまうのが睡眠時無呼吸症候群です。専門的には「睡眠中に生じる10秒以上の気流の停止」と言われています。「一晩(7時間)の睡眠中に、30回以上の無呼吸」あるいは、「1時間あたりの睡眠中の無呼吸数が5回以上」であると睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
編集部
そんなに呼吸が止まってしまうのですね。
岩間先生
そうなんです。結果的に、熟睡感が得られず朝すっきりと起きられなかったり、日中にうとうとしてしまったりするような影響がでます。
編集部
それは嫌ですね。
岩間先生
はい。日中の集中力や注意力がなくなりお仕事の効率が低下するというだけでなく、交通事故などの危険も高まります。実際に、居眠り運転と睡眠時無呼吸症候群の関連も指摘されています。
編集部
交通事故は怖いですね。
岩間先生
それだけではありません。睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や糖尿病、心疾患、脳血管疾患との関連性が非常に高いことも明らかになっています。調査によると、睡眠時無呼吸症候群を持つ人はそうでない人と比べて、高血圧のリスクが約2倍、虚血性心疾患は約3倍、脳血管疾患は3~5倍も併発する確率が高いとされています。さらに、突然死のリスクも指摘されており、適切な治療が必要です。
睡眠時無呼吸症候群の治療についても教えて
編集部
「日中眠い」といった理由で病院に行っても良いのでしょうか?
岩間先生
もちろんです。日中の眠気やだるさ、起床時の頭痛、ご家族からいびきを指摘された、といった症状のある人は、お近くの「睡眠時無呼吸症候群外来」などの専門医療機関に相談するのをお勧めします。
編集部
睡眠時無呼吸症候群であった場合、どのような治療をするのですか?
岩間先生
軽い睡眠時無呼吸症候群であれば、寝る時のポジショニングや体重コントロール、生活習慣の改善などを指導します。具体的に言うと、仰向けで寝ると重力で舌の付け根が喉の奥に下がり、気道を塞いでしまうので、横向きで眠るのが推奨されます。また、睡眠時無呼吸症候群は肥満と深い関係にあるため、運動や食事を工夫して減量に取り組みます。寝る前のアルコール摂取は筋肉を緩める働きがあるため控えていただきます。
編集部
それ以上の重症度の場合はどんな治療をするのですか?
岩間先生
経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)が選択されます。これは、睡眠中に鼻や口にマスクを装着し、そこから空気を送り込むことで気道を常に開いた状態に保ち、無呼吸や低呼吸を防ぐ方法です。CPAPによって気道が閉塞するのを防ぐことで、酸素不足やいびき、無呼吸の繰り返しが改善され、深い睡眠が得られるようになります。治療を継続することで、日中の眠気や疲労感の軽減だけでなく、血圧や心臓・血管の負担軽減にも効果が期待されます。
編集部
結構大掛かりなイメージですね。
岩間先生
「毎晩眠る時に」というと、最初は抵抗感を示す方もいますが、近年のCPAPの機器はとても小さく、旅行のときに持ち運ぶこともできるほどです。健康保険の適用になっていますし、機器はレンタルで使用していただけます。月に1度の外来受診によりCPAPの使用状況や治療効果も確認します。何より、有効性・安全性が高く、実際に治療を開始すると「びっくりするくらい深く眠れた」「朝の目覚めがすっきりした」と驚かれる方も多くいらっしゃいます。
CPAP療法はやめられる時が来る?
編集部
CPAPはずっと使い続ける必要があるのですか?
岩間先生
私たちも、患者さんから「CPAP療法はいつまで続けたらよいのですか?」という質問をよく頂戴します。まず大前提として、CPAP療法は、装着すると無呼吸や低呼吸が改善されますが、やめると元に戻ってしまいます。基本的にCPAP療法は「続けていると徐々にいらなくなってくる」というような治療ではありません。
編集部
では、辞めることはできないということでしょうか?
岩間先生
そういうわけではありません。閉塞性睡眠時無呼吸になりやすい大きな要因の一つに肥満があります。中等症以上の睡眠時無呼吸症候群患者さんの7割以上がBMI25以上とも言われています。肥満の人は、首にも脂肪がたくさんついているので喉が狭くなりやすく、閉塞性睡眠時無呼吸を起こしやすくなります。逆に言うと、減量することにより睡眠時無呼吸の改善が期待できるのです。研究データでも、10%の減量により無呼吸をあらわす指数が26%減少することが報告されています。
編集部
軽い睡眠時無呼吸症候群の方にも、そういった指導をするそうですね。
岩間先生
その通りです。CPAP療法をしている患者さんも、軽度の睡眠時無呼吸症候群患者さんが行っているような減量指導や生活改善をすることで、睡眠時無呼吸症候群の改善が期待できます。私が診てきた患者さんの中にも、適切な食事・運動療法を行い10kgの減量に成功し、CPAPを辞められた方が実際にいらっしゃいます。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
岩間先生
睡眠時無呼吸症候群の人の中には、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を併発している人も多くいらっしゃいます。だからこそ、なおさら食生活や生活習慣の改善はとても重要です。現在CPAP療法を受けている人も、「CPAPできちんと眠れているから安心」と油断せず、生活そのものを見直してみましょう。自己管理をしっかりして、CPAPがいらなくなる人もいらっしゃいます。
編集部まとめ
CPAP療法は安全で効果の高い治療法ですが、やはりそれだけではなく、食事や生活習慣の見直しが大事なのだそうです。「CPAP療法をしているから安心」ではなく、医師の助言をしっかり聞いて、健康的な生活を心がけましょう。
医院情報
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診療科目 | 循環器内科、一般内科 |