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激しい運動や食事制限で月経周期が不安定に…どうすればいい? 【婦人科医師に聞く】

 公開日:2023/10/19

月経が始まると、体はホルモンバランスの影響を強く受けるようになります。特に激しい運動や食事制限をする女性の場合、月経に異常が見られることも。それでは、そのような異常を起こさないために、一体どうしたら良いのでしょうか。吉丸女性ヘルスケアクリニックの吉丸先生にお聞きしました。

吉丸真澄

監修医師
吉丸 真澄(吉丸女性ヘルスケアクリニック 院長)

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金沢大学医学類卒業。独立行政法人国立病院機構東京医療センター、東京歯科大学市川総合病院を経た2020年、千葉県市川市に「吉丸女性ヘルスケアクリニック」を開院。婦人科疾患の治療だけではなく、生活習慣病を含めた様々な病気の予防にも力を入れ、地域の健康をサポートしている。日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本抗加齢医学会認定抗加齢専門医、日本医師会認定健康スポーツ医。

厳しい食事制限が、月経異常の原因に

厳しい食事制限が、月経異常の原因に

編集部編集部

なぜ、スポーツをすると月経周期が不安定になるのでしょうか?

吉丸真澄吉丸先生

人間は食事などから得る摂取エネルギーと消費のバランスで、活動しています。しかし、摂取エネルギーの不足した状態が続くと、ホルモン分泌量が低下し、体のさまざまな機能に影響を及ぼします。そのひとつが、月経周期が不安定になるということ。つまり、摂取エネルギーの不足がそうした異常を引き起こしているのです。

編集部編集部

なぜ、スポーツをする女性に月経異常が多く見られるのですか?

吉丸真澄吉丸先生

一般的にスポーツをしている人は、していない人に比べて体重が低い傾向にあり、厳しく食事制限をしている場合が少なくありません。また精神的に緊張状態が続くこともあって、月経トラブルが起きやすいとされています。

編集部編集部

具体的にどのような状態を「月経周期異常」と呼ぶのでしょうか?

吉丸真澄吉丸先生

一般的に、月経の正常周期は、だいたい25~38日のサイクルです。ところが、39日以上も間があく稀発月経や、24日以内で月経がきてしまう頻発月経などが起こることもあります。これらを「月経周期異常」と呼びます。

編集部編集部

スポーツが月経に与える影響としては、周期異常のほか、どのようなものが見られますか?

吉丸真澄吉丸先生

ほかによく見られるのは「無月経」ですね。これは月経が来なくなることをいいます。また、それまで定期的にあった月経が3か月以上なくなった状態を「続発性無月経」といい、そのうち体重減少が原因と考えられるものを「体重減少性無月経」といいます。

編集部編集部

こうした症状はトップアスリートだけでなく、部活動などを頑張る一般の女の子にも見られるのでしょうか?

吉丸真澄吉丸先生

思春期の女の子たちは、体も心も不安定なことが多く、バランスを崩しやすくなっています。トップアスリートだけでなく、部活動や体育の授業を頑張る一般の女の子たちにも、こうした異常が見られることが少なくありません。

将来的に「不妊」「骨折」「寝たきり」のリスクが高まることも

将来的に「不妊」「骨折」「寝たきり」のリスクが高まることも

編集部編集部

スポーツによる月経周期異常を放置すると、どうなるのでしょうか?

吉丸真澄吉丸先生

運動量に見合った食事が摂取できていない「利用可能エネルギー不足」の状態が続くと、脳からのホルモン分泌が低下し、無月経となります。さらに、無月経に伴う低エストロゲン状態が続くと、若い女性でも骨量低下につながり、疲労骨折のリスクにつながります。

編集部編集部

若い女性が骨量低下の状態になると、将来的にも大きな影響がありそうですね。

吉丸真澄吉丸先生

一生のうちの骨密度は20歳前後がピーク。その後はしばらく横ばいで経過し、閉経ごろからどんどん減少していきます。だから、この時期に骨密度が獲得できないと、高齢になったとき骨折の危険性が高まってしまいます。

編集部編集部

なるほど。若い時期に骨密度を増やしておくことが大事なのですね。

吉丸真澄吉丸先生

あとは無月経が続いている状態では、排卵がうまくおこなえていない可能性もあり、妊娠しづらい、不妊治療が必要な方もいらっしゃいます。

編集部編集部

ちなみに、こうした「利用可能エネルギー不足」は女性だけの問題でしょうか?

吉丸真澄吉丸先生

近年、国際オリンピック委員会では、男女問わずすべてのアスリートにとって摂取エネルギー不足は、発達、精神面、循環器、免疫、代謝、骨等全身に悪影響を与え、パフォーマンス低下につながると、警鐘を鳴らしています。そう考えると、男性も気をつけるべきといえるでしょうね。

本人の自覚を促すとともに、親やコーチなど周囲のサポートも大切

本人の自覚を促すとともに、親やコーチなど周囲のサポートも大切

編集部編集部

月経周期が不安定になっている場合、どのように対処したら良いのでしょうか?

吉丸真澄吉丸先生

まず、必要な栄養がとれるよう食事内容を見直すなど、規則正しい生活を維持すること。特にコーチなど指導者と家庭が連携し、十分エネルギーが取れる食事を提供する必要があります。軽度の月経周期異常であれば、家庭での食事を整えるだけで改善することもありますが、中等度以上の場合は、早めに医師の診察を受けましょう。

編集部編集部

どのような状態になったら、病院を受診すれば良いのでしょうか?

吉丸真澄吉丸先生

婦人科の受診が勧められるケースとしては、①3か月以上、月経が止まっている、②15歳になっても初経が来ていない、という2つが挙げられます。これらに当てはまる場合は、できるだけ早めに婦人科を受診した方が良いでしょう。

編集部編集部

病院ではどのような治療がおこなわれるのですか?

吉丸真澄吉丸先生

まずは腰椎、大腿骨で骨密度の測定をおこない、骨量が適切に獲得できているか検査することが必要です。それから、毎日の食事を見直すことも必要です。病院やクリニックによっては管理栄養士による栄養指導もおこなっていますから、栄養のバランスが偏っていないか、栄養指導を受けると良いでしょう。

編集部編集部

先生のクリニックのように、「アスリート外来」を設けているところもあるのですね。

吉丸真澄吉丸先生

近年では、こうした問題に対処するため、婦人科のクリニックで「アスリート外来」を設置しているところも増えています。女性アスリート特有の健康問題に対し、障害予防やコンディショニングの点から診療をおこなっているので、困ったことがあったら気軽に訪ねてみると良いと思います。

編集部編集部

アスリート外来では、月経周期異常のほか、どのようなことを相談できるのですか?

吉丸真澄吉丸先生

たとえば「試合と月経が重なってしまい、実力が発揮できないかもしれない」と心配な場合は、薬で月経をずらすことも可能です。また、普段から月経痛がひどい場合は、ピルなどで適切に治療しておくことで、練習に集中できる環境を作ることができます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージがあれば。

吉丸真澄吉丸先生

アスリートは、運動のパフォーマンスだけではなく、健康管理も意識することが大切です。特に10代女子の場合、なかなか周りに相談するのが恥ずかしかったり、相談できる環境がなかったりすることもあります。そういう場合は、周囲の大人がサポートしてあげる必要があります。常に相談しやすい環境を整えてあげたり、食事内容を把握してあげたり、周囲の大人も正しい知識を持って支えてあげてください。

編集部まとめ

つい、運動の成績ばかりに目がいきがちですが、将来のことを考えれば、月経異常は決して無視できない大事な問題です。婦人科を受診すれば、ピルの処方や栄養指導、骨量チェックなど、さまざまな面からサポートしてもらえます。10代の女子にとって、婦人科は縁遠い存在かもしれませんが、困ったことがあれば、ぜひ、早めに相談を。心身の健康にとって、大きな助けとなるはずです。

医院情報

吉丸女性ヘルスケアクリニック

吉丸女性ヘルスケアクリニック
所在地 〒272-0023 千葉県市川市南八幡4-7-12 ラ・パシフィックビルB-B1
アクセス JR総武線「本八幡駅」南口から徒歩2分
診療科目 婦人科

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