大腸カメラの苦痛が少ない「軸保持短縮法」という方法はご存じですか? 【医師解説】
大腸内視鏡検査は、大腸の内部を直接観察できる非常に優れた検査方法ですが、人によっては苦痛のイメージから敬遠されがちです。そこで、そんな不安を払しょくする大腸カメラの「軸保持短縮法」での検査について、内視鏡医の工藤豊樹先生(東京内視鏡クリニック院長)にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
工藤 豊樹(東京内視鏡クリニック)
大腸内視鏡検査とは?どんな病気がわかるの?
編集部
大腸内視鏡検査について教えてください。
工藤先生
いわゆる「大腸カメラ」のことで、小型のカメラを肛門から挿入し、盲腸から直腸までの大腸全体の粘膜を直接観察する検査です。早期がんや大腸ポリープなどが見つかった場合は、その場で切除することも可能です。
編集部
カメラを入れるのは痛そうです。
工藤先生
そのような不安を訴える方もいらっしゃいますが、実際には痛みをそこまで感じないことが多いのではないかと思います。個人差はありますが、違和感や恐怖感、じっとしていなければならない辛さが、余計にそのように感じさせてしまうのかもしれません。
編集部
検査でどのような病気がわかるのですか?
工藤先生
大腸がんや大腸ポリープ、大腸憩室症、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性腸炎、内痔核などの病気を発見することができます。特に、初期の大腸がんや大腸ポリープは、全く症状はありませんので、早期発見のためには無症状の内に内視鏡検査を受けることが非常に大切です。
内視鏡検査の苦痛は緩和できる? 内視鏡医が伝授
編集部
苦痛を緩和するにはどうしたら良いでしょうか?
工藤先生
経験の豊富な内視鏡専門医のもとで、リラックスして検査できると一番良いと思います。また、不安が強い場合は、鎮痛・鎮静剤を使うこともできます。さらに大腸カメラでは、「軸保持短縮法」という内視鏡の挿入方法も開発されています。
編集部
軸保持短縮法とはなんですか?
工藤先生
大腸は曲がっている部分が多く、また腸自体が体に固定されていないために自由に可動できる箇所も多くあります。そのため、カメラをそのまま進ませてしまうと腸管の粘膜が押されたり引き延ばされたりすることで、患者さんは苦痛を感じます。こうした問題点を解決するのが軸保持短縮法という手法です。腸管を極力伸ばさないようにカメラを進めていくので、患者さんの苦痛を軽減するだけでなく、腸壁を傷つけるリスクも少ないため、より安全な内視鏡検査が可能になります。
編集部
もう少し詳しく教えてください。
工藤先生
大腸を少しずつ手繰り寄せて、たたみ込むようにしながらカメラを進めていきます。例えば、靴下を履くときにはできるだけ靴下を筒状に短くして(短縮して)一気に履く方が簡単にはけると思います。それと同じで、腸管もできるだけ短縮してから内視鏡を入れた方が簡単に入ります。言葉にすると単純な方法に聞こえますが、軸保持短縮法は高い技術力や豊富な経験がなければ習得できない難しいテクニックと言われています。靴下を履くときのように検査中は両手を使えるわけではなく、内視鏡スコープだけで進めていくので、内視鏡医には相当な技術が求められるのです。私たち内視鏡専門医の分野における数ある内視鏡手技の中でも、もっとも習得が難しいと言われています。
内視鏡検査を受ける医療機関を選ぶポイントは? 費用も教えて!
編集部
実際に大腸内視鏡検査を受ける時、どのような医療機関で受けたら良いでしょうか?
工藤先生
やはり内視鏡専門医のいる施設で、大腸内視鏡検査の経験豊富な医師にお願いするのが良いと思います。医療機関のHPなどには、医師のプロフィールが掲載されていますので、「内視鏡専門医」の記載や内視鏡専門医としての経験がどのくらいあるかなどを確認してから受診しましょう。
編集部
検査を受ける時に知っておいた方が良いことなどはありますか?
工藤先生
検査前には腸管に溜まっている便を外に出す作業が必要になります。そのため、腸管洗浄剤という液体を1~2リットルほど飲んでいただきます。検査のおよそ4時間前から飲むのですが、あまり美味しい飲物ではありません。実際には検査よりもこちらの方が大変だと言われる患者さんが多いので、そこは理解しておく必要があります。
編集部
費用についても教えてください。
工藤先生
大腸内視鏡検査やポリープ切除には保険が適用されますので、ポリープ治療した場合は、3割負担の方で2~3万円、1割負担の方で1万円前後となっています。これに加えて診察代や鎮静剤などを使った場合はその費用、気になる組織を生検した場合などは、その費用も加算されます。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。
工藤先生
大腸内視鏡検査は、腸管の粘膜を直接観察できる優れた検査法ですが、苦痛を伴うということで敬遠されてきました。しかし最近は、苦痛を和らげるための工夫がたくさん開発されており、そのひとつが「軸保持短縮法」です。医師が軸保持短縮法のテクニックを習得するためには2~3年くらいの修行が必要で、まだどこのクリニックでも受けられるわけではありませんが、軸保持短縮法で検査できる医師というのは、それだけの高い技術を持っているという指標でもありますので、ご自身の担当医に「軸保持短縮法を用いて検査をしているか否か」を少し聞いてみるのも良いと思います。
編集部まとめ
大腸カメラの痛みを緩和する方法として、鎮痛・鎮静剤などはよく聞きますが、最近は「軸保持短縮法」という検査法があるそうです。まだ「どこででも気軽に受けられる方法」というわけではないようですが、痛みに恐怖感のある方などは、多少遠いクリニックであっても、受ける価値はあるかもしれません。
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診療科目 | 消化器内科 |