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奥菜恵が抱える「難治性の病気」全身に広がる恐怖で頭が真っ白に(2/2ページ)

 公開日:2024/08/20
奥菜恵「ふと気づいたら肌に異変が」。尋常性白斑という病を受け止めて前向きに生きる。

奥菜恵、難治性の病気で「もう表に出られないかも」不安と恐怖を乗り越える

奥菜恵、難治性の病気で「もう表に出られないかも」不安と恐怖を乗り越える

奥菜 恵さん奥菜さん

いろいろな治療があると思いますが、実は紫外線治療に抵抗があります。普段は紫外線を浴びないように気をつけているのに、治療では浴びたほうがいいの? どっちなの? と思ってしまいます。

大島 昇先生大島先生

紫外線療法は現在の治療ではスタンダードな療法ですね。紫外線の一部の波長を週に2、3回患部に当てて3カ月ぐらいを目安に効果を見ていきます。ただ、紫外線は正常な皮膚にとってはデメリットがあることも事実です。医者の立場では、悪いところを治すことに注目しがちですが、患者さんの立場では全体の肌の見た目なども含めて、もっと違う判断が必要なこともあります。治療の方針や何を目指すのかを、患者と医師が一緒に考えて選びたいですね。

奥菜 恵さん奥菜さん

ほかにはどんな治療法がありますか?

大島 昇先生大島先生

紫外線療法のほかに、ステロイド外用薬があります。ステロイド外用薬と紫外線療法が代表的な治療法になりますね。

奥菜 恵さん奥菜さん

新しい治療などもありますか?

大島 昇先生大島先生

新しい治療としては、ジャック阻害薬などの免疫調整薬が海外では認可されてきていて、今後は日本でも認可されるのではないかなと思います。外科的治療では、皮膚パンチグラフトという、正常な皮膚からパンチで皮膚を取って、疾患部分に同じようにパンチで穴を開けて移植する方法などもあります。できる施設が限られていたり、症状の段階で出来ることが違ったりもするので、自身に合う治療法を根気強く探してほしいですね。

奥菜 恵さん奥菜さん

治療法についても、インターネットでいろいろと調べました。漢方薬も試してみましたし、ほかの方がどんな症状で、どのような治療をされているのか体験談もいろいろと読みました。そうすると、この治療法が良かったという方もいれば、一向に良くならないという方もいますよね。ネットでは調べれば調べるほどいろんなことが出てくるので、少し混乱してしまいました。情報の量は多いですが、それがすべてではないですし、正解でもないですよね。だから結局、自分はすぐ病院に行きお医者様に相談しようと思いました。

大島 昇先生大島先生

ネットの情報は、不安を煽るようなものほど検索で上位に上がってきますよね。しっかりした医療監修があるものではないと信頼はできないですし、自分で内容を判断するのは難しいですよね。インターネットの間違った情報に惑わされず、お医者さんに相談するのは大切なことです。

奥菜 恵さん奥菜さん

インターネットで調べると不安になることが多いですよね。ところで白斑というのは、免疫の病気なのですか?

大島 昇先生大島先生

そうですね。肌の色を作る細胞であるメラノサイトを攻撃するT細胞が何かのきっかけでできてしまう免疫の病気です。これは、自分の免疫力が低下していることが原因というわけではありません。治療としては免疫を抑える薬が効くこともあります。

奥菜 恵さん奥菜さん

私の場合はそんなに症状も進んでいなくて、そこまでは広がっていないので、特に支障なく仕事はさせていただいていますが、いつ治るかもわからなくて、根気勝負みたいなところは精神的に厳しいですね。

大島 昇先生大島先生

精神的なケアも、治療していくうえでの課題のひとつだと思います。普段の生活ではどんなことに気をつけていますか?

奥菜 恵さん奥菜さん

免疫を高めるための食生活や、日常生活では内側から気をつけるようにしていて、規則正しい食生活を心掛けたり、しっかりした睡眠をとるようにしたりしています。それから、日頃から紫外線になるべく当たらないように気をつけています。

大島 昇先生大島先生

食事や睡眠に気をつけているのはとてもいいですね。適度な紫外線は白斑に有効という報告があります。ただ、過度な紫外線は悪化因子と言われていて、普段の紫外線については、判断が難しいところではあります。それから、ストレスは悪化因子になるので、ストレスがかからないように過ごすことも大切です。

奥菜 恵さん奥菜さん

やっぱり過度な紫外線はよくないのですね。普段は日焼け止めや手袋などを使って対策しています。皮膚科の先生からも、この日焼け止めがいい、この化粧品がいいなど教えていただいています。肌を守りながら刺激を与えないように工夫し、色をつけて白斑部分を隠せる化粧品なども取り入れています。

大島 昇先生大島先生

カバーメイクというのは、直接的な治療ではありませんが、患者さんのQOLには重要だと思います。実際に悩んでいる人にしかわからないこともあると思います。

奥菜 恵さん奥菜さん

これをすれば治ると信じて治療を続けていても、治っている気配がないと心が折れそうになりますからね。

大島 昇先生大島先生

心が折れそうになった時、どうやって乗り越えてきたのですか? 今お話ししていると、とても明るい印象ですが。

奥菜 恵さん奥菜さん

発症したのがちょうどコロナ禍の時でした。世界が閉鎖的で、みんな心が沈んでいましたよね。そんな雰囲気の中で、命や時間には限りがあることを強く感じました。

大島 昇先生大島先生

社会全体がそういう雰囲気になっていましたね。

奥菜 恵さん奥菜さん

それなら、これから先の人生は自分の好きなことをして生きていこうと思いました。もちろん病気を発症したことで心が沈んだり「もうお仕事ができないかもしれない」「表に出られないかもしれない」といった不安や恐怖もあったりしました。でも、それは自分では変えられないことですよね。治るかどうかもわからないと言われている病気にかかって、悩んでも状況は変わりません。だったらもう受け入れて、これからの時間を有意義に過ごそうと思いました。何かあったらその時はその時です。その時までは一生懸命、自分のできることをしていけたら幸せだなと思っています。

大島 昇先生大島先生

素敵な考え方ですね。病気に対して正しい知識を持って適切な治療を受けることで、多くの場合は症状をコントロールできます。また、周囲の方にも尋常性白斑について正しく理解し、偏見なく接していただくことも大切です。例えば、白斑は感染性ではなく、患者さんとの接触で発症することはありません。そういった病気への理解が、みなさんの生活を豊かにしてくれると信じています。

奥菜 恵さん奥菜さん

治療中ですが経験者としてみなさんにお伝えしたいことは、治療は早ければ早いほどいいので、白斑をみつけたらすぐに病院に行き、治療を受けて欲しいです。大島先生、本日はありがとうございました。

編集部まとめ

難治性の疾患を治療中とは思えないくらい明るい雰囲気でお話されていた奥菜さん。心が沈むことがあっても、強く前向きに進んでいる姿が印象的でした。そんな奥菜さんと大島先生が声を揃えていたのが「異変に気がついたらすぐ病院へ」ということ。治療は早ければ早いほど効果に期待ができる、と何度も話されていました。また、お話を伺っていて、たくさんの情報を集めることもいいですが、何よりも信頼できる情報を得る大切さを感じました。

この記事の監修医師