「マタニティブルー」と「産後うつ」の違いを医師が解説 原因と治療・対処法を徹底比較
産後は不安や忙しさ、睡眠不足などで気分が不安定になる人も多いようです。ほとんどの場合、一定期間が過ぎると落ち着くとされている一方で、なかには治療が必要なケースもあります。今回は、そんな「マタニティブルー」と「産後うつ」の違いや対処法などについて、「Baseクリニック赤坂」の吉岡先生に解説していただきました。
監修医師:
吉岡 鉱平(Baseクリニック赤坂)
目次 -INDEX-
妊娠中~出産後のマタニティブルーの主な原因と症状・マタニティブルーになりやすい女性の特徴と対処法を医師が解説
編集部
まず、マタニティブルーについて教えてください。
吉岡先生
※日本産婦人科医会「女性の健康Q&A:マタニティブルーズについて教えてください」
https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/jyosei200226/
編集部
産後、どのくらいの時期に出やすいのですか?
吉岡先生
マタニティブルーになりやすいのは、産後数日~2週間程度です。他方で、妊娠中の気持ちの落ち込みもマタニティブルーに含めるという見解もあります。
編集部
マタニティブルーの原因はなんですか?
吉岡先生
子育て・出産に対する不安や緊張が、原因として大きいと思います。また、妊娠・出産による急激なホルモンバランスの変化、体重や体型の変化などに伴って症状が表れると考えられています。加えて、睡眠不足、「新生児がいる」という緊張状態なども、知らないうちに心身にストレスを与えているため、マタニティブルーの原因と言われています。
編集部
マタニティブルーになりやすい人の特徴はありますか?
吉岡先生
一概には言えませんが、マタニティブルーになりやすいのは、責任感が強く、1人で全て抱え込んでしまうような真面目な性格の人、ネットや育児書の「育児はこうしましょう」といった情報に過度にとらわれてしまう人などに比較的多いようです。また、妊娠前にPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)があった女性も、マタニティブルーになりやすいと言われています。実際、日本産婦人科医会では「出産後の女性の30~50%がマタニティブルーを経験する」との見解を示しています。マタニティブルーは決して特別な人だけに表れる症状ではありません。
産後うつの原因や症状・対処法を医師が解説 産後うつや周産期うつ・マタニティブルーの違いとは?
編集部
では次に、産後うつについて教えてください。
吉岡先生
産後うつは、「育児うつ」や「産後うつ病」とも呼ばれ、出産後に起こるうつ病のことです。時期としては、出産後2週間~1年程度の間に起こるうつ病を指しますが、一般的には出産後4~12週間以内に発症することが多いとされています。
編集部
産後うつの原因はなんですか?
吉岡先生
産後うつの原因はいくつかありますが、一般的なうつ病の原因とされる「遺伝的素因」や「環境要因」に加え、産後特有の「ホルモンバランスの変化」「睡眠不足」「子育てに対する不安や恐怖心」「家事や育児によるストレス」「先行きの不安」など、複合的な要因が考えられます。
編集部
どのような症状が出るのですか?
吉岡先生
気分が落ち込んだり、不安になったり、赤ちゃんへの興味や関心がなくなったりすることがあります。また、メンタル面だけでなく、疲れやすくなったり、動悸や息切れがしたり、食欲不振や過食、それに伴う体重の減少や増加などの身体的な症状も産後うつの特徴です。
編集部
マタニティブルーと似ていますが、どう違うのでしょうか?
吉岡先生
マタニティブルーは病気ではなく一過性の「不調」で、基本的には一定の期間を過ぎると軽快していきます。しかし一方で、産後うつは治療介入する必要があります。症状は似ていますが、この点が大きく異なりますね。
マタニティブルー・産後うつが気になったら 出産後に気分が落ち込んだときの対処法・治療法
編集部
マタニティブルーと産後うつ、症状が似ているので自分では区別がつかないかもしれませんね。
吉岡先生
そうだと思います。マタニティブルーと産後うつは別のものですが、マタニティブルーが長引く場合、産後うつに移行することもあり、線引きが難しいかもしれません。1つの目安として、「産後10日を過ぎても軽快しない」場合は、産後うつの可能性があります。また、「症状が生活に支障をきたしている」場合は、早期の治療介入が必要になってくるので、産後10日を待たずとも専門家に相談してください。
編集部
マタニティブルーの症状を軽減する、または長引かないようにするための対処法はありますか?
吉岡先生
妊娠・出産・子育ての時期は、とにかく「ご自身で全てを抱え込まない」ようにすることが大切です。そのためには、パートナーやご家族、ご友人などの周囲の人たちに積極的に頼りましょう。もし、何らかの事情で頼れない場合は、地域や行政、必要に応じて医療機関の力も借りつつ、まだある位程度の余力のあるうちから、積極的に周りの助けや支援を求めていくことが肝心です。
編集部
産後の不調は、どこに相談したらいいでしょうか?
吉岡先生
出産した医療機関や助産院などで、助産師や看護師、産婦人科医に相談するのもいいですが、産後はほとんどの場合、1カ月健診までは受診の機会がないと思います。その場合、精神科や心療内科などに相談するのがおすすめです。ご自身でできるケアのアドバイスはもちろんのこと、治療が必要とみなされた場合も、認知行動療法などの心理療法や薬物療法も受けられます。また、「母乳への影響が心配で薬を使いたくない」という人には、保険適用には一定の条件があるものの「TMS(Transcranial Magnetic Stimulation:経頭蓋磁気刺激療法)」という方法でも、症状緩和のお手伝いができると思います。
編集部まとめ
今回は、「マタニティブルー」と「産後うつ」の違いや対処法などについて、解説していただきました。マタニティブルーは「産後の一時的な不調」である一方、産後うつは「うつ病」という病気なので、治療介入が必要な点で違いあるとのことでした。両者の区別は難しいかもしれませんが、「産後10日を過ぎても不調が続いている」、もしくは「(産後10日を過ぎていなくても)生活に支障が出ている」という場合には、放置せずに精神科や心療内科などの医療機関に相談しましょう。
医院情報
所在地 | 〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目10−15 溜池ミツワビル7F |
アクセス | 東京メトロ「溜池山王駅」 徒歩1分 東京メトロ「赤坂駅」 徒歩5分 |
診療科目 | 心療内科、精神科、アレルギー科、麻酔科 |