まわりに悩みを言えず、人間関係で苦しんだ学生時代 たどり着いた「生きていてよかった」 #今つらいあなたへ
「悩んでいるなんて誰にも言えなかった」。表面上は明るく振る舞いながらも学校生活に馴染めず、「生きづらさ」から複数回、自殺未遂を経験した30代女性の山田さんは「生きていてよかった」と振り返ります。苦しみを抱えた思春期と、乗り越えた先に見えた希望について話を聞きました。
監修医師:
岡 琢哉(株式会社カケミチプロジェクト)
目次 -INDEX-
悩んでいると言えず 精神科で抱いた不安
編集部
山田さん
もともと小学校高学年の頃から「クラスで浮いている」という思いがあるような幼少期でした。
表面上は明るいキャラを演じていましたが、その分、悩んでいることを周りに言えませんでしたし、周りに嫌われるのは嫌でした。
編集部
山田さん
初めての精神科だったので「こんなことを話していいのだろうか」「大丈夫なのかな?」などと不安になったことを覚えています。
編集部
山田さん
「人に嫌われたくない」みたいな気持ちが強くて、誰か一人に嫌われたら全員に嫌われちゃうみたいに考えていました。この「生きづらさ」は今でも残っていますが、少しずつ解消されつつある気がしています。
私立中学から公立に転校 高校では再び不調に
編集部
山田さん
在籍していた中高一貫校でそのまま進学することしか考えていなかったので、退学することで自分の選択肢が無くなったように感じて落ち込みました。
ただ、転校先の公立中学では私のことを受け入れてくれた子がいて、その子のお陰で最後まで通えたし、今でも仲が良いです。
編集部
山田さん
以前のように「人に嫌われたくない」という気持ちが出てしまい、無理が重なり自分から通院を再開しました。当時は精神科に通っていることを彼氏や親に知られたくなくて、黙って受診していました。
自分を追い詰めてきた「オーバーワーク」
編集部
山田さん
夏休みの間だけ入院したのですが、主治医の先生がすごく良い人でした。「君は同い年の子と話すのはよくない。同い年だと周りのことを考えすぎてしまって常に気を張ってしまうだろうから、少し上の余裕がある人たちと過ごした方が良い」とその先生に言われたことを覚えています。
その先生は、やってはいけないことの指示を具体的に教えてくれました。テスト勉強を止めろと言われたこともあります。性格なのか特性なのか、誰かに止めろと言われなければ止められないのです。それまでは止めろと言ってくれる人がいなくて、ずっとオーバーワークで生きていました。
編集部
山田さん
その後も地元に帰りたくなくて、東京で働きながら一人暮らしをしていましたが、ふと「死にたい」という気持ちが強くなって、自殺未遂をしました。このときは友人が偶然気づいてくれて、ギリギリのところで助けられました。
「死ななかったことの意味」 毎日を楽しく生きるために
編集部
山田さん
「自分は生き抜いたのか、それとも死にそびれたのか」という複雑な気持ちを抱えたまま5,6年が過ぎた頃、今の旦那と知り合い、上京しました。生きることを諦めていたら当然旦那とは会えなかったので、結婚してから「死ななかったことの意味があった」と今は感じています。
旦那と出会えて結婚した後もオーバーワークしがちな傾向がなくなったわけではなくて、周りの目が気になるのもずっと続いていて、未だに仕事を休職することがあります。ただ、「自分を傷つけることで悲しむ人がいる」ことを今は分かっているから、どうにか少しでも楽しく生きようと思っています。
編集部
山田さん
「来年どうしよう」みたいな自分を追い込む目標ではなく、「来週どうしよう」とか短期的な楽しみを持つことが私には大切だと思っています。没頭できる趣味のような、目の前の楽しみに集中することでやりすごせていると思います。
「生きていれば案外なんとかなる」
編集部
山田さん
私はいじめられたこともないし、きっと表面的な苦しさなんてなさそうに思われていました。
表面上では、わからない苦しさもある。昨日まですごい楽しそうだったのに、次の日死ぬみたいな人の気持ちがすごくよく分かる。
私は自傷行為を繰り返して苦しみましたが、いま振り返ると生きていれば案外なんとかなると感じています。悩みを抱えてどうしようもない人には「生きることをおすすめします」と伝えたいです。
監修医からのコメント
岡先生
山田さんのように、表面上は明るく振る舞い、周囲との関係を大切にしようと努力している人ほど、自分の苦しみを他人に話すことが難しい場合があります。このような状態にある人たちが、「ちゃんと起きて、着替えて、ご飯を食べる」という当たり前の生活を自分自身で評価し、少しずつでも「生きていて良かった」と感じるようになるためには、多くの時間と支援が必要です。
周囲の人々が小さなサインに気づき、支援が受け取りやすい環境を少しずつでも作っていくことが回復の第一歩になります。
※この記事はMedical DOCとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。