【闘病】高校生で“全身性エリテマトーデス”を発症、部活動を断念…「無理に前を向かなくてもいい」
高校生の時に突然「全身性エリテマトーデス(SLE)」を発症し、5年以上にわたり闘病生活を送る「まりえ」さん。病気の影響でずっと続けていたソフトボールを断念せざるを得ず、生活が一転したそうです。そこで、まりえさんに病気が発覚した経緯から治療方針、現在の体調の様子や闘病中の心の支えについて聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2024年2月取材。
体験者プロフィール:
まりえさん(仮称)
家族3人で暮らす20代女性。高校2年生の頃に全身性エリテマトーデス(SLE)を発症。40度以上の高熱が1週間ほど続き、病院では命の危険もあると説明を受ける。現在は直射日光、冬は寒さ対策を徹底しながら仕事をしている。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
高校生でSLEを発症し、命の危機を経験
編集部
はじめに、まりえさんの経験した全身性エリテマトーデス(SLE)という病気について教えてください。
まりえさん
「全身性エリテマトーデス(SLE)」は免疫系に異常をきたす膠原病の1つです。本来は体を守るはずの免疫系が原因不明の異常で自分自身を攻撃することで、さまざまな症状が現れます。20~40代の女性に多いことがわかっており、三大初期症状には発熱・関節炎・皮疹があります。中でも皮疹は、顔面に蝶のような形をした赤みが出現する「蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)」が特徴です。
編集部
検査や治療はどのように行うのが一般的ですか?
まりえさん
まず診断には血液検査で抗体(異物と戦うタンパク質)、白血球数、血小板数、貧血の有無を確認します。そして、尿検査(尿蛋白や血尿の有無)や病変を把握するためのCT・MRI検査、心臓超音波検査、心電図なども行います。必要に応じて別の検査をすることもあるようです。
編集部
まりえさんがSLEを発症したのは突然だったのでしょうか?
まりえさん
はっきりとは覚えていないのですが、高校3年生の頃に突然発症しました。
編集部
医師から告知を受けた際、どのような治療を行うと説明されましたか?
まりえさん
こちらもはっきり覚えていないのですが、「ステロイド剤と免疫抑制剤を使用し、症状が落ち着いたら徐々に薬の量を減らしていく」と説明されたと思います。
編集部
日常生活での注意点は説明されましたか?
まりえさん
20代の女性に発症する人が多く、太陽光に当たってはいけないと説明を受けました。
大好きだったソフトボールができなくなり、学校に行きたくないと思う時期があった
編集部
病気が判明した時の心境はかなりのショックだったかと思います。
まりえさん
そうですね。当時の私は高校2年生で、小学校から少年野球、中学校からソフトボールを始め、高校はスポーツ推薦で入学するほどソフトボールが好きでした。しかし、SLEに罹患すると太陽の光に当たってはいけないため、今すぐ部活を辞めなさいと医師から言われて頭の中が真っ白になりました。また、脱毛が激しく頭頂部の毛がほとんどなくなり、学校に行くことも嫌だと思う時期がありました。
編集部
発症後の高校生活は大きく変わったのですね。
まりえさん
当時は県内のソフトボール強豪校にいて、電車の始発で通学して終電で帰宅するような毎日を送っていました。しかし、SLE発症と同時にやることがなくなってしまい、心に大きな穴が空いたような気分でした。日傘を持ち始め、自転車と電車で通学していたのをバス通学に切り替えました。
編集部
最も辛い時期を乗り越えるために心の支えになったものは何でしょうか?
まりえさん
よほどショックだったのか、当時のことはよく覚えていません。どうやって治療を乗り越えたのかが自分でもよくわからないですが、唯一の楽しみは入院中に母が持ってきてくれる手作りのお弁当でした。
発症から何年も時間が経っても戦いは続いている
編集部
現在の体調について教えていただけますか?
まりえさん
現在は月に1度病院で検査をして、血液検査の数値次第でステロイド剤の量を増減しています。免疫抑制剤とステロイド剤を5年以上飲み続けて、今ではステロイドが10mgまで減らすことができました。
編集部
体調は時期によっても変動するのでしょうか?
まりえさん
夏は外に出なければ基本的に元気ですが、冬は気温が下がるため常に体が痛い状況が続きます。また、仕事の業務時間が終わった後はゆっくりする時間を取ることができています。ただ、私の場合は蝶形紅斑が疲労のバロメーターになっていて、すごく疲れが溜まると蝶形紅斑で顔が真っ赤になってしまいます。
編集部
普段の生活で気を付けていることは何でしょうか?
まりえさん
疲労を溜めないことと、自転車通勤なので夏はフード付きのパーカーで日光を避け、冬は手袋にマフラーなど防寒対策をすることです。22歳の頃に勉強の疲れが出たのか、受験予定だった国家試験の1週間前にステロイドの過剰摂取とストレスで蜂窩織炎(ほうかしきえん)になったことがあります。その経験があるので、疲労とストレスには普段から気を付けています。
編集部
もし発症して間もない頃の自分にかける言葉があるとしたら、どのような言葉を伝えたいですか?
まりえさん
とりあえず、周りを気にせずに泣きなさいということです。難病だから家族や友達に迷惑をかけてしまうと感じて、ここで泣いてしまったらさらに心配をかけてしまうと、ほかの人の前では気丈に振る舞っていたからです。また、当時は高校生だったこともあり、親にたくさん支えられていました。もしかしたら私以上に親の方が辛い思いをしていたかもしれません。なので、親に感謝の気持ちを伝えたいです。
編集部
全身性エリテマトーデスという病気について知らない人、普段意識せずに過ごしている方に向けて伝えたいことはありますか?
まりえさん
あえて意識しなくてもいいです。ただ、見た目がとても健康そうな人でも病気を隠していることはあります。特に電車やバスで優先席に座っていることもありますから、そのことは知っていてほしいです。
編集部
まりえさんから医療従事者に期待することはありますか?
まりえさん
一番は早く治る薬を見つけてほしい、これに限ります。あん摩マッサージ指圧師と鍼灸師資格を持っているので、新薬の開発がいかに大変なことなのかは理解しています。それでも、SLEは本当にしんどいと感じる時が多いので、早く治る薬がほしいと切実に願っています。
編集部
最後にまりえさんから本記事の読者向けにメッセージをお願いします。
まりえさん
SLEは20代以降の女性に多い病気です。もし身近にSLEで辛い思いをしている方がいたら、少しでいいので寄り添っていただきたいです。この病気になって苦しいことのほうが多く、私自身も完全に乗り越えられているわけではありません。もし同じ病気の方がこの記事を読んでくださったら、乗り越えようとせず、無理に前を向かなくてもいい、気持ちを楽にしてほしいと思います。そして、SLEを抱えて生きているすべての方に「お願いだから無理はしないで」と伝えたいです。
編集部まとめ
全身性エリテマトーデス(SLE)は長い投薬治療が続く病気です。ストレスや疲労で病状が悪化することもあり、気の休まらない患者さんはたくさんいらっしゃいます。一見すると病気だと気づかれづらい点も、周囲からの理解が得にくい要因になっているかもしれません。SLEという病気があることを知り、自分の周囲に少しずつ目を向けることで、病を抱える患者さんからも助けを借りやすくなります。無理に意識しなくても困っている人には自然に声をかけ、助けられる社会を作っていければと思います。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。