痛みがない”血尿は「がん」のサイン!? なりやすい人の特徴や早期発見のコツも医師が解説!
血尿には、痛みが生じるときと生じないときがあります。痛くない血尿が出たら「膀胱がん」の可能性とも言われますが、果たして本当なのでしょうか。「きたじま腎泌尿器科クリニック世田谷烏山院」の北島先生に教えていただきました。
監修医師:
北島 和樹(きたじま腎泌尿器科クリニック世田谷烏山院)
血尿には痛みがある?
編集部
一般的に、血尿が出るときは痛みがあるのですか?
北島先生
いいえ、必ずしも痛みがあるわけではありません。原因によっては、血尿が出ても痛みがないこともあります。
編集部
痛みを伴う血尿の場合には、どのような疾患が疑われるのですか?
北島先生
例えば、「膀胱炎」や「尿路結石症」が考えられます。膀胱炎は膀胱内で炎症が起こり、膀胱の機能に異常がみられる疾患です。発症原因のほとんどが細菌感染とされており、頻尿や排尿痛、発熱などの症状がみられます。
編集部
尿路結石症についても教えてください。
北島先生
腎臓で尿が作られ、尿道を通って排出されるまでの経路である「尿路」に結石が生じる疾患を尿路結石症と言います。尿の中に含まれるカルシウムやマグネシウム、尿酸などの成分から結石が作られます。突然、背中や脇腹、下腹部にかけて痛みが生じたら尿路結石症が疑われます。また、結石が尿路の粘膜を傷つけることで血尿が出る場合もあります。
編集部
そのほかには、どのような原因が考えられますか?
北島先生
前立腺炎や尿道炎などの尿路感染症が原因となって、痛みが生じているかもしれません。ただし、これらの疾患でも場合によっては血尿が出ないこともあります。そのため、血尿だけで判断するのではなく、ほかの症状も確認しながら受診する必要があるかを考えましょう。
痛みがない血尿とは?
編集部
一方、痛みがない血尿には、どのような原因が考えられるのですか?
北島先生
「膀胱がん」「腎盂尿管がん」「腎臓がん」「前立腺がん」などの悪性腫瘍の可能性があります。
編集部
それぞれ、どのような人がかかりやすい疾患ですか?
北島先生
膀胱がんと腎盂尿管がんは、50歳以上の男性で発症率が高く、特に喫煙者は発症リスクが高くなるとされています。血尿を示すことが多いので、早期発見につながりやすいがんです。しかし、その一方で血尿が自然と治り、ほかの症状がない場合にはそのまま放置されてしまい、発見が遅れることもあるので注意が必要です。
編集部
ほかのがんについても教えてください。
北島先生
腎臓がんは、40代以降の肥満体型、あるいは喫煙習慣のある男性に多くみられるがんで、腎臓の細胞ががん化したものを指します。初期には自覚症状がほとんどなく、進行すると背中や腰の痛み、血尿などの症状がみられます。
編集部
前立腺がんについてはいかがでしょうか?
北島先生
50歳を超えると発症リスクが特に高くなるがんで、前立腺がんも腎臓がん同様、早期では自覚症状がほとんどないため、気づかれにくいことがあります。多くの患者さんは検診や人間ドックの採血検査で、「PSA」の高値を指摘され、受診します。PSAとは、前立腺がんや前立腺肥大、炎症があると高値になるタンパク質分解酵素のことです。そのため、検診や人間ドックを受けなければ見逃すことも少なくありません。
痛くない血尿が出たときの対処法
編集部
痛みを伴わない血尿が出たら、どうすればいいのでしょうか?
北島先生
できる限り早めに泌尿器科を受診しましょう。血尿は、尿路のどこかに悪性腫瘍ができている可能性を示唆するものです。そのため、早急に泌尿器科を受診することが大切です。
編集部
泌尿器科ではどのような検査をするのですか?
北島先生
例えば、膀胱がんが疑われる場合には一般的な尿検査のほか、尿にがん細胞が混ざっていないかなどを調べる尿細胞診や、尿に含まれる赤血球や白血球の数値などを調べる尿沈渣(ちんさ)検査をおこないます。そのほか、超音波検査で膀胱内に腫瘍があるか調べることもあります。ただし、初期の場合にはこれらの検査では不明なことも多いので、膀胱内をファイバースコープで観察する検査も必要です。
編集部
腎臓がんや前立腺がんが疑われる場合、どのような検査をおこなうのですか?
北島先生
腹部の超音波検査やCT検査、MRI検査などをおこないます。そのほか、前立腺がんにおいては細い針を刺して組織の一部を採取し、がんかどうか調べる生検をしたり、血液検査をおこなって血中PSA値の数値を調べたりすることもあります。
編集部
痛みがない血尿には注意が必要ですね。
北島先生
はい。一般的に、痛みのある血尿よりも痛みのない血尿の方が、危険度が高いとされています。痛みを伴わない血尿には、膀胱がんなどの尿路上皮がんのリスクが背景に隠れている可能性を忘れてはいけません。したがって、一時的な血尿であっても早めに受診することをおすすめします。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
北島先生
血尿と聞くと、便器が真っ赤になるイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、血尿を伴う疾患のリスクは、血液の量に関わりません。そのため、オレンジ色がかった尿など、普段とちょっと違う色をした尿が出たら、早めに医師の診察を受けましょう。血尿が出たのは一時的なものであり、すぐに元通りになったという場合でも、念のため受診をすることが必要です。大学病院をはじめとする高度医療機関でなくとも、近くの泌尿器専門クリニックであれば受診しやすく、気軽に相談できると思うので、まずは楽な気持ちで検査を受けてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
痛くない血尿は、痛みを伴う血尿と比べて危険度が高いとのことでした。「一度出ただけだから」「大量の出血ではないから」などの理由で見過ごさず、たとえ少量だったとしても普段と違う色の尿が出たら、早めに専門医の診察を受けましょう。もしかすると、がんのサインかもしれません。
医院情報
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診療科目 | 泌尿器科 |