「膀胱炎はロキソニンで治療できる」は違う? 市販薬の注意点や医療機関の受診について【薬剤師監修】
膀胱炎はとても身近な病気であり、特に女性に多く見られる疾患だと言われます。また、「膀胱炎はロキソニンで治る?」という疑問を持っている人もいるかもしれません。その根底にあるのは何か困ったら「ロキソニンを飲めばいい」「ロキソニンは万能である」と考える人が多くいるのも理由のひとつでしょう。そこで今回は、本当に膀胱炎がロキソニンで治療ができるのかを薬剤師の速水さんに聞きました。
監修薬剤師:
速水愛(薬剤師)
目次 -INDEX-
膀胱炎とはどんな病気? 原因と症状を解説
編集部
膀胱炎について教えてください。
速水さん
まず「膀胱炎」のお話をする前に、膀胱や尿の排泄の仕組みについて説明します。膀胱とは尿を貯めておく場所であり、粘膜と筋肉でできています。膀胱は尿が貯まるにつれ広がる仕組みとなっており、およそ300~500mlの尿を貯めることができます。そして一定量を超えると脳が膀胱へ尿を出すよう指令を出し、尿が体の外へ出て行きます。そして膀胱炎は大きく分けて3種類あり、「単純性(急性)膀胱炎」「複雑性(慢性)膀胱炎」「間質性膀胱炎」に分けられます。
編集部
膀胱炎に種類があるのですね。それぞれの特徴や症状はありますか?
速水さん
まず「単純性(急性)膀胱炎」は、みなさんが思う一般的な「膀胱炎」に該当します。大腸や直腸にいる大腸菌などの菌が尿道に入り込み、膀胱内で増えることで発症します。「複雑性(慢性)膀胱炎」は、何かしらほかの病気があって二次的に炎症が起きます。単純性(急性)膀胱炎と違い、根本の病気治療が先決です。そして「間質性膀胱炎」は、膀胱粘膜の下にある間質や筋肉に炎症が起きている状態です。膀胱の筋肉が萎縮するのですが、原因は不明です。
編集部
膀胱炎の原因について詳しく教えてください。
速水さん
「単純性(急性)膀胱炎」は、大腸や直腸そして肛門付近にある大腸菌が尿道から膀胱に入り込むことで起こります。女性は男性に比べて肛門と尿道までの距離が近いので菌が入りやすく、膀胱炎になりやすいと言えるでしょう。「複雑性(慢性)膀胱炎」は、何かしら基礎疾患が原因で二次的に症状がおこります。具体的には、尿路結石や膀胱がん、前立腺肥大症、糖尿病、先天的な膀胱異常などが挙げられます。この場合は原因菌の感染ではないので、まず元の病気の根治を目指します。「間質性膀胱炎」は原因不明といわれています。症状としては単純性(急性)膀胱炎と近いですが、菌が原因ではないという違いがあります。
編集部
膀胱炎の症状はどのようなものがありますか?
速水さん
単純性(急性)膀胱炎は、腹痛、排尿痛、残尿感、頻尿、尿の白濁、血尿などです。複雑性(慢性)膀胱炎も、排尿痛・頻尿・残尿感が症状として挙げられます。比較的軽度でゆっくり進行して行くパターンが多いですが、症状が急激に悪化する場合もあるので注意が必要です。間質性膀胱炎は、尿が溜まった時だけ痛みが出て、尿を出すと解消するという症状が特徴的です。
「膀胱炎にロキソニン」を服用しても症状緩和はできるが治癒はできない! ほかの市販薬でも完治はできない?
編集部
ロキソニンは膀胱炎に効きますか?
速水さん
ロキソニンは、あくまで膀胱炎のときに起きる排尿痛の症状を和らげるだけで、根本治療にはなりません。膀胱炎かな? と思ったらタイミングをみて、医療機関を受診したほうがいいでしょう。そして、排尿痛が辛いからといってむやみにロキソニンを飲むことは危険です。表面的に状態は良くなったように見えるかもしれませんが、水面下で病気は進行し、気づいたときには時遅かったという事態にもなりかねません。
編集部
膀胱炎は医療機関を受診しないといけないですか?
速水さん
はい、医療機関を受診してほしいポイントは二つあります。ひとつめは、病院で何が原因で膀胱炎になったかを探ることが重要であるためです。症状が軽いうちは何日か様子を見てもいいですが、改善しない場合はなるべく早めに医療機関を受診したほうが良いでしょう。膀胱炎のうち、大半が単純性(急性)膀胱炎の場合が多いですが、菌が確定したらすぐ処方された抗生物質を飲むことが大切です。
編集部
もうひとつのポイントは何でしょうか?
速水さん
ふたつめは、医師から処方された抗生物質をしっかりと飲み切ることです。症状が良くなってきて、もう薬を飲まなくてもいいかな? と思っても、まだ体内に菌が残っている可能性があります。医師から処方された抗生物質は基本的に飲みきるのが原則です。
編集部
市販薬を使う場合、どのようなものを選ぶのが良いですか?
速水さん
膀胱炎の症状がまだ軽いうちなら、市販の漢方で治る可能性はあります。具体的には、腎仙散(じんせんさん)、猪苓湯(ちょれいとう)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが挙げられます。ですが、市販薬には抗生物質はありません。市販薬のほとんどは生薬由来でできたもので、体液の循環を改善する・利尿作用がある成分が含まれている薬が多くなります。この利尿作用により、体の中にある菌を外へ押し出すため、症状が良くなります。また、市販薬を数日間使っても症状が良くならない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
膀胱炎を早く治したい場合は病院の受診を! 再発を防ぐための注意点を併せて解説
編集部
膀胱炎を繰り返さないために、注意することはありますか?
速水さん
- ストレス溜めない(免疫力を落とさない)
免疫力が落ちると、普段は抑えられているはずの大腸菌などの菌が活発化します。 - 性器周辺は清潔に
排便後、おしりを拭くときには前から後ろに吹きましょう。特に女性は膀胱炎にかかりやすいので、生理時のナプキンはこまめに取り替えてください。 - 水分をこまめにとる
なるべく水分をたくさん飲み、尿を出すようにしましょう。 - 尿意は我慢しない
雑菌が含まれている可能性があるので、こまめにトイレに行きましょう。
編集部
膀胱炎を繰り返す前に、気をつけておいたほうがいいことはありますか?
速水さん
膀胱炎に限らず、何かおかしいなと思ったら早めの医療機関受診をおすすめします。また膀胱炎を繰り返す場合は、体質改善のため漢方薬が処方されることがあります。一番防ぐべきなのは、膀胱炎を繰り返すことです。再発する膀胱炎の影には、ほかの尿路系の病気や、膀胱がん、婦人科系の病気、消化器系の病気が潜んでいる可能性があります。
編集部
突然症状が起きた場合はどうするのがよいですか?
速水さん
例えば、夜間や休日などに症状が出た場合は、応急処置として市販薬で対応せざるを得ない時もあります。しかし、高熱や悪寒、全身倦怠感を伴う場合には重症化している場合もあるので、無理せず救急病院を受診しましょう。
編集部
よく寄せられる質問はどのようなものがありますか?
速水さん
尿とロキソニンに関連した質問で、「ロキソニンは多尿に効きますか?」や「ロキソニンは頻尿に効くのはなぜですか?」と聞かれることが多くあります。結論から言うと、ロキソニンはプロスタグランジンという成分が作られるのを邪魔し、腎臓の血流量を減らす作用を持っています。その結果尿量が減るため、多尿や頻尿に効果的といわれています。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
速水さん
膀胱炎は私たちに身近で、再発率も高い病気です。もし膀胱炎になってしまった場合は、おかしいと思った時点で早めに医療機関を受診することが大切です。また、膀胱炎はロキソニンだけで治療はできません。正確には、ロキソニンは膀胱炎の排尿痛などを和らげてくれるだけで、根本治療にはなりません。治療にはきちんと抗生物質を飲むことが必要です。
編集部まとめ
今回は膀胱炎の種類や症状、「ロキソニンで膀胱炎が治療できるのか?」という疑問について、薬剤師の速水さんに解説していただきました。ロキソニンは万能薬であるイメージを持つ人もいますが、根本治療のためにはきちんと医療機関を受診することが大切です。しっかりと膀胱炎の原因を特定して治療していくことが大事だと分かりました。