【医師解説】胃がん・食道がん検査 バリウムと内視鏡どちらがいい? 違いや何歳から受けるべきかも説明
バリウム検査か内視鏡検査のどちらを受けようか、迷う人も多いと思います。そこで、バリウム検査と内視鏡検査それぞれの特徴や違いなどについて、青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニックの金沢先生に教えてもらいました。
監修医師:
金沢 憲由(青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック)
目次 -INDEX-
健康診断や消化器内科のバリウム検査(胃透視検査)と内視鏡検査(胃カメラ)の違いを医師が解説 メリット・デメリットは?
編集部
バリウム検査とはどのような検査ですか?
金沢先生
発泡剤を飲んで胃を膨らませてからバリウム(造影剤)を飲み、レントゲン撮影を行う検査です。正式には、上部消化管造影検査と言います。検査時間は約10分ほどになります。食道・胃・十二指腸のがんを発見するほか、胃潰瘍、胃炎、ポリープなどを見つけることもできます。
編集部
内視鏡検査とはどのような検査ですか?
金沢先生
口または鼻から内視鏡を挿入して食道、胃、十二指腸を観察する検査です。内視鏡とは先端に小型カメラ(CCD)を内蔵した、直径1cmくらいの細長いスコープのこと。これを体内に挿入することで、直接食道や胃などを観察することができます。検査時間は約5分です。
編集部
それぞれのメリットはなんですか?
金沢先生
まずバリウム検査のメリットは、内視鏡検査を入れたときのような異物感を感じることがないということが挙げられます。一方、内視鏡検査は、食道や胃などの内壁を細かく直接的に観察できるため、小さな腫瘍でも発見できるというメリットがあります。
編集部
反対にデメリットはなんですか?
金沢先生
バリウム検査のデメリットとしては、バリウムを飲むのが苦しかったり、発泡剤を飲んだ後にゲップを我慢するのが辛かったりすることがあります。またバリウムが腸に残って便秘の原因になったり、炎症を起こしたりすることがあります。
編集部
内視鏡検査のデメリットは?
金沢先生
内視鏡検査のデメリットは、なんといっても内視鏡がのどを通るときに嘔吐反射が起きることでしょう。ただし現在では鎮静剤を使える医療機関が多くなっているため、こうしたデメリットを感じることが少なくなりつつあります。
消化器系の検診で胃がんや食道がんを早期発見するにはバリウム検査と内視鏡検査どっちがいい? 検査の精度に違いはある?
編集部
胃がんや食道がんを早期発見するにはどちらが良いのでしょうか?
金沢先生
がんを早期発見するには、内視鏡検査の方がより適しています。なぜなら、内視鏡検査は直接小型カメラで胃などの内部を観察することができるため、色の変化だけで腫瘍を見分けたり、わずかな粘膜の隆起や凹みなどにいち早く気づいたりすることができるからです。バリウム検査では、色まで見分けることができません。
編集部
バリウム検査では、初期がんを見つけるのは難しいのですか?
金沢先生
バリウム検査は立体の人体を白黒の平面画像で映し出すため、粘膜にはっきりした凹凸ができていれば陰影で見分けることが可能です。しかし、初期のがんはそのような凹凸がなく、わずかな色の変化やかすかな隆起などで見つけるしかありません。そのためバリウム検査では初期のがんを見つけるのが難しいのです。
編集部
なるほど。バリウム検査での早期発見は難しいのですね。
金沢先生
また、バリウム検査は検査技師による技量の差が出やすく、読影も内視鏡検査より難易度が高くなります。
編集部
では、初期がんを見つけるには内視鏡検査の方が適しているのですね。
金沢先生
はい、そうです。それからバリウム検査でがんが疑われたら、そのあとで内視鏡検査を行う必要があります。しかし、はじめから内視鏡検査をした場合には、その場で組織の一部を採取して、がんかどうか病理診断に出すことができます。つまり一度の検査で、診断までつけることが可能なのです。
編集部
バリウム検査を受けた方がいい場合はありますか?
金沢先生
胃がんの種類によっては、内視鏡検査よりもバリウム検査の方が適している場合もあります。たとえばスキルス性胃がんは明らかな潰瘍や盛り上がりなどがなく、胃の壁が全体的に厚くなり、硬くなります。このような場合には、胃の様子を全体的に捉えることができるバリウム検査の方が適しているということもあります。
消化器のがんを早期発見するには何歳から検査を受けるべき? 健康診断が内視鏡検査ではなくバリウム検査の場合どうすべき?
編集部
消化器のがんを早期発見するには何歳から検査を受ければ良いでしょうか?
金沢先生
一般には、40歳以上になったら胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けることが勧められています。なぜなら、40歳ごろからがんを発症する人が増えるからです。特に消化器のがんは、初期ではほとんど症状を感じないため、定期的に検査を受けて早期発見に努めることを推奨します。
編集部
毎年受けた方が良いのですか?
金沢先生
検査を受ける頻度は、ピロリ菌の有無も考慮する必要があります。ピロリ菌が見つかった方や過去に除菌した方は、毎年検査を受けることをお勧めします。ピロリ菌がみつからなかった方で、特に自覚症状がなければ、2〜3年に1回受ける程度で良いでしょう。
編集部
会社の健康診断が内視鏡検査ではなくバリウム検査という場合はどうしたらいいですか?
金沢先生
その場合には会社の健康診断でバリウム検査を受けましょう。バリウム検査も非常に優れた検査ですから、安心して受けてください。もしバリウム検査で胃炎を指摘されたら、内視鏡検査も受けましょう。その場合の検査は、保険適用になります。
編集部
内視鏡検査はどこで受けられますか?
金沢先生
消化器内科や胃腸内科、内視鏡クリニックなどを標榜している医療機関で受けられます。保険が適用になる場合は、1割負担なら2000円前後、3割負担なら6000円前後で受けられます。また、内視鏡検査で慢性胃炎が確認された場合、同時にピロリ菌の有無を調べることもできます。費用の合計は1割負担なら2500円前後、3割負担なら7500円前後です。ピロリ菌は胃がん発症のリスクを高めるので、気になる場合にはピロリ検査を受けても良いでしょう。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
金沢先生
内視鏡検査というとどうしても「辛い」「苦しい」「おえっとなる」というイメージが先行して、避けがちな方も多いと思います。しかし最近は鎮静剤を使える医療機関も増えており、鎮静剤を使用すれば苦痛を最小限にすることが可能です。特にピロリ菌が見つかった方、もしくは胃炎を指摘されている方は胃がんのリスクがあるので定期的に内視鏡検査を受けましょう。万が一、胃がんがあったとしても定期的に内視鏡検査を受けていれば早期発見することができます。ぜひ、内視鏡検査を習慣化してください。
編集部まとめ
早期がんの発見には内視鏡検査が適しています。「以前受けた時にとても苦しかったからもう受けたくない」と思う人もいるかもしれませんが、鎮静剤を使用すれば辛さを大幅に軽減できます。不安に感じることがあれば、ぜひ医師に相談してみてください。
医院情報
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診療科目 | 消化器内科、肝臓内科、内科 |