【看護師に聞く】病院だと血圧が高値になる「白衣高血圧」の原因を知っていますか?
「高血圧」は自分で気づきにくく自覚症状もないため、定期的な血圧測定が重要です。人によっては、家で毎日測定している人もいらっしゃるかと思います。一方で、病院で測定すると、家で測ったときよりも血圧が高くなることがあります。そこで、「なぜ病院だと血圧が高い値になるのか」看護師の三木さんに解説していただきました。
監修看護師:
三木昭和(看護師)
血圧の基準値は? 高血圧はどこから?
編集部
はじめに、高血圧とはどのような状態を指すのでしょうか?
三木さん
血圧とは心臓が血液を送り出すときに血管にかかる圧力のことで、「収縮期血圧」と「拡張期血圧」の2つの数値で表されます。「収縮期血圧」は、心臓が収縮して血液を送り出すときの最高の圧力のことを指します。一方「拡張期血圧」とは、心臓が弛緩して血液を吸い込むときの最低の圧力です。収縮期血圧は、血圧を測定した数値の大きい方のもので、拡張期血圧は、数値の小さい方のものです。そして高血圧は、血圧が基準値よりも高い状態のことです。
編集部
血圧の基準値はいくつでしょうか? 年齢や性別によって違いますか?
三木さん
血圧の基準値は、年齢や性別、体格などによって個人差がありますが、一般的には、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合は、高血圧と診断されます。また、収縮期血圧が130〜139mmHg、拡張期血圧が85〜89mmHgの場合は、高血圧の予備軍です。ただし、この数値は安静時に測定した場合のもので、運動やストレスなどで血圧が一時的に上昇する場合もあります。基本的に、高血圧の診断は医師によって行われます。
編集部
高血圧の場合、自覚症状や合併症はありますか?
三木さん
高血圧は何か特別な自覚症状があるわけではないので、気づかないまま放置されることが多くなります。しかし、高血圧が長く続くと、血管が傷つく・硬くなるため、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中、腎不全などの重大な合併症を引き起こす可能性があります。ただし、高血圧を必要以上に恐れる必要はありません。早期に発見し、適切な治療を行うことが大切です。高血圧の診断・治療は主に内科で行われ、生活習慣の改善や服薬治療などがあります。
編集部
高血圧の原因は何がありますか?
三木さん
高血圧の原因は、大きく分けて二つあります。一つは、特定の病気や薬などが原因となる高血圧です。もう一つは、原因が特定できない高血圧です。遺伝的な要素や生活習慣などが影響していて、約90%の高血圧患者さんがこれに該当します。
病院の診療で測定すると血圧が高くなる…なぜ?
編集部
病院の診療で血圧測定をすると、家庭で測定するよりも高い値になることがあります。これはなぜなのでしょうか?
三木さん
病院で測定する時だけ血圧が高い状態を、「白衣高血圧」と呼びます。白衣高血圧の原因は、病院や医師に対する不安や緊張、自律神経の乱れなどが考えられます。白衣高血圧は一時的な場合もありますが、心血管疾患のリスクが高まるという報告もあるため注意しましょう。そのため白衣高血圧の状態が続く場合は、医師の判断に従って治療を受けることも必要です。
編集部
白衣高血圧の判定方法はどのように行われるのでしょうか? 病院での測定だけでは不十分なのでしょうか?
三木さん
白衣高血圧の判定方法は、病院での測定と家庭での測定を比較することです。病院での測定だけでは、本当の血圧が分かりませんので、家庭での測定も必要です。自己測定の平均値と病院での測定値との差がある場合に、白衣高血圧と診断されます。
編集部
白衣高血圧は、どのくらいの頻度で起こるのでしょうか? また、どのような人が白衣高血圧になりやすいのでしょうか?
三木さん
白衣高血圧の頻度は、高血圧患者の約15~30%とされています。主に女性や高齢者、病院に慣れていない人などは白衣高血圧になりやすいと言われています。また、血圧が正常の方にも、白衣高血圧は認められます。ですので、性格的に過敏や神経質な人は病院に行く際の緊張感などで血圧が上がりやすいため注意しましょう。ほかには、糖尿病や腎臓病などの合併症がある人は、自律神経のバランスが乱れやすく白衣高血圧のリスクが高まります。
家で血圧を測定するときのポイントは?
編集部
家庭で血圧を測定するときのポイントを教えてください。
三木さん
家庭で血圧を測定する場合、測定位置を心臓の高さに近い上腕部にすることが重要です。上腕式の血圧測定器を使うとより正確な値が得られます。測定時の条件は、朝は起床後1時間以内、排尿後に測定することがおすすめです。夜は就床前に測定すると、一日の血圧の変動を把握できます。測定するときは、座った姿勢で1~2分間安静にした後に測定しましょう。
編集部
家庭での血圧測定の頻度は、どのくらいが適切なのでしょうか? 測りすぎると逆効果になることはありますか?
三木さん
家庭での血圧測定の頻度は、一般的には朝と晩の1日2回が適切とされています。それぞれ2回ずつ測定して平均値をとることがおすすめです。血圧が高い方や高血圧の治療を受けている方は、毎日測定することが望ましいといわれています。逆に、血圧が低めの方や血圧が安定している方は、毎日測定する必要はないかもしれません。血圧測定は測りすぎると逆効果になることはありませんが、測定結果に一喜一憂するのではなく長期的な傾向を見ることが重要です。
編集部
家庭での血圧測定には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
三木さん
家庭での血圧測定のメリットは、日常生活における血圧の変動や傾向を把握できることや、自分の血圧に対する意識や責任感が高まることです。家庭での測定は、高血圧の予防や管理に役立ちます。家庭での血圧測定の結果は、病院での診療に活用できます。医師にとっても、病院での測定値だけではなく、家庭での測定値を参考にすることで、より正確な診断や治療方針を立てられるからです。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
三木さん
高血圧は、自覚症状がなく気づきにくいものですが、放置しておくと重大な合併症を引き起こす可能性があります。家庭での血圧測定は、高血圧の早期発見や予防にとても有効です。しかし、家庭での血圧測定だけでは、高血圧の診断や治療はできません。必ず、医師の指示に従って、定期的に受診してください。高血圧は、自分の努力で改善できる病気です。健康な生活を送ることで、高血圧から身を守りましょう。
編集部まとめ
血圧は、病院で測定すると家で測ったときよりも血圧が高くなることがあります。これは、白衣高血圧と呼ばれる現象で、病院や医師に対する不安や緊張、自律神経の乱れなどが原因となります。白衣高血圧は一時的な場合もありますが、心血管疾患のリスクが高まるという報告もあるため、医師の判断に従って治療を受けるようにしましょう。