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【闘病】トリプルネガティブ乳がん 「4cmのシコリ」はマンモグラフィに写らず…

 更新日:2024/08/06
【闘病】30代。私の乳がんはマンモグラフィに写らず、超音波検査でわかった《トリプルネガティブ》

一般的な乳がん検診は、マンモグラフィでの検査が指針として定められています。しかし、breast_cancer_emi34さん(仮称)は、超音波検査でしっかりと写っていたしこりが、マンモグラフィではまったく写っておらず、両方セットで受ける大切さを実感したそうです。検診の大切さや治療の選択、がんと診断されてからの過ごし方など、たくさんの想いを話してもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年3月取材。

> 【写真】退院後のbreast_cancer_emi34 さん&【イラスト解説】放置厳禁!! トリプルネガティブ乳がんの4つの症状

breast_cancer_emi34さん

体験者プロフィール
breast_cancer_emi34(仮称)

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1987年生まれ、東京都在住。2021年8月にしこりを見つけ、抗がん剤、手術、放射線と約1年3ヶ月の治療を行い、現在は無治療、経過観察中。医療業界で営業として働いていたが、乳がんをきっかけに生活を見つめ直し、現在は画家に転身。アートを通して乳がんの啓発活動なども行っている。

Instagram

寺田 満雄

記事監修医師
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

マンモグラフィで写らず、超音波検査で判明した乳がん

マンモグラフィで写らず、超音波検査で判明した乳がん

編集部編集部

最初に不調を感じたのはいつですか? どういった状況だったのでしょうか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

お風呂で浴槽に浸かっていた時に、ふと硬い何かに触れた気がしたのが最初です。「え? まさか……?」と思い再度しっかり触ってみると、そこにしこりがありました。不調はなく、いつも通りに過ごしていたのでビックリしたというのが最初の感想です。

編集部編集部

受診から、診断に至るまでの経緯を教えてください。

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

近くの乳腺クリニックを探し、マンモグラフィと超音波検査を行いました。超音波検査ではしっかりとしこりが写っており、4.2cmのしこりと2cm以下のしこりが複数ありましたが、マンモグラフィには写っていませんでした。アジア人や若年層は高濃度乳腺の可能性が高く、マンモグラフィだけでは不十分であると知ってはいましたが、実際に画像で見比べると、あれは本当なのだと身をもって実感させられました。ですので、友達には「必ず両方セットで受けた方がいい」と伝えています。血液検査の結果も悪性を示していたので、大学病院を紹介してもらい、PETや造影剤MRIなどの精密検査を受けました。しこり発見から検査結果が揃うまで約1ヶ月ほどかかったのですが、この期間が1番不安でしたね。

編集部編集部

告知はどのような形でしたか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

診察室に入ると、先生が画像を見ながら検査結果のデータを並べていて「先日の検査ですが、残念ながら、がんという結果が出ています」と話が始まり、普通に「はい」と答えました。しこりの感触から、これはもうがんだろうなと思っていたので「やっぱりそうですよね」という感じでした。

編集部編集部

どんながんだったのでしょうか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

乳がんの中でも、トリプルネガティブという悪性度の高い種類でした。乳がん全体の15〜20%と言われています。

編集部編集部

どのように治療を進めていくと医師から説明がありましたか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

トリプルネガティブの場合、抗がん剤が必須になります。流れとしては、抗がん剤でがんを小さくしてから手術をすると説明がありました。抗がん剤によって卵子もダメージを受ける可能性が高いので、将来の妊娠に備えて「卵子凍結」をするかどうか、次の診察までに考えてきてくださいと言われました。

編集部編集部

そのときの心境について教えてください。

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

もともと子どもがほしいと思ったことはなく、自分のやりたいことを優先して生きてきたので、温存しなくてもいいかなと思っていました。しかしはっきりと「妊娠できなくなるかもしれない」と言われると急に「子どもができない人生」が現実に押し寄せてきて、悩みました。でも、もし温存したとしても私が助からなかったら意味がないし、治療を早く始めたいという想いから、その日のうちに先生に抗がん剤のスケジュールを抑えてもらいました。1日でも早く抗がん剤治療を済ませて治したいという気持ちの方が強かったです。

楽しい想い出とともに乳房と別れ

楽しい想い出とともに乳房と別れ

編集部編集部

実際の治療はどのように進められましたか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

抗がん剤を2週間毎に8クール、手術(乳房全摘・再建なし)、放射線治療、ゼローダ服用という約1年3ヵ月の治療でした。実際は、手術後の病理検査で完全奏功(がんが全て消失すること)とはならず、その後の治療は治験に参加するか、従来治療を行うか、どちらも予後は変わらないので決めてくださいと主治医に言われ悩みました。結局、調べてもどちらが最適なのか選べずセカンドオピニオンを受けました。非常に分かりやすい説明(詳しくは私のインスタグラムにも記しています)を受けて状況を整理でき、従来治療の放射線とゼローダ服用を選択しました。がん治療は要所要所で自分が治療を選択していかなければいけません。私は自分が納得してからでないと次に進めなかったので、セカンドオピニオンを受けて本当に良かったと思います。

編集部編集部

受診から手術、現在に至るまで、何か印象的なエピソードなどあれば教えてください。

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

妹に電話で報告した時に「emiちゃん、死なないよね?」と震える声で聞かれました。「大丈夫。乳がんは生存率が高いから」と動じずに答えたつもりですが、涙は止まらなかったです。父が肺がんで、告知から3ヵ月で他界したこともあり、母や妹たちを心配させたくなかったので、治療方針が決まった後に冷静に淡々と報告しました。できるだけ気丈に振る舞いたかったので、顔を見て報告はできませんでした。先生からの乳がん告知より、家族への報告の方が何倍も緊張しました。

編集部編集部

手術は怖くなかったですか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

手術は全摘出でしたので、手術日が近づくにつれて情緒不安定になりました。テレビや広告などで見かけるグラビアアイドルに嫌悪感を抱く時期もありました(笑)。「今は再建の技術も向上しているから再建すればいいじゃん」という意見も受けましたが、同意できずモヤモヤしていました。特に男性は乳房を再建してほしいと考えている人が多いようで、パートナーと喧嘩になったという話をよく聞きました。再建すれば見た目は戻りますが、触感や機能は戻りませんし、いずれにせよ、何年も自分の一部として当たり前に生活してきた部分がなくなるのは寂しいものです。私は、手術前に乳がんフォトの撮影をしたり、パートナーと温泉旅行に行ったりして、手術前の乳房との想い出をつくり、お別れの準備をしました。悲しい記憶を楽しい想い出をセットにすることで、今思い出しても「旅行、楽しかったな〜」とポジティブに思えるのでオススメです。

編集部編集部

病気の前後で変化したことを教えてください。

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

お酒とタバコを止めました。なので治療中が1番健康的な生活をしていたと思います(笑)。抗がん剤治療をしながらキックボクシングジムも通っていました。調子がいい時は週6で行っていたので、副作用で脱毛してもスキンヘッドの強そうな人と思われるだけで、みんな気にしていなかったので救われましたね。それと、これまで以上にやりたいことをやる、会いたい人にはすぐ会うようになりました。当時は「乳友(=乳がんで知り合ったお友達です)」と交流することが多かったのですが、DMで「いつか会おうね」と約束していた相手が、会う前に天国に旅立ってしまったということもあったからです。命に限りがあることを何度も突きつけられ、様々な想いを経験しました。未来があるか分からないという不安から、今を楽しみたいとの想いが強くなったと思います。治療後に仕事も復職しましたが、本当に人生一度きりだし、今やれることをやれるだけやってみようと会社員を辞め、画家になりました。アートを通して乳がんの啓発にも繋げていきたいと挑戦しています。

編集部編集部

今までを振り返ってみて、後悔していることなどありますか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

実は発見の2年前にマンモグラフィと超音波、乳房用PETの検査をして「異常なし」と言われていました。だから翌年は検査をしなかったのです。そしたらその翌年に4cmのしこりが見つかりました。もし毎年検査をしていたら、もう少し小さいうちに見つかったかもしれません。1度検査したから大丈夫と思っていた過去の自分に「毎年」検査しなきゃ意味ないよと言いたいです。健康だからこそ、体の心配をせずに何事にも取り組めます。仕事だけじゃなく恋愛だってそうです。

いわゆる「普通」の生活に戻り、アートの個展を開催

いわゆる「普通」の生活に戻り、アートの個展を開催

編集部編集部

現在の体調や生活はどうですか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

現在は無治療ですが、3ヵ月毎に経過観察で病院に行っています。抗がん剤の副作用で生理が止まっていましたが、今は戻りましたし、手指のしびれは続いていますが生活に支障はありません。髪も伸びたため、普段は自分から言わなければ乳がんサバイバーであることは誰も分からない状態です。告知前のいわゆる「普通」の生活を送っています。先日、京都でアートを通して乳がんの啓発と罹患者の集いの場を提供する個展を開催しました。クラウドファンディングに多くの方がご支援くださり、今後は横浜、福岡でも開催予定です。検診の大切さやセルフチェックのやり方、治療中に必要なウィッグやブラジャーなどの情報交換、交流の場として約150名の方にお越し頂き、皆さまと様々な話ができました。お陰様で生活は大変充実しています。

編集部編集部

医療機関や医療従事者に望むことはありますか?

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

治療に関わって下さった皆様には本当に感謝しています。ただ、「何かあったら病院に電話してください」と言われていましたが、特に大学病院は実際に電話してもなかなか繋がらず、とても不便だったのでチャットなど気軽に連絡が取れる手段があるといいなと思います。例えば、指に黒いシミのようなものが出てきたり、お腹辺りに赤いぶつぶつができたり、術後の体液の状態など副作用なのか、知らせた方がいいのか、わざわざ診察に行くほどでもないけど、気になる症状が発症することがあります。治療は全て初めてのことばかりで慣れるまでは敏感なので、そういうちょっとしたことを手軽に連絡できる手段があれば安心できるのにな、と思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

breast_cancer_emi34さんbreast_cancer_emi34さん

「足るを知る者は富む」。治療中に目に留まり心に刻まれた言葉です。健康であることがどれほど有り難いことなのか。当たり前のことが当たり前じゃなくなった時に改めて「有り難さ」に気づきました。あれもこれもと求めるばかりでは一生満足できません。ちょっと立ち止まって今の状況の有り難さに感謝し、自分が本当に好きなこと、愛と命の時間を注ぐ相手を考えることも大切だと身を持って学びました。だからこそ、仕事で忙しいからと検診を後回しにするのではなく、自分の身体を第一優先に行動してほしいと思います。深呼吸して空を見上げる時間も忘れないでほしいですね。それから、保険はがん診断給付金(一時金)のある保険をオススメします。私はこの一時金のおかげで心の余裕ができ、闘病中もお金の心配をせずに旅行や趣味を楽しみながら治療を前向きに受けることができました。最後に、この記事を読みながら「私は大丈夫」と思ったあなたにこそ、今月中に検診を受けてほしいと思います。

編集部まとめ

検査方法によって、腫瘍が見えたり見えなかったりしたという体験をされたbreast_cancer_emi34さんが「必ず両方セットで受けて」と主張する心情はよく理解できるところです。一方で、記事監修の寺田先生によれば、それによるデメリットもあるそうで、『必ず両方セット』が良いとは言えないそうです。メリット・デメリットを考慮した上での判断が必要になるのだと思います。また、「毎年検査をしていたら…」という言葉もありましたが、お仕事などで検診を後回しにしてしまっている人や「自分は大丈夫」と思っている人はまず、近くのクリニックを調べることから初めてみてはいかがでしょうか。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師