【闘病】看護師なのに「バセドウ病」に気づけず… 日々痩せていくのも症状だった
バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰分泌されることによって発症し、若い女性に頻度が高い疾患です。バセドウ病の症状は一見病気とは思えないものが多く、闘病者の押川映子さんも初期症状では気付けなかったと言います。現在、バセドウ病をコントロールしながら子育ても頑張っている押川さんの体験談からバセドウ病について理解を深め、早期発見につながる知識を身に付けましょう。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。
体験者プロフィール:
押川 映子
子どもと2人で暮らす40代女性。2009年5月頃、結婚を機に生活の変化が訪れるが、その前後から疲労感や空腹感、情緒の不安定さを感じるようになった。1年半ほど様子を見ても改善が見られない状態が続く。不妊治療のため病院を受診したところ、検査でバセドウ病が判明した。現在も医師と相談しながら少量のメルカゾールの内服を継続している。
記事監修医師:
久高 将太(琉球大学病院内分泌代謝内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
年齢のせいだと思っていた異変はバセドウ病が原因だった
編集部
はじめにバセドウ病について教えていただけますか?
押川さん
バセドウ病は甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、眼球突出や手の震え、動悸、疲労感などの症状が現れる病気です。20~30代の若い女性が発症しやすいといわれています。とはいえ、私は仕事もあって疲労感を日常的に感じやすく、症状と認識するのが難しかったです。複数の症状を併せ持っていても、私自身が無自覚だったことを思うと、同様に気付けない方もいる病気なのかなと思います。また、職員100名ほどの病院で働いていた時、その中でバセドウ病を罹患している人は6名いました。そう考えると、比較的患者数の多い病気なのだと再認識できました。
編集部
押川さんがバセドウ病と診断されるまでの経緯も教えていただけますか?
押川さん
2009年5月頃に当時付き合っていた方と結婚したのですが、その前後から疲れやすさと頻繁に訪れる空腹感、食べても太らずイライラしやすい状態が続いていました。当時は30歳目前だったこともあり、年齢から来るものだと思い込んでいました。
編集部
すぐにバセドウ病を疑うような症状はなかったわけですね。
押川さん
※振戦…ふるえのこと
編集部
自覚できる症状ではなかったため、気付かなかったのですね。
押川さん
内分泌内科に受診した際、自分では振戦もないと思っていたのですが、医師からは「しっかり振戦あるよ」と呆れられたのをはっきり覚えています。
編集部
医師からはどのように治療をしていくと説明されたのですか?
押川さん
治療方法は手術・放射線・内服の3種類があると説明されました。一般的なのは内服で、「妊娠希望を考えると一番有効なのも内服だと思います」と提案を受けました。内服治療はメルカゾールという薬を使用し、採血結果に合わせて適宜減量または増量していき、長期的な服用が必要とのことでした。
編集部
その後無事にお子さんを出産したそうですが、妊娠中の治療はどのように行ったのでしょうか?
押川さん
内服薬のメルカゾールは副作用で胎児奇形のリスクがあったため、妊娠中はプロパジールという薬に変更しました。出産後しばらくは甲状腺ホルモン値が落ち着いていて、投薬せずに過ごしていましたが、9カ月目から数値の悪化がありました。ただ、メルカゾールに戻すと授乳に影響するとのことで、予定より大幅に早く断乳せざるを得ませんでした。
編集部
バセドウ病の方が妊娠・出産するにあたって、注意すべき点は何でしょうか?
押川さん
私の場合は不妊外来、バセドウ病発覚、妊娠計画の順序でしたから、既にバセドウ病で治療している方は注意してほしいです。バセドウ病は女性のライフステージに大きな影響を与える病気であると今は強く思います。
「赤ちゃんがほしい」と願う気持ちが心の支えに
編集部
バセドウ病と判明した時の心境についても教えていただけますか?
押川さん
正直な気持ちは「この疲労感や食べても太らない感じは、30歳の洗礼じゃなかったの? だったらもっと早く受診すればよかった」と思いました。それほど思いもよらないことでした。
編集部
診断を受けてから生活にはどのような変化があったのでしょうか?
押川さん
これまでは大きな病気の経験がなく、服薬も花粉症の時期のみだったため、連日の内服薬管理に意外と苦労しました。看護師は患者さんのケアには長けていますが、自己管理は上手じゃないことも多くて、私自身もその1人でした。また、薬の効果と拮抗してしまうため、海藻系の過剰摂取はだめとのことで、気を付けていました。
編集部
治療中の心の支えになったものは何でしょうか?
押川さん
妊娠から現在に至るまでは、きちんと内服を続けないと悪化すること、ストレスが溜まって悪化すると怖いという思いがありました。現在はシングルマザーなので、「子どもとの生活のためにもちゃんとコントロールしよう」という気持ちが大きな支えになっています。
編集部
現在の体調や生活についても教えていただけますか?
押川さん
現在は1日おきに1回メルカゾールを内服するだけです。日常生活には特に問題もなく、今はしっかりコントロールがついていてストレスもない生活を送っており、症状もありません。ただし、1日おきに内服するのは意外と飲み忘れやすいので、薬の外装に内服予定日を書いて、忘れないように管理しています。
編集部
病気が発覚する前のご自分にアドバイスできるとしたら、何を伝えたいですか?
押川さん
「若いから病気なんて関係ないなんて思い込みはやめて」ということです。
一生付き合う病気だからこそ仲良くしていくことが大切
編集部
バセドウ病について意識していない人、病気を知らない人に伝えたいことはありますか?
押川さん
女性の割合が高いバセドウ病ですが、男性でも私の身近に罹患した方がいました。この病気はイライラという症状もあり、場合によっては精神疾患と間違われることもあるので気を付けてほしいです。
編集部
押川さんが医療従事者に期待すること、伝えたいことはありますか?
押川さん
私自身も医療従事者ですが、今回自分の病気に気付けなかったことはとても悔やみました。受診先は発症から13年で転居もあったため、4箇所になりました。ですが、どの病院でもみなさんが丁寧に対応していただき、困った覚えはなく感謝しています。
編集部
最後に本記事の読者向けにメッセージをお願いできますか?
押川さん
私の経験しているバセドウ病は、寛解(病状が治まること)が見込めますが、再発も多い病気です。そのため、発覚から生涯にわたり仲良く付き合う必要があります。とはいえ、コントロールがしっかりつけば、日常生活に大きな支障はありません。このような病気はほかにもたくさんあります。目の前の人が目に見える障害や病気がなくても、辛そうにしていたら手を差し伸べるのが当たり前の世の中になってほしいと思っています。
編集部まとめ
バセドウ病には押川さんも行っている薬物療法、放射性ヨウ素内用療法、手術の3種類があるようです。それぞれのライフスタイル、キャリアに合わせて最良の選択をすることも重要です。罹患している方は病状のコントロールを意識し、無理のない生活を送るよう心掛けましょう。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。