顔面が痛い…「三叉神経痛」の初期症状を医師が解説 顔や歯ぐきが痛くなるなどの症状や治療・手術まで
「顔面が痛い」と感じても、なんとなく緊急性が低くて我慢してしまうイメージがありますが、実は脳神経が原因である場合も多いようです。今回は顔面の痛みの中でも「三叉神経痛」の症状や原因、治療方法について、脳神経外科医の田辺 英紀先生(町田脳神経外科/梅田脳脊髄神経クリニック理事長)に伺いました。
監修医師:
田辺 英紀(町田脳神経外科)
目次 -INDEX-
顔や歯ぐきなどが痛いのは三叉神経痛(さんさしんけいつう)かも 気をつけたい初期症状を医師が解説 病院は何科を受診すべき?
編集部
三叉神経痛(さんさしんけいつう)について教えてください。
田辺先生
「三叉神経」は、顔面の感覚を司る脳神経の一つです。この三叉神経が頭の中でなんらかの原因で血管が接触・圧迫してしまうことがあり、その結果「三叉神経痛」を引き起こします。血管が原因の場合がほとんどですが、ときに脳腫瘍が原因である場合もあります。
編集部
どんな症状があるのですか?
田辺先生
片側のおでこ、目の周囲、ほほ、歯ぐきの痛み、あご、耳に放散する痛みなどが症状として現れます。ほとんどの場合、ある日突然激烈な顔面痛が起こり、食事を食べられない、水を飲めない、会話が苦痛といった状態になります。あるいは「歯が痛い」と勘違いして、歯科医院に行ってしまう方も多いようです。
編集部
三叉神経痛の前兆や初期症状などはありますか?
田辺先生
重い痛みなど違和感のような前兆のある場合もありますが、突然電撃のような痛みで始まることが多く、顔を洗う、冷たい空気に触れる、歯を磨く、食事をする、などがトリガーになることが多いと言われています。
編集部
顔面の痛みや違和感に気がついたら、何科を受診したら良いのですか?
田辺先生
一番良いのは、顔面痙攣や三叉神経痛の専門ドクターがいる医療機関です。顔面の痛みと言っても、目の痛みは眼科、鼻や耳周囲が原因であれば耳鼻科、歯ぐきが原因であれば歯科、皮膚だと皮膚科が専門ではあるのですが、ご自身で原因を特定することは難しく、リスクも伴います。なので、まずは顔面専門の医師に診てもらうのが安心だと思います。実際に、歯科や眼科を受診したことで三叉神経痛と診断がつくまでに時間を要してしまったケースも少なくありません。
三叉神経痛の原因を医師が解説 治療は薬物療法・手術? 放置しても自然治癒の可能性はある?
編集部
三叉神経痛の原因はなんですか?
田辺先生
繰り返しになりますが、メカニズムとしては、頭蓋内で三叉神経に血管や腫瘍が接触・圧迫してしまうことです。血管が接触してしまうのは、加齢が関係していると言われています。加齢により動脈硬化などが進行し、三叉神経を圧迫してしまうのです。
編集部
では、三叉神経痛の治療について教えてください。
田辺先生
ほとんどの場合、通常の鎮痛剤だと効果がないのですが、抗てんかん薬の一部がよく効きます。しかし、てんかんの薬は副作用や肝機能障害、アレルギーなどの関係で時に飲めない人もあり、また内服の量が徐々に増えていくと副作用のリスクがより増すことになります。ほかには、放射線やブロック治療もありますが、神経にダメージを与えて痛みをとるという対症療法で、根本的な治療ではありません。根治のためには手術療法が選択されます。
編集部
どんな手術が行われるのですか?
田辺先生
三叉神経と接触している血管を、神経から離す手術です。手術は全身麻酔で、耳の後ろの皮膚を約5cm切り、骨に500円玉ほどの穴を開けます。顕微鏡で確認しながら神経と血管を見つけ、血管を神経から離して固定します。原因そのものを解消するので、根治が得られます。
編集部
三叉神経痛を放置しておくとどうなるのですか?
田辺先生
三叉神経痛自体は、放置しても命にかかわるものではありませんし、薬がよく効きます。しかし、痛みに耐えきれず、自殺してしまう方も昔はいたそうです。自然に治まる方もいらっしゃいますが、長くなると自然に治ることは極めてまれですし、脳腫瘍がある可能性もありますので、まず一度は脳神経外科で確認していただきたいですね。
三叉神経痛の疑問に医師が回答 「なりやすい人とは?」「合併症の可能性は?」「痛みを和らげるためにおすすめの食べ物・NGの食べ物」
編集部
三叉神経痛を多く発症する世代というのはありますか?
田辺先生
三叉神経痛は女性に多く、特に40~50代の女性の発症率が高いという統計があります。
編集部
では、三叉神経痛の合併症はありますか?
田辺先生
三叉神経痛自体の合併症はありませんが、合併症というより、激痛で生活そのものに影響が出ます。さらに、痛みがいつくるかもわからないため、痛みのない時も発作におびえて暮らさなければならなくなります。
編集部
痛みを和らげるためにおすすめの食べ物やNGの食べ物などがありましたら教えてください。
田辺先生
食べ物、というのはありませんが、食事のときに痛みが誘発されることが非常に多いので、健側(痛みが出ない側)に食べ物を送り込み、ゆっくりやさしく噛むように、患者さんには指導しています。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
田辺先生
三叉神経痛は本人しかわからないような激痛で、一度三叉神経痛になるといつくるかわからないその痛みの恐怖に悩まされます。手術をすることで原因そのものを解消できますので、1人で悩まずにまずは医療機関に相談してください。三叉神経は複雑な場所にある脳神経です。すべての脳神経外科が、三叉神経痛の治療に深く携わっているというわけではありませんので受診先を選ぶ際には、「日本脳神経減圧術学会」に所属している医師のいる脳神経外科医を調べ、エキスパートに相談するのが一番安心で確実です。
編集部まとめ
「三叉神経痛」について、第26回日本脳神経減圧術学会学会長でもある田辺先生にお話を伺いました。症状が出るのは主に顔ですが、あくまでも「脳神経」の問題であることや、根治するには手術しかないことなど、大変勉強になりました。思い当たる症状のある方は、歯科や眼科などではなく、一度「日本脳神経減圧術学会」に所属している医師のいる脳神経外科に相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報
所在地 | 〒194-0034 東京都町田市根岸町1009-4 |
アクセス | JR横浜線「淵野辺駅」より徒歩20分 |
診療科目 | 脳神経外科 |