【医師解説】痔の日帰り手術にかかる時間はどのくらい? 治療の流れを教えて!
痔を発症したときに薬物療法などで効果がみられない場合は、手術が必要になります。最近では日帰りでも手術を受けることができますが、一体どのような流れでおこなわれるのでしょうか。痔の手術の流れや注意点などについて、「川﨑病院」の川﨑先生に解説していただきました。
監修医師:
川崎 俊一(川﨑病院)
目次 -INDEX-
痔の日帰り手術とは?
編集部
最近は痔を日帰り手術で治療できると聞きました。
川﨑先生
近年、医療技術の進化により、患者さんに負担の少ない、低侵襲の術式が確立されています。それにより、「痔の手術を受けたいけれど、仕事が忙しくて入院できない」という人でも、症例によっては日帰りで受けていただくことができるようになりました。
編集部
どのような場合、日帰り手術が適応になるのですか?
川﨑先生
まず、いぼ痔の根治を期待できる「ジオン注射」という治療法があります。ジオン注射は切開の必要がなく、注射だけで治療できる手術なので、日帰りでおこなうことができます。そのほか、切除を伴う手術の場合には病巣が1カ所であり、なおかつ出血のリスクが少ない場合には日帰り手術を受けることができます。
編集部
そのほかにも、日帰り手術が適応になるケースはありますか?
川﨑先生
歯状線という直腸の粘膜と皮膚の境目より下にできる痔ろうを「低位筋間痔瘻」と言います。低位筋間痔瘻で、かつ病巣が1カ所であり、痔ろうの距離が短い人も日帰り手術の適応になります。そのほかは、症例ごとに日帰り手術が可能かどうか判断します。
編集部
全ての症例が、日帰り手術の対象になるわけではないのですね。
川﨑先生
残念ながら、そういうわけではありません。たしかに日帰り手術は便利ですが、問題となるのは出血と痛みです。術後の痛みは鎮痛剤を服用すればしのぐことができるかもしれません。しかし、術後100人に1~2人の割合で、大量出血を起こすこともあります。その場合、日帰り手術だと対応が困難という問題があります。
編集部
日帰り手術で大量出血した場合、どのように対処するのですか?
川﨑先生
場合によっては緊急で輸血が必要なこともあるので、迅速な対応が必要です。そのため、日帰りで手術を受ける場合には、万が一そのようなことが起きたときでも、すぐに医師が患者の自宅を訪れて処置してくれる、あるいは24時間対応で急患を受け入れてくれるなど、なんらかの対策を講じている医療機関を選択することが必要です。
日帰り手術の流れ
編集部
どのようにして、日帰り手術はおこなわれるのですか?
川﨑先生
手術をする前に、まずは手術を安全におこなうことができるか確認する術前検査が必要です。具体的には、血液検査や心電図検査などをおこない、場合によってはレントゲン検査も追加します。そして、検査結果に問題がなければ日帰り手術に進みます。
編集部
手術当日の流れについて教えてください。
川﨑先生
まずは坐薬などを使って排便し、直腸の中を綺麗な状態にしてもらいます。その後、麻酔をしてそれぞれの病態に即した手術をおこないます。当院では手術時の麻酔は、局所麻酔と静脈麻酔を組み合わせます。手術時間は手術の方法にもよりますが、だいたい20~30分です。
編集部
手術後に痛みはありますか?
川﨑先生
手術後、麻酔が切れると痛みを感じることがあるかもしれません。痛みを感じる度合いは個人差が大きいのですが、徐々に軽くなってきます。基本的に、日帰り手術でおこなえる範囲の手術では、それほど痛みを感じることはないと思いますが、鎮痛剤が処方されると思うので服用してください。
編集部
手術後、気をつけることはありますか?
川﨑先生
手術当日、入浴は可能ですが、場合によっては控えていただくこともあります。また、当日はなるべく安静に過ごしましょう。
日帰り手術後の注意点
編集部
日帰りで痔の手術を受けた後、仕事にはいつ復帰できますか?
川﨑先生
状況により、オフィスワークであれば基本的に翌日から復帰できます。ただし、個人差があるので、詳しくは担当医にご確認ください。
編集部
スポーツや運動はしてもいいのでしょうか?
川﨑先生
状況によりますが、ウォーキング程度の軽い運動であれば翌日からおこなっても大丈夫です。しかし、激しいスポーツやいきむ運動は2週間くらい避けましょう。
編集部
トイレで気をつけることはありますか?
川﨑先生
手術当日からトイレも普段通りおこなえます。温水洗浄便座も使用できますが、弱い水圧で使用しましょう。水圧を強くすると痛みや出血の原因になります。また、トイレでいきむことは避けてください。
編集部
そのほかにも、気をつけるべきことがあれば教えてください。
川﨑先生
アルコールや辛い食べ物は、術後1週間くらい控えてください。手術をしてから、だいたい1カ月経つと安定してきます。ただし、治療後も便秘や下痢には気をつけ、正しい排便の習慣を身につけるように意識しましょう。
編集部
出血のリスクは、いつ頃まで続くのですか?
川﨑先生
手術の種類にもよりますが、例えば痔核の手術で内痔まで切除した場合には、術後10日目までが最も出血の頻度が高いとされています。14日目までリスクが高く、その後少しずつ減少し、3週間を過ぎるとほとんど出血のリスクはなくなると言われています。そのため、術後3週間以内は出血に注意してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
川﨑先生
たしかに、日帰りで痔の手術を受けることもできますが、日帰り手術だからすぐに元の生活に戻れるわけではないということは覚えておいていただきたいと思います。安全を考えたら本来は入院しておこなうべき治療です。実際、日帰り手術の場合にはリスクを伴いますし、出血以外にも切除した箇所の近辺が腫れるなど、トラブルが発生することもあります。また、日帰り手術の場合には排便コントロールが上手におこなえず、術後の回復に影響が及ぶ場合もあります。痔の手術自体は非常に安全性が高く、危険なものであはりませんが、それより大事なのは術後の管理です。管理が上手くいかないと難治性の傷になることもあるので、もし日帰りで手術を受ける場合にはリスクがあることを十分理解した上で、信頼できる医療機関を選択してほしいと思います。
編集部まとめ
痔の手術と聞くと、軽く考えがちな人もいるかもしれません。特に最近では日帰りで手術をおこなう医療機関も増えており、安易に考えている人も少なくないと思います。しかし、場合によってはリスクが伴うため、事前のカウンセリングなどで十分理解を深めて、手術を受けることが必要です。
医院情報
所在地 | 〒319-1234 茨城県日立市大和田町1862-2 |
アクセス | JR常磐線「大甕駅」 車で8分 |
診療科目 | 消化器内科、消化器外科、肛門外科、肛門内科、婦人科、泌尿器科、呼吸器科、外科、内科 |