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「車椅子介助」の正しい方法をご存知ですか? 操作方法からベッドへの移乗まで介護福祉士が解説

 公開日:2024/09/17
「車椅子介助」と正しい方法をご存知ですか? 操作方法からベッドへの移乗まで介護福祉士が解説

歩行が困難になった高齢者にとって、自身の足の代わりとなる「車椅子」。車椅子を使用することで、行動範囲が広がり、生活の質が向上します。しかし、車椅子の高齢者を介助する際、介助者は正しい方法で操作しなくては重大な事故につながることもあります。そこで今回は、「車椅子介助」の正しい操作方法と、車椅子とベッド間の移乗方法について、介護福祉士の大野さんに伺いました。

大野 喜久弥

監修介護福祉士
大野 喜久弥(介護福祉士)

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介護、福祉、医療特化ライター。在宅、施設、病院での介護現場と相談員業務を20年以上経験。介護支援専門員、介護福祉士、福祉用具専門相談員などの資格を有する。現在は介護や福祉、医療情報を分かりやすく伝えるライターとして活動中。

車椅子の選び方・調整のポイントとは? 種類ごとの違いはある?

車椅子の選び方・調整のポイントとは? 種類ごとの違いはある?

編集部編集部

車椅子にはどんな種類がありますか?

大野 喜久弥さん大野さん

車椅子には大きく分けて3種類あります。利用者が操作する「自走式」、介助者が操作する「介助式」、電動で走行する「電動式」です。自走式は主輪が大きく、利用者が自走できるように操作輪(ハンドリム)がついています。介助式は主輪が小さく、操作輪(ハンドリム)はついていません。電動式は利用者が手元でコントローラーを操作し電動モーターで走行します。各種様々なタイプや機能がありますので、利用者にあったものを選びましょう。

編集部編集部

車椅子には様々な種類があります。どのように使い分けたらいいですか?

大野 喜久弥さん大野さん

車椅子は、自走式と介助式の2種類あります。それぞれに標準型、多機能型、座位変換型、特殊型があり、身体状況に合わせて選ぶことができます。まず、自走式の中の4つのタイプについて説明します。

  • 標準型
  • 利用者の体型や目的に応じて座高や座幅を選択可能。立位や座位保持不安定な方から使用できる

    自走式1
  • 多機能型
  • 肘掛けを跳ね上げたりフットレストを外せたりと、移乗に便利な多機能タイプ

    自走式2
  • 座位変換型
  • 座面、背面で体重を支え、体重分散に優れている

    自走式3
  • 特殊型
  • 転倒事故防止のための自動ブレーキ機能があり、片麻痺の方が片手操作可能

    自走式4

編集部編集部

介助式の4つのタイプについても教えてください。

大野 喜久弥さん大野さん

介助式の4つのタイプについては以下の通りです。

  • 標準型
  • 座位安定に優れ、シートベルト式のタイプもあります。座位保持が不安定な方におすすめ

    介助式1
  • 多機能型
  • 肘掛け跳ね上げ式でスムーズに移乗可能です。
    フットレスト取り外し可能なので、足漕ぎで下肢筋力アップが期待できる

    介助式2
  • 座位変換型
  • 角度可変式なので「嚥下、摂食障害」「麻痺」の方におすすめ

    介助式3
  • 特殊型
  • コンパクトタイプで車や公共の乗り物への搭乗が可能

    介助式4

編集部編集部

電動式についてはいかがでしょう?

大野 喜久弥さん大野さん

電動式は、利用者が手元のコントローラーで操作し、電動モーターで走行できます。ご自身で操作して外出でき、行動範囲がますます広がるでしょう。

電動式

その他、入浴用の車椅子もあり、座位保持が難しい方におすすめです。座面に穴があれば、立ち上がることなく介助者からの臀部洗体介助が可能です。

入浴用

編集部編集部

調整のポイントについても教えてください。

大野 喜久弥さん大野さん

車椅子を快適に使用する上での調整のポイントは、「適切な姿勢保持ができるか」ということです。車椅子に座った時、座面にゆとりがありすぎたり、逆に狭すぎたりすると、座ったり自走しにくくなります。まずは、車椅子と身体のサイズは合っているかを確認しましょう。座面の幅と奥行きのサイズですが、「自走式」の場合は、腰幅+3~4cm程度、「介助式」の場合は、腰幅+4~5cm程度が目安です。また、「座った時に足が床に着いているでしょうか」も確認しましょう。フットレストに足を乗せた時に、太ももが上がりすぎると骨盤が後傾し腰痛の原因となる場合があります。

編集部編集部

ほかに、調整をする際に気をつけるべきことはありますか?

大野 喜久弥さん大野さん

背もたれは、肩甲骨の一番下にある下角を目安に調整します。高すぎたり低すぎたりすると車椅子の操作がしにくくなります。また、アームレストは、座位肘頭高より、2〜3cm程度高い位置が良いとされています。高すぎると肩が上がり、低すぎると前傾姿勢となり姿勢が崩れてしまいます。心身機能や生活状況を考慮し、適切な姿勢保持ができるよう調整しましょう。また、ブレーキや部品に緩みはないか調べることも重要です。各部に緩みがあると事故に繋がりかねません。定期的に点検しましょう。

「車椅子介助」の正しい方法を解説 障害物・段差の時の注意点は?

「車椅子介助」の正しい方法を解説 障害物・段差の時の注意点は?

編集部編集部

「車椅子介助」についても教えてください。

大野 喜久弥さん大野さん

介助者が、利用者の車椅子での移動を介助することです。利用者の体調や身体状況、スピードを考慮して安全に介助しましょう。

編集部編集部

車椅子介助は、実際どのようにしたらいいですか?

大野 喜久弥さん大野さん

室内で車椅子を使用する場合、室内を片づけて車椅子が移動しやすい環境を作りましょう。移乗時に利用者の身体と物品が触れて怪我をしないよう注意が必要です。

編集部編集部

屋外の場合はどうでしょう?

大野 喜久弥さん大野さん

屋外では、人や車、公共の乗り物、坂道、段差など、様々な点に注意を払いながら事故の無いように介助します。利用者と周囲の様子、両方に気を配りましょう。坂道を上る際は、前方に障害物や溝、人や車などがいないか確認しながら車椅子を押します。逆に下る際は、後方に注意しながら後ろ向きで介助します。また、平坦な道でも溝や砂利道などで車輪脱落やハンドルを取られる危険性があります。スピードにも気をつけながら介助しましょう。

編集部編集部

段差を上がる際はどうすればいいのですか?

大野 喜久弥さん大野さん

段差を上がる際は、上がる前に利用者へ「上がります」と声をかけましょう。まず、バランスを取りながら前輪を段に乗せ、その後に後輪を静かに上げます。段差を下りる際は、下りる前に利用者へ「下ります」と声をかけましょう。そして、バランスを取りながら、後ろ向きで先に後輪より段差を下り、その後に前輪を静かに下ろします。

編集部編集部

介助時はどんなことに気をつけたらよいですか?

大野 喜久弥さん大野さん

普通に車椅子介助しているつもりでも、利用者は走行スピードを早く感じて恐怖感を覚える方も少なくありません。介助者は、時間と気持ちにゆとりを持って対応しましょう。また、体調は日々変化します。発熱や痛みなど、いつもと違う様子はないか、介助前に必ず確認しましょう。確認不足による介助によって、痛みの増強や体調不良へ繋がる場合もあります。麻痺のある方は麻痺側に痛みを伴うケースがあります。拘縮や痛みの増強、脱臼などの症状にも十分注意して介助しましょう。

車椅子とベッド間の移乗介助の方法を解説 腰への負担を減らすにはどうしたらいい?

車椅子とベッド間の移乗介助の方法を解説 腰への負担を減らすにはどうしたらいい?

編集部編集部

車椅子とベッド間の移乗はどのようにしたらいいですか?

大野 喜久弥さん大野さん

移乗方法は利用者によって違います。利用者の体調や身体状況に合わせておこないましょう。移乗前の準備としては、まず、ベッドの高さと車椅子の座面の高さを同じくらいに合わせます。車椅子をベッドに近づけ、極力移動する角度を少なくします。ベッドでの臥床を想定し、適切な位置に車椅子を設置し、フットレストを外し、肘掛けを跳ね上げます。そして、車椅子にブレーキがかかっていることを確認します。

編集部編集部

その後は?

大野 喜久弥さん大野さん

移乗する際は、まず、利用者の足底が適切な位置に着いていることを確認します。介助者は利用者に身体を密着させて両肩甲骨を支えて、声かけしながら前傾姿勢を促します。利用者は、浅く座り、足を引きます。介助者は、重心の高さを本人に合わせて腰を低くして、車椅子側の肩甲骨と反対側の骨盤をしっかり支えます。介助者自身の足の支持基底面をなるべく確保し、安定した移乗動作をおこなえる範囲を保ちます。そして、前傾姿勢を保ち臀部を浮かせ、臀部の高さをかえずそのままスライドするようにベッドへ移動し、密着したままゆっくりと着座していただきます。

編集部編集部

階段での車椅子介助は、どのようにしたらいいですか?

大野 喜久弥さん大野さん

まず、介助者が車椅子の前後につき、車椅子のフレームやバーを持ち、全体の重さ(利用者と車椅子)や階段の傾斜角度などを確認します。介助者は互いに声かけし、バランスを取りながら息を合わせて移動介助します。そして、目的位置に着いたら、ゆっくりと車椅子を着地させます。大切なのは利用者への配慮と介助者同士の声かけです。

編集部編集部

介助者は腰痛が心配です。腰への負担を減らす方法はありますか?

大野 喜久弥さん大野さん

介助者は無理な姿勢で利用者を支えたり持ち上げたりと、身体的負担が大きいことが特徴です。腰痛はつきもので、多くの介助者が不安を抱えています。腰痛対策としては以下の方法が挙げられます。

  • こまめに正しい姿勢に戻す:無理な姿勢のままでは腰痛に繋がります。介助後は姿勢を戻し、ストレッチをするなどして筋肉の緊張を緩めましょう
  • 無理な介助は一人で抱え込まない:自分より身体の大きな利用者を介助することは多々あります。移乗への不安や腰痛があれば、無理せず他者へ応援を頼みましょう。自宅で介護される方は、介護保険制度を利用してヘルパーさんに訪問介護を依頼するなどの方法もあります
  • ストレスを減らす工夫をする:介助者には身体的、精神的負担が大きくかかります。腰痛を回避し改善していくために、自分なりのストレス解消方法を見つけましょう

編集部編集部

最後に読者へのメッセージをお願いします。

大野 喜久弥さん大野さん

病気や怪我などで介助が必要な方にとって、車椅子は安心して生活し行動範囲を広げていく上で必要不可欠な物です。介助方法を身体で覚え、ゆとりを持って安全に介助できるよう対応していきましょう。

編集部まとめ

車椅子は利用者の行動範囲を広げたり、離床時間を増やしたりと生活の質を上げるために大切な物です。介助者は、利用者の身心状況を正確に把握して、安全に対応できるよう介助方法を身につけましょう。また、介助者の健康を守ることも大切です。介護は一人で抱え込まず、様々なサービスを利用することも取り入れていきましょう。

この記事の監修介護福祉士