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「フレイル」と「骨粗しょう症」の関係とは フレイル予防が骨粗しょう症リスクを下げる?

 公開日:2023/11/18
「フレイル」と「骨粗しょう症」の関係とは フレイル予防が骨粗しょう症リスクを下げる?

骨粗しょう症は「高齢者の病気」という印象をお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし、実は骨粗しょう症は若年期からの予防が重要といわれているようです。さらに骨粗しょう症の予防は身体的な虚弱状態「フレイル」の予防にも関係しているようです。そこで今回は、骨粗しょう症とフレイルの関係性と予防行動に関して、鹿児島大学助教で理学療法士の白土大成先生に詳しく解説していただきました。

白土 大成さん

著者
白土 大成(鹿児島大学医学部保健学科理学療法学 助教)

プロフィールをもっと見る
2018年九州栄養福祉大学理学療法学科卒業、2022年鹿児島大学大学院保健学研究科博士前期課程修了。JCHO熊本総合病院を経て、2023年より鹿児島大学医学部保健学科助教。IFPOHE(世界産業保健理学療法士連盟)執行委員、日本産業理学療法研究会国際委員・評議員など。取得資格は、認定理学療法士(健康増進・参加)、腎臓リハビリテーション指導士、フレイル対策推進マネジャーなど。
牧迫 飛雄馬さん

共著者
牧迫 飛雄馬(理学療法士)

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2001年国際医療福祉大学理学療法学科卒業、2009年早稲田大学スポーツ科学学術院博士後期課程修了。国際医療福祉大学病院、リハビリ推進センター株式会社、札幌医科大学特任助教、日本学術振興会特別研究員(PD)、ブリティッシュコロンビア大学(Research Fellow)、国立長寿医療研究センター予防老年学研究部健康増進室長を経て、2017年より現職。日本老年療法学会副理事長、日本転倒予防学会理事など。

骨粗しょう症について知る

骨粗しょう症について知る

編集部編集部

骨粗しょう症とはどのような疾患なのでしょうか?

白土 大成さん白土さん

世界保健機関(WHO)では、「骨粗しょう症は、低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし、骨の脆弱性が増大し、骨折の危険性が増大する疾患である」と定義されています。つまり、骨の量(骨密度)と質が低下している状態です。また、米国国立衛生研究所(NIH)では、「骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されており、これらをまとめると骨粗しょう症は、骨の量(密度)と質が低下して骨折のリスクが増大した状態・疾患であるといえます。

編集部編集部

骨密度とサルコペニアの関係について教えてください。

白土 大成さん白土さん

40歳以上の日本在住の市民における骨粗しょう症の有病率は、男性で3.4%、女性で19.2%といわれています。また、わが国における65歳以上のサルコペニア有病率は、男性で11.5%、女性で16.7%といわれており、どちらも加齢に伴い増加することが指摘されています。高齢化社会の進展に伴い、両者を併存している(オステオサルコペニア)高齢者が増加していくことが予想されます。骨密度とサルコペニアは、複数の共通の原因(危険因子)が考えられており、多量の飲酒や喫煙、不活動、カルシウムおよびビタミンDの摂取不足などがあります。

編集部編集部

骨粗しょう症とフレイルの関係について教えてください。

白土 大成さん白土さん

フレイルも骨粗しょう症、サルコペニアと同様に、加齢に伴って有病率が増加する特徴を有しています。また、フレイルを有する高齢者は、そうではない高齢者と比べて、骨粗しょう症を併存している割合も高いことから、両者はそれぞれに関連しあっている可能性があります。つまり、骨粗しょう症があるとフレイルになりやすく、フレイルがあると骨粗しょう症になりやすいという関係があります。しかしながら、直接的な因果関係については、まだ不明な状況です。

骨粗しょう症リスクを軽減する方法とは

骨粗しょう症リスクを軽減する方法とは

編集部編集部

フレイルを予防することで、骨粗しょう症リスクにはどのような影響を与えますか?

白土 大成さん白土さん

フレイルを予防することは、骨粗しょう症のリスクに対しても良い影響を与える可能性があります。フレイルの予防対策の中心となる、筋力および身体機能の維持向上を目的とした適切な運動・食事は、骨量の維持においても重要といえます。

編集部編集部

運動が、骨粗しょう症リスクに与える影響について詳しく教えてください。

白土 大成さん白土さん

運動は、骨粗しょう症の発症リスクを低下させる要因の1つです。適切な運動は骨の健康を維持し、骨密度の低下を予防するために役立ちます。運動により、骨量の減少が抑制されることは複数の研究から明らかにされています。また、骨量の減少のみならず、転倒のリスクや万が一転倒した場合の骨折の危険性も低下することが報告されています。

編集部編集部

骨粗しょう症を予防するためには、ほかにどのような方法がありますか?

白土 大成さん白土さん

骨粗しょう症の発症予防のためには、若年期(15歳から34歳)のうちに、できる限り骨量を多くすることが重要とされています。また、女性では閉経後に必ず発生する骨密度の低下を抑制することも重要です。骨量は、思春期から徐々に増加し、20代で最大値に達し、40代前半まで維持されます。この時期に、骨量に対する栄養素や身体活動が有効です。具体的には、カルシウムの摂取と荷重的な運動(水中<陸上、自重<重錘負荷)の実施が有効です。また、喫煙や過度な飲酒をおこなわないことも有効とされています。

日常生活の注意点を解説

日常生活の注意点を解説

編集部編集部

一度骨粗しょう症と診断されると、良くなることはないのでしょうか?

白土 大成さん白土さん

骨粗しょう症は、早期の発見・治療が重要です。病態が進行してしまうと、完全に治癒することは難しくなります。しかし、適切な治療や管理を通じて骨の健康をサポートし、進行を遅らせたり合併症を予防したりすることは可能です。骨量への対策に加えて特に重要なことは、転倒などを予防し、実際に骨折を引き起こさないようにすることです。

編集部編集部

骨粗しょう症の人が運動をしようと考えた場合に注意すべき点はありますか?

白土 大成さん白土さん

骨粗しょう症の人が運動をおこなう際には、いくつかの注意点を考慮することが重要です。まず、運動を始める前に、必ずかかりつけ医に実施の可否や負荷について相談してください。個々人の状態や健康リスクを考慮して、適切な運動プランを相談しましょう。また、実際におこなう場合も低負荷の運動や軽度のレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)から開始するなど負荷に留意してください。そして、もし運動中に痛みや不快感がある場合はすぐに中止し、かかりつけ医に相談してください。

編集部編集部

その他、フレイル、骨粗しょう症を予防したい場合に、日常生活で意識すべき点やアドバイスはありますか?

白土 大成さん白土さん

フレイルと骨粗しょう症の両方を予防するために、日常生活では荷重を意識した運動がおすすめです。ウォーキングなどの自重に加えて、重錘やマシンを用いた筋力トレーニングなどが挙げられます。また、すき間時間で片足立ちをおこなったり、階段を積極的に活用したりすることもおすすめです。食事では、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを含む食事を摂取することを意識してください。具体的には、魚介類、大豆製品、乳製品、野菜、海藻類、きのこなどが挙げられます。フレイルも骨粗しょう症も早期の発見が重要です。定期的な健康チェックや健康診断を受け、早期に健康リスクを把握しましょう。必要に応じて医師の指導を受けることが重要です。

編集部まとめ

骨粗しょう症とフレイルは直接的な関係は明らかにされていないものの、それぞれの予防行動は互いに良い影響を与える可能性があるとのことでした。若年期からの予防が重要であり、普段の生活でも運動を取り入れる必要があると教えていただきました。一方で、すでに骨粗しょう症の方は主治医や専門家に相談のもと運動を開始することが推奨されるようです。

この記事の監修理学療法士