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【闘病】「ジストニア」とは? 自分の意思に関係なく首が勝手に動きだし…

 公開日:2024/10/29
【闘病】首の違和感の正体は「ジストニア」だった 意思と関係なく首が勝手に動くように

仕事でも趣味でも、「生きがい」とも言えることができなくなってしまったら、私たちは途方に暮れてしまうのではないでしょうか? 今回、自らの体験を話してくださった田中さん(仮称)は、ジストニアのため仕事ができなくなってしまったそうです。辛い手術を乗り越えて、現在は仕事復帰へ向けてリハビリに奮闘されています。田中さんがどのようにしてジストニアを発症し、この病気と向き合っているのかを語ってもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年5月取材。

田中秀樹さん

体験者プロフィール
田中 秀樹(仮称)

プロフィールをもっと見る

神奈川県川崎市在住。1964年生まれ。10年前に離婚し、現在は1人暮らし。別居している娘が2人。診断時の職業は引っ越し業。2018年に首の違和感が現れ、ジストニアと診断される。同年5月に、ボトックスの注射(ボツリヌス菌)を打つが、効き目がなかった。その後2回の手術をするが、効果がなく、痛みも増すばかり。現在は多少の痛みはあるが、3カ月に1度ボトックスの注射を打っている。週に3回理学療法をして、足の力と首が上を向かない様にリハビリをしている。それと同時に声が小さいのと、嚥下障害があり、水を飲むのもつらいので、薬はとろみが付いた物と一緒に取っている。現在は歩行器で生活をしている。

村上 友太

記事監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

ボトックスの注射が効かず、頭蓋骨に穴を開ける手術を行った

ボトックスの注射が効かず、頭蓋骨に穴を開ける手術を行った

編集部編集部

病院を受診した経緯を教えてください。

田中秀樹さん田中さん

仕事が休みの日にテレビを観ていると、首が少し右に引っ張られる違和感を感じました。日に日に首が右側を向くようになってきたのですが、「仕事の疲れで、そのうち治るだろう」と思い、病院に行きませんでした。ですが、徐々に首が前後に動くようになり日常生活に支障を来たすようになってしまったので病院を受診しました。

編集部編集部

病院ではどのように治療を進めていくと説明がありましたか?

田中秀樹さん田中さん

結果として、この病院の医師は、あまりジストニアについては詳しくないようでした。ですので、特に治療についての話はありませんでした。症状が進み、動くのもやっとという状態になったため、インターネットで自分の症状を調べ、ジストニアに該当しそうだと思いましたので、専門の医師がいる病院を探して受診しました。

編集部編集部

ジストニアとはどのような疾患なのですか?

田中秀樹さん田中さん

筋肉や骨に異常がないのに、全身または体の一部が固まったり、震えたりするなどして、思い通りに動かなくなる病気です。ジストニアに対する根治治療はまだ確立されていません。

編集部編集部

ご自身で調べて受診した病院でジストニアと診断されたのでしょうか?

田中秀樹さん田中さん

そうです。最初は医師と相談して、まずはボトックスの注射(ボツリヌス菌)を打ちましたが、いっこうに効果がありませんでした。もう自分の身体が言うことを聞かなくなったため、あらためて医師に相談をしたところ、腰も曲がって来ているし、手術しかないだろうと言われました。専門の病院を紹介され、そこで手術を行うことになりました。

編集部編集部

具体的にどのような手術を行ったのでしょうか?

田中秀樹さん田中さん

頭蓋骨に穴を開けて、細い電極を差し込み、脳に刺激をして不随意運動を止める手術を3年間で2回行いますと言われました。初めは右側の手術を行い、1年半を置いて、今度は左側を行いました。手術は頭にのみ局部麻酔を行い、意識がある状態で先生と会話をして、不随意運動の場所を探りながら行います。この手術は2度とやりたくありません。

編集部編集部

とても辛い手術だったのですね。

田中秀樹さん田中さん

はい。意識がある中で頭蓋骨にドリルで穴を開けるので、何をしているかがしっかりわかり、とても怖かったです。私が行ったのは、定位脳手術というもので、これは脳の中の特定の構造物を目標に電極を留置して治療を行う方法のことです。細い電極の先端を、1mm単位で正解に特定の場所に留置する必要があることからそう呼ばれるそうです。パーキンソン病やジストニアなどの不随意運動疾患に対する治療として用いられるようです。

仕事に復帰したいという気持ちを支えにリハビリに専念する毎日

仕事に復帰したいという気持ちを支えにリハビリに専念する毎日

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

田中秀樹さん田中さん

ただ愕然としました。

編集部編集部

発症後、生活にどのような変化がありましたか?

田中秀樹さん田中さん

針治療を数10件、酸素カプセル、マッサージなど含めありとあらゆる治療も試みましたが、それでも完治できず、手術に踏み切りました。とても痛みが強く、歩行も困難でした。杖や歩行器を使っているので車の運転もできなくなり、行動範囲が狭くなりました。

編集部編集部

ジストニアに向き合う上で、心の支えになっているものを教えてください。

田中秀樹さん田中さん

私は元来が仕事人間なため、1日でも早く仕事がしたいという気持ちを支えに、すごくつらいリハビリも頑張っています。それから、食事から身の回りのことまで生活全般の世話をしてくれる大切な人もいて、とても助けられています。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

田中秀樹さん田中さん

「無理をしすぎるな」と言いたいです。昔から負けず嫌いの私は、自分の子どもくらい年齢の離れた若い子とも張り合うなど、昔から無理ばかりしてきたので、そのつけが回ってきたのかなとも思っていますので、「無理をせず、気楽に頑張れ」と言いたいです。

非常に疲れやすい体だが、病に負けない強い心を持って生きていきたい

非常に疲れやすい体だが、病に負けない強い心を持って生きていきたい

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

田中秀樹さん田中さん

現在の体調は非常に疲れやすく、午前に1時間、午後に1時間の昼寝は欠かせません。疲れてくると足に力が入りにくくなり、転倒することもあります。薬は1日4回トアラセット(痛み止め)、リボトリール(震えを抑える薬)夜のみ2錠を服用しています。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

田中秀樹さん田中さん

この病気になって色々な方の話を聞きました。この病気で根治したというのは聞いた事がないので、もう少し治療精度の向上を目指していただきたいなと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

田中秀樹さん田中さん

多くの方がそれぞれ様々な病に悩みながらお過ごしだと思います。それでも私は「病は気から」という言葉もあるように、「絶対に完治してみせる」と、病に負けない強い心を持って生きて行きたいと思っています。みなさんも時には心が折れそうになることがあるかもしれませんが、頑張りましょう。

編集部まとめ

ジストニアは、遺伝子の異変、病気、薬剤などが原因で発症すると言われていますが、田中さんの場合、原因は分かっていないそうです。ですが、田中さんは、ストレスが引き金になり、発症したのではないかとおっしゃられていました。ご自身の経験を通して、「生活する上で、なるべくストレスが溜まらないよう環境を整えることが大切」だというメッセージをくださいました。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師