【闘病】夏バテと思っていた症状が「全身性エリテマトーデス」だったとは…
育児の真っ只中に病気が発覚したら、多くの人が「もしもの時、子どもはどうしよう……」と不安になるのではないでしょうか。闘病者のカヨコさん(仮名)は、お子さんが幼稚園児のときに、SLE(全身性エリテマトーデス)と診断されました。SLEは、免疫機能が自身の身体に向けて攻撃してしまう「自己免疫疾患」です。カヨコさんはご自身の病気と子育てに、どのように向き合っていったのか、聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。
体験者プロフィール:
カヨコ(仮称)
1972年生まれ、東京都在住。夫と2人暮らし。専業主婦。2000年6月ごろから微熱、体のむくみなどの症状が現れ、同年11月に病院にておそらくSLE(全身性エリテマトーデス)と告げられ、ステロイドパルス治療3開始する。治療を中断していた2016年に「糖質オフダイエット」を行ったところ、急性心不全となり、3日間命の危機となるが生還し、再びパルス治療へ。現在は、透析によりSLEが落ち着き、健常者に近い生活を維持している。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
発症当時は子どもが小さく、自分の体に気を配る余裕がなかった
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
カヨコさん
2000年6月微熱が続き、体重も増加し、息苦しさを感じるようになりました。微熱が下がらず、手足が浮腫んできたことから内科を受診すると、すぐ大きな病院へ行くように言われました。そこで入院することになり、何度も採血をしましたが診断はつかず、最終的に「たぶんSLEだろう」とのことでした。
編集部
自覚症状などはあったのでしょうか?
カヨコさん
最初は風邪っぽく、その後は微熱が続きかなりだるさもありましたが、暑い夏でしたので「夏バテかな?」とやり過ごしていました。しかし、なかなか治らず、日に日に浮腫みが悪化したことで、不安を感じるようになりました。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
カヨコさん
子どもがまだ幼稚園児でしたので、絶望しかない状況でした。頼れるはずの双方の実家も遠方だったので、生きた心地がしませんでした。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
カヨコさん
約四半世紀前でしたのでネットの情報もまだ十分ではなく、本を読んでも「膠原病」というくくりでまとめられており、SLEについては、ほとんど情報が得られなかったことが辛かったです。何がダメで何に気をつければよいのか、日常生活の注意点すらよくわからない状態のまま退院となりました。子どもが分離不安から、夜泣きなどいろいろと症状が出たことで、自分の体調に気を配る余裕もありませんでした。
編集部
どのようにSLEの治療を進めていくと医師から説明がありましたか?
カヨコさん
採血では病名は確定できないけれど状態がかなり悪いとのことで、そのまま入院し、ステロイドパルス治療を開始しました。当時はその病院で、SLEを治療した経験がなかったそうで、対症療法で様子を見るしかないと言われました。
編集部
治療の効果はあったのでしょうか?
カヨコさん
2週間に1回の通院で様子を見てもらっていたのですが、担当の医師がよく変わるので、セカンドオピニオンを受けたところ、やはり治療法がないとのことで自暴自棄になり一度治療を中断しました。
編集部
中断していた期間に症状は悪化しなかったのでしょうか?
カヨコさん
漢方医を受診したり、鍼灸院など東洋医学を取り入れていたりいました。その効果もあったのか、症状は落ち着いていました。ですが、当時流行っていた「糖質オフダイエット」をしたところ、急性心不全となり、3日間命の危機に陥りました。
編集部
その3日間はどのような状況だったのですか?
カヨコさん
救急外来で診てもらったところまでは記憶がありますが、検査中に意識が飛び、気がつけばベッドの上でたくさんの機械に繋がれていました。それが3日後だったとのことです。
透析前の保存期に発症した、拒食症と鬱
編集部
その後、透析前の保存期に入られたそうですね。
カヨコさん
はい。退院と同時に透析を始める予定だったのですが、自己血管シャントがうまくいかず、透析前の保存期に入りました。食べられるものがわからず、精神的に滅入ってしまい、拒食症と鬱を発症したのもこのころです。
編集部
透析前の保存期はどのくらいあったのでしょうか?
カヨコさん
血管が細いうえにステロイドを大量に飲んでいたので減薬しながら様子を見ていて、手術ができるまで一年待ちました。タンパク質20g、塩分3gで日常生活を送ることはとても難しく、食べられるものがほとんどないので、一年で15kg痩せました。精神的にも辛かったです。
編集部
SLEに向き合う上で心の支えになったものを教えてください。
カヨコさん
「どんな姿でも生きてほしい」という主人の言葉だけを信じて励みにしていました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
カヨコさん
ストレスが引き金になるとも言われるので、良くも悪くもマジメなところをもう少し柔軟に、“片目で見る”くらい心に余裕を持つこと、自分の異変に早く気づき、早めに対処することでしょうか。
同病の人には、「無理して頑張らないで」と伝えたい
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
カヨコさん
免疫抑制剤とステロイド薬を治療のメインとしていましたが、帯状疱疹をきっかけに痛みで食べられず栄養失調となったので、免疫抑制剤が強く効きすぎることからステロイド薬のみで治療しています。ステロイド薬は30mgから始まり、現在は朝のみ5mgで維持しています。現在は感染対策をしっかりして、なるべく規則正しい生活を心掛けていますが、それ以外は日常生活を問題なく送ることができています。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
カヨコさん
SLEは、病院によって腎臓内科、血液内科、膠原病科、リウマチ科とバラバラなので症例が集まっていかないように感じます。対症療法だけでなく根本的な治療薬の開発のためにも、国が統一して「難病治療」へ目を向けていただければと思います。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
カヨコさん
SLEは全身性の病気であり、いまはまだ完治も望めません。同病の方は常に爆弾とともに生活するような毎日で、ネガティブになってしまうかもしれませんが、つらいときは周りに甘えて自分だけで無理して頑張ろうとしないようにしてください。リラックスできることをして、自分を大切にしてください。
編集部まとめ
SLEは女性に多くみられる疾患ですが、女性は、学業、仕事、子育て、介護など、どのステージにおいても、つい自分のことを後回しにしてしまうことが多いのではないでしょうか。カヨコさんは、「少しでもおかしいと思ったときはためらわず、自分優先で、とにかく早く受診することが大切です」と話されていました。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。