「てんかん」になりやすい人に特徴はある? てんかん専門医が解説 年齢・性別問わず発症の可能性も?
意識障害やけいれんなどの発作を起こすてんかん。決して珍しい病気ではなく、誰もが発症するリスクを持っています。一体、てんかんになりやすい人の特徴はあるのでしょうか? てんかんの概要や原因などについて、スガノ脳神経外科クリニックの菅野先生にMedical DOC編集部が話を聞きました。
監修医師:
菅野 秀宣(スガノ脳神経外科クリニック)
目次 -INDEX-
てんかんとは脳のどんな病気? てんかんの発作が起きるのはなぜ? 発症の原因を解説
編集部
てんかんとはどのような病気ですか?
菅野先生
脳の神経細胞が過度に興奮し、意識障害やけいれんなどの発作を起こす病気の総称を「てんかん」と言います。
編集部
てんかんは脳の病気なのですか?
菅野先生
はい。世界保健機関(WHO)は、てんかんとは「脳の慢性疾患であり、脳の神経細胞(ニューロン)に突然激しい電気信号が発生することで何度も発作を繰り返し、そこにさまざまな臨床症状や検査での異常が伴うもの」と定義しています。
編集部
どのような発作を起こすのですか?
菅野先生
新生児から幼児ではピクッとした動きを繰り返す、学童期から若年成人期ではけいれんする、ピクッと一瞬動く、特に成人期から高齢者では一点を凝視する、手や口をもぞもぞと動かす、記憶が抜けているなど、年齢によってさまざまな症状を示すことがあります。
編集部
さまざまな発作があるのですね。
菅野先生
なかには本人もてんかんとは自覚していない発作もあります。たとえば、手に持っていたスマホを落としたり、茶碗を落としたりすることがありますが、それらはミオクロニー発作が原因かもしれません。ミオクロニー発作とは、からだの一部がピクッと動く発作のこと。思春期に多く発症することから若年ミオクロニーてんかんとも呼ばれます。
編集部
なぜ、そのような発作が起きるのですか?
菅野先生
原因はさまざまありますが、てんかんを発症する年齢によって分けて考えることができます。乳児期にてんかんが発症する場合は、出生時の低酸素症や脳の奇形などが原因。幼児期から学童期に発症する場合は遺伝子の異常が多くの原因と考えられています。成人に発症する場合は、脳炎や脳出血、脳梗塞などによる脳の変性が多くの原因です。
てんかんになりやすい人の特徴は? 症状・発作の前兆や誘発原因はある? セルフチェックは可能?
編集部
てんかんは遺伝するのですか?
菅野先生
遺伝子変異は次々と発見されていますが、基本的にてんかんは親子で遺伝する疾患ではありません。しかし、発作を起こしやすいという特徴は遺伝してしまうことがあります。たとえて言うと、背の高い親から背の高い子どもが生まれやすい、というような感じです。
編集部
てんかんになりやすい人の傾向はあるのですか?
菅野先生
赤ちゃんから高齢者まで様々な原因で発症し、人口100人のうち0.5〜1人の割合で発症するとされています。誰でもてんかんを発症する可能性はあり、特にてんかんになりやすい人の傾向というのはありません。
編集部
誰でも等しく発症しうるということでしょうか?
菅野先生
はい、そういうことです。たとえば発達に異常がある人は、そのほかのグループと比較するとてんかんを発症することが多いのですが、その因果関係は明らかになっていません。
編集部
てんかんの発作が起きるときには前兆があるのですか?
菅野先生
てんかんで言う前兆とは、すでに発作が起こり出している状態のこと。てんかんには脳の全体が興奮する全般性てんかんと、脳の一部が興奮する焦点性てんかんがありますが、特に焦点性てんかんの場合、発作の起こり始めがわかれば脳のどこに異常があるかを推測することができます。そのため、発作の起こり始めを理解することは非常に重要です。
編集部
どのようにして原因を推測するのですか?
菅野先生
たとえば、はじめに右手がしびれ、そのあとにピクつきが始まり、やがて意識を失ったという場合には、右半身を支配するのは左脳であるため、左脳にある感覚野が原因ではないかと推測できます。
編集部
てんかんかどうか、セルフチェックは可能ですか?
菅野先生
意識を失うまでに手がしびれる、ピクつくなどの症状があれば、てんかんを疑う材料になるのでしょう。しかし、すぐに意識を失ってしまう場合には自分でチェックすることは難しいため、家族や身の回りの人にスマートフォンで動画を撮影してもらうのが診断をするときの助けになります。最近では、てんかんの発作を記録するアプリが開発されており、発作が起きると自動で動画を撮影してくれるものもありますから、てんかんが疑われる場合はそうしたサービスを利用してみるのも良いでしょう。
痙攣などの発作が起きててんかんを発症したらどうすればいい? 発作時の対応と周囲の介助
編集部
てんかんの発作を起こしたら、一体どうしたら良いのでしょうか?
菅野先生
てんかん発作にはいろいろなものがあります。けいれんや意識障害が起きたときは、自分では対処することができませんから、周囲の人の介助が必要です。一方、体の一部がひきつる、ピクッとする、急に体の力が抜けるなどの発作が起きたときには、あとで発作の状態を記録しておくと、その後の治療に役立ちます。
編集部
周囲の人はどう介助すれば良いのでしょうか?
菅野先生
まずは落ち着いて行動し、道路や階段など危険な場所にいるときには安全なところへ移動させましょう。体を横にして、周囲の危険物を取り除き、二次的な外傷を防ぎます。
編集部
その後はどうしたら良いでしょうか?
菅野先生
全身にけいれんが起きたとしても、一般的には1分前後でおさまります。もし5分以上発作が長引く場合には救急車を呼びましょう。また発作が一旦収まっても、実は症状がずっと続いていることもあります。30分くらい意識が戻らない場合も、救急車を呼びましょう。発作のあとはゆっくり休ませ、脳に休息を与えることが大切です。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
菅野先生
数年前、てんかんの人が車の運転をしていて事故を起こしたということがニュースになり、注目を集めました。「てんかんの人は車を運転してはいけないのか?」ということをよく尋ねられますが、実際は適切な治療をすれば車を運転することは可能です。そのほか女性であれば出産や育児をすることもできます。ぜひ、てんかんに対して否定的な考えを持たず、積極的に適切な治療をして、充実した日常生活を送ってほしいと思います。
編集部まとめ
現在ではてんかんに対する研究や治療法の開発が進み、薬剤の種類も増えました。また外科治療も進化しており、低侵襲でてんかん治療を行うことも可能になっています。大事なのは適切に診断し、正しい治療を行うこと。てんかんが疑われる場合、または、すでにてんかんと疑われたけれど症状が改善しなくて困っている場合には、ぜひ、経験豊富なてんかん専門医を受診しましょう。
医院情報
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アクセス | 東京メトロ有楽町線「豊洲」駅より徒歩12分 東京臨海高速鉄道りんかい線「東雲」駅より徒歩12分 |
診療科目 | 脳神経外科、小児脳神経外科 |