“腕が上がらない”のは五十肩じゃなくて「腱板断裂」かも!? 原因・対処法を医師が解説!
年齢を重ねるにつれて、腕が上がらなくなったり、痛みが続いたりすると「四十肩・五十肩かも……」と思う人も多いでしょう。しかし、じつは「腱板断裂」の可能性もあるのだそうです。今回は、四十肩・五十肩と腱板断裂の病態の違いや対処法などについて、「ゆうき整形外科クリニック」の田中先生に解説していただきました。
監修医師:
田中 佑樹(ゆうき整形外科クリニック)
腕が上がらない原因は?
編集部
加齢とともに腕の動かしにくさを感じます。
田中先生
たしかに、中高年の人を中心にそのような声はよく耳にします。運動学的に言えば「腕を上げる」というのは肩関節の運動にあたるので、「腕が上がらない」場合はなんらかの理由で肩関節の動きが制限されてしまっていると考えられます。これらの働きが上手くいかなくなると、腕が上がらなくなります。
編集部
四十肩・五十肩なのでしょうか?
田中先生
四十肩や五十肩という言葉は、正式な診断名ではありません。医学的には「肩関節周囲炎」や「肩関節拘縮」として知られる状態のことです。肩の関節周辺の軟部組織が劣化・炎症などを起こし、関節が可動しにくくなってしまう疾患です。
編集部
「肩の関節周辺の軟部組織」とは、どういった組織のことでしょうか?
田中先生
例えば、「腱板」と呼ばれる4つのインナーマッスルや関節包、滑液包などを指します。
肩の「腱板」がトラブルを起こすとどうなる?
編集部
腱板は筋肉なのですね。
田中先生
そうですね。肩関節の深層にある「棘上筋」「棘下筋」「小円筋」「肩甲下筋」の4つの筋肉の付着部を総称して腱板と言います。
編集部
それらの筋肉で肩の関節を動かすのですか?
田中先生
腱板だけで肩を動かしているわけではありません。肩関節の動きには、三角筋などの表面にある比較的大きな筋肉も関与しています。腱板の役割は、関節をより安定させて、スムーズな動きを作ることです。
編集部
腱板が炎症を起こすと腕が上がらなくなるのですね。
田中先生
はい。一般的な四十肩や五十肩では、そうした状態であることも多い印象です。しかし、中には「五十肩ですか?」と来院された患者さんでも、検査をしてみると腱板が断裂していた、いわゆる腱板断裂の可能性もあるため注意が必要です。
編集部
なぜ、腱板が断裂するのですか?
田中先生
原因としては、若い頃はスポーツや外傷によるものが多い傾向にあります。また、年齢を重ねるにつれて、仕事や家事などで肩関節を使いすぎるといったように、明らかなきっかけがなくても起こることが増えてきます。
知らぬ間に腱板断裂…症状・対処法を医師が解説
編集部
腱板断裂になると、どのような症状が表れますか?
田中先生
主な症状としては、「痛みが出る」「動かしにくいと感じる」「動かす範囲が狭くなる」などが挙げられます。医学的に診察すると「腱板断裂は動かしにくさや痛みの生じる運動方向が限られている一方で、四十肩・五十肩の場合はどの方向に動かしても症状が出る」などの違いはありますが、自覚症状としては四十肩・五十肩とほぼ同じなので、混同されがちです。また、特に中高年以降の腱板断裂では、症状がほとんどないケースも多くあります。
編集部
四十肩・五十肩と混同されやすいのですね。
田中先生
はい。四十肩・五十肩は、軽症であれば時間の経過とともに症状が改善していくこともあります。しかし一方で、腱板断裂の状態によっては手術が検討されることもあるので、早期に発見し、必要な対応をすることが大事です。
編集部
例えば、どのような対処法があるのですか?
田中先生
薬物療法で症状を和らげたり、リハビリテーションで運動療法や肩関節に負担のかからないような生活指導をしたりします。痛みに対しては、関節に注射をおこなうこともあります。それでも症状が治らない場合には、手術が検討されます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
田中先生
肩関節の動きが悪くなるのは、きちんとした原因があります。「もう歳だから」「そのうち良くなるかも」と様子を見るのではなく、早期に対処した方が早期の改善が見込めます。四十肩・五十肩も腱板断裂も、初期であればあるほど治療の選択肢が広がりますし、効果も出やすいので、痛みや動かしにくさは我慢せず、医療機関に相談してください。
編集部まとめ
四十肩・五十肩だと思っていた肩の痛みや腕の動きの制限が、じつは腱板断裂だったというケースも少なくありません。腱板断裂は放置すると症状が悪化し、治療が困難になることもあるため、早期の診断と治療が重要とのことでした。加えて、四十肩・五十肩であっても、早めの受診が推奨されます。肩の痛みが続いたり、腕が思うように動かないと感じたりしたら、早めに専門医を受診して適切な対応を受けることをおすすめします。
医院情報
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診療科目 | 整形外科、リハビリテーション科、内科、皮膚科 |