【薬剤師監修】「風邪薬を飲むと眠くなる」理由を知っていますか? 注意するポイントや薬の選び方について
ドラッグストアの風邪薬コーナーにはたくさんの種類の風邪薬が並んでいますが、何となく選んだ風邪薬を服用後に「強い眠気を感じる」ということはよくあります。そもそも、なぜ風邪薬を飲むと眠くなるのでしょうか? そこで今回は、風邪薬を飲むと眠くなる理由と、症状やライフスタイルに合った風邪薬を選ぶポイントについて薬剤師の大田さんに解説してもらいました。
監修薬剤師:
大田 優実(薬剤師)
風邪薬を飲んで眠くなる理由は? 薬剤師が解説
編集部
どうして風邪薬を飲むと眠くなるんですか?
大田さん
風邪薬、いわゆる総合感冒薬の場合、成分中に含まれる「抗ヒスタミン剤」が原因と考えられます。
編集部
「抗ヒスタミン剤」とはなんですか?
大田さん
「抗ヒスタミン剤」とは、くしゃみ、鼻水、蕁麻疹を抑える効果のあるものです。ヒスタミンは神経伝達物質の1つであり、「ヒスタミンH1受容体」に作用することでアレルギー症状を引き起こします。抗ヒスタミン剤はヒスタミンH1受容体をブロックすることで症状を抑える効果があります。
編集部
その、症状を引き起こさないようにしてくれる「抗ヒスタミン剤」が眠気の原因なんですね。
大田さん
はい、抗ヒスタミン剤の副作用は眠気です。成分として「クロルフェニラミンマレイン酸塩」や「クレマスチンフマル酸塩」などが挙げられます。また、抗ヒスタミン剤は第一世代と第二世代があり、風邪薬に使用される抗ヒスタミン剤は第一世代です。第二世代の抗ヒスタミン剤は花粉症やアレルギーに対して使用されており、眠気は第一世代と比べて出にくいのが特徴です。ただし、即効性は第一世代の方が高いので、花粉症やアレルギーにも第一世代を使用することもあります。
編集部
抗ヒスタミンが入っていない風邪薬であれば眠気は起こらないのですか?
大田さん
抗ヒスタミン剤が入っていない風邪薬でも眠気が出ることはあります。例えば、咳止めの効果がある「ジヒドロコデインリン酸塩」や「コデインリン酸塩」、鎮静性鎮痛薬に分類される「アリルイソプロピルアセチル尿素」や「イソプロピルアンチピリン」が含まれている風邪薬では眠気を感じることがあります。
風邪薬を飲むタイミングや気を付けるべきこと
編集部
風邪薬を飲んだ後にやってはいけないことはありますか?
大田さん
例えば、眠気を起こす成分が含まれている風邪薬を飲んだあと、車の運転は控えるようにしましょう。眠気を特に感じていなくても集中力が落ちていることがあり、事故に繋がる可能性があります。
編集部
妊娠や授乳の時も風邪薬を飲んでもいいですか?
大田さん
必要な場合は飲んでも大丈夫です。ただし、妊娠時期によって薬への感受性が異なってくるため、必ず主治医か薬剤師に相談するようにしましょう。妊娠後期では、解熱鎮痛成分の「ロキソプロフェン」や「イブプロフェン」が動脈管を収縮させ、胎児に影響を与える恐れがあるため禁忌となります。また、授乳している場合は、薬の成分が母乳中へ移行するというデータもあるので注意が必要です。薬の服用期間だけ市販の粉ミルクに代替する、授乳後に薬を飲むようにするなどタイミングをずらす方法もあります。
編集部
片頭痛や生理痛などの時に鎮痛剤を飲んでいるんですが、風邪薬を併用しても大丈夫ですか?
大田さん
総合感冒薬には解熱鎮痛効果のあるアセトアミノフェンやイブプロフェンが含まれていることが多いです。普段から痛み止めを飲んでいる人であれば成分が重複している可能性や過量服用になるおそれがあるため、注意が必要です。その場合も、かかりつけの医師に確認してみましょう。
眠くならない風邪薬はある? 薬の選び方は?
編集部
仕事中、眠くならないようにしたいのですが、眠気が起こらない風邪薬はありますか?
大田さん
漢方薬や、炎症を抑える成分のトラネキサム酸、去痰効果のあるカルボシステイン、気道粘膜を修整するブロムヘキシン、解熱鎮痛成分のアセトアミノフェン、ロキソプロフェン、イブプロフェンなどは眠気を起こしにくい薬です。具体的な市販薬として、漢方であれば風邪の初期症状に効く「葛根湯(かっこんとう)」鼻水に効く「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」咳症状に効く「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」などがあります。解熱鎮痛剤であればロキソニンS、アセトアミノフェンK錠、イブなどがあります。喉の症状であればトラネキサム酸配合のペラックT錠、痰の絡みに効くカルボシステイン、ブロムヘキシンの入ったストナなどがあります。
編集部
風邪薬を選ぶ時のポイントや対策は何ですか?
大田さん
何となく聞いたことのある名前の薬を選ぶのではなく、それぞれの症状に合った成分が入った薬を選ぶのがポイントです。症状が咳であれば、咳止めの成分だけが入っているもの、症状が鼻水であれば抗ヒスタミン剤のみが入っているものを選ぶといったことです。鼻水があるけど、第一世代のように眠気の出やすい抗ヒスタミン剤を服用したくない方であれば、花粉症に使用されている第二世代の抗ヒスタミン剤を選んでください。
編集部
風邪薬は錠剤やカプセルのイメージですが、ほかにもありますか?
大田さん
錠剤、カプセル剤以外にも顆粒やシロップもあります。錠剤やカプセル剤を飲み込むのが苦手な方は顆粒やシロップを選んだほうがいいでしょう。自己判断で錠剤を噛み砕く、カプセル剤のカプセルを外して飲むことはやめてください。薬を作る際、徐放性製剤といって薬がゆっくり溶けていくよう設計された薬もありますので、噛んだり、潰したりすると効果が変わってくる恐れがあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
大田さん
車の運転をする方は、風邪薬による眠気がでないかを確認するようにしてください。症状に合った成分や剤形を選び、正しく使用することで風邪を引いているときの辛い状態が少しでも楽になるといいですね。
編集部まとめ
飲むと眠くなるイメージの強い風邪薬ですが、症状やライフスタイルに合った薬を選ぶことで眠気を軽減できることがわかりましたね。服用中の薬がある方は飲み合わせの確認も必要ですね。また妊娠中は服用できない薬もあるため、服用前は必ず医師か薬剤師に確認するようにしてください。