【闘病】「子宮頸がん」 と診断され、先生の前で涙。コロナ禍で3年検査を受けていない間に…
子宮頸がんは、子宮がんの約7割を占めるとされています。若い方なら20代で発症することもあり、女性の将来に大きな影響を及ぼす疾患でもあります。30代で早期の子宮頸がんと診断され、手術を経験し、現在もホルモン補充療法を続ける田中さんに、治療内容や当時の心の支えなどについて話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年4月取材。
体験者プロフィール:
田中 りえ
1980年代生まれの女性。両親とお子様の4人で暮らしており、仕事をしながら治療を継続中。発見した経緯は、2022年9月に自治体の健診クーポンを利用した検査を行ったところ、要精密検査との通知。近所のかかりつけ医で検査したところ、総合病院での再検査を勧められ、11月頃にコルポスコピー検査を行った。12月中旬に子宮頸がんとの診断を受けた。
記事監修医師:
浅野 智子(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
「まだ30代なのに」…ショックを受けながらも治療への覚悟を決める
編集部
子宮頸がんという病気が判明するまでの経緯を教えてください。
田中さん
2022年9月にクーポンを利用してがん検診を受けたところ、要精密検査との通知を受け取ったのが最初のきっかけです。
編集部
それまでに体調の変化はなかったですか?
田中さん
当時は、おりものの量が多いと感じたり、たまにおりものが褐色だなと思ったりしていましたが、それ以外の変化はありませんでした。
編集部
要精密検査と通知を受けてどうされましたか?
田中さん
まずは、近隣のかかりつけ医で再検査をしてもらいました。その結果、「HSIL:高度扁平上皮内病変」という結果が出て、総合病院を受診するよう勧められました。そして2022年11月に総合病院でコルポスコピー組織検査を受けて子宮頸がんの疑いがあると言われたんです。その翌月12月中旬に受けた円錐切除術の組織診断では、初期の子宮頸がんとの告知を受けました。
編集部
そこで「子宮頸がん」と診断されたんですね。
田中さん
はい。円錐切除術は検査も兼ねた手術と説明を受け、手術後の病理診断などで診断が確定しました。
編集部
医師から告知を受けた時、どのような治療を勧められたのですか?
田中さん
最初に告知された時、私は妊娠の希望がないと伝えたので、標準治療(手術)である子宮、両側の卵巣、卵管、骨盤リンパ節を郭清する手術を選択しました。
編集部
突然の発見で大変驚かれたのではないでしょうか?
田中さん
あの時は、「まさか自分が、しかも30代でがんになるなんて」と予想もしていなくて、先生の前で涙が出ました。両親や娘を悲しませてしまうだろうし、大きな仕事も2つ抱えていたのでどうしよう……と不安でした。とはいえ、自分が不安定な気持ちのままでは余計に家族へ心配をかけると思い、すぐに伝えるのは一旦控えました。そして、自分が事実を受け止めて治療と向き合う覚悟ができてから家族に伝えました。
編集部
大きな出来事ですからショックも大きかったでしょうね。
田中さん
実はこれまでコロナ禍で検診を受けずにいて、3年ぶりの検診だったんです。知人ががんになったこともあって「自分もこれを機に今年こそ検診に行こう」と思って受けた結果でした。むしろ、あの時検診に行って早期の段階で見つかってよかったと今は思っています。
家族や周囲の理解が治療に向けての力になった
編集部
告知されてから何か変わったことはありますか?
田中さん
告知を受けたものの、自覚症状がなかったので落ち着かない日々が続きました。治療期間は家の中の断捨離や仕事の引継ぎ、身辺整理をして過ごしていました。
編集部
心の支えになったことなどはありますか?
田中さん
私の親もがんの治療経験があったので、がんになったことを伝えた時も落ち着いた様子で受け止めてくれて、安心しました。小学生の娘も「手術すれば治るよ」と明るく励ましてくれて、家族みんなで治療という目標に向かうことができたのが心の支えでした。入院期間中は、少しでも気分が上がるようにとアロマオイルやクッション、本など欲しいものを持ち込ませてもらいました。
編集部
職場の方にも治療について伝えたのですか?
田中さん
職場の上司や同僚にもがんであることを伝えて、1カ月間の休職をいただきました。職場の方からは色紙で「帰ってきてね、待っています」という温かいメッセージもたくさんもらったので、それも心の励みになりました。
編集部
病気になる前のご自分に助言ができるなら、どんなことを伝えたいですか?
田中さん
「その働き方はもう身体が続かないよ」と助言してあげたいです。当時の私は仕事が忙しく、身体の疲れがあっても誤魔化しながら働いていました。仕事を理由に休むことをしていなかったので、すごく反省しています。
がんは誰もがかかる病気、早期発見でがんと付き合って生きていく気持ちを持ってほしい
編集部
現在も治療中だと思いますが、体調や生活・仕事の変化を教えてください。
田中さん
もう少しで術後3カ月になりますが、今でも傷口が痒くなり、赤く腫れることがあります。ホルモン補充療法として、2日に1回エストラーナテープ0.72mgをお腹に貼っているのですが、これを10年間続けると医師に言われて驚きました。幸い、大きな副作用はないものの痒みは我慢するしかないと思います。仕事については、上司に相談して業務量を減らしてもらい、休憩を心掛けるようにしています。
編集部
そのほか、生活で注意していることはどんなことですか?
田中さん
私の場合、腹腔鏡手術で子宮、卵管、卵巣を摘出して、リンパ節郭清も行ったのですが、今のところ副作用のリンパ浮腫は出ていません。ですが、いつか現れるかもしれないので、入院中に看護師の方から教わったリンパマッサージをして身体の浮腫には注意しています。
編集部
子宮頸がんは女性特有の病気ですが、病気について知らない人に伝えたいことはありますか?
田中さん
子宮頸がんに限らず、身体は資本です。良い仕事をするためにも、体調を1番に仕事をしていくことを大事にしてほしいです。また子宮頸がんの原因の多くはHPVというウイルス感染なのですが、娘とHPVウイルスワクチンについて話すきっかけにもなりました。
編集部
田中さんの治療を担当された医師や医療従事者の方にお伝えしたいことはありますか?
田中さん
手術直後、動けなかった時にたくさん助けていただきました。心の温まる声かけもしていただいたことは、今でも本当に感謝しています。
編集部
最後に、田中さんからこの記事を読まれている読者の方へのメッセージをお願いします。
田中さん
私はがん治療を行う際、家族だけでなく職場の上司や同僚にも公表しました。伝える前は不安もありましたが、伝えることで安心して休むことができました。病気の有無に関係なく、職場の人間関係を大事にすることは大きな意味があると思います。また、昔は「がん=死」のイメージもありましたが、初期の場合は「がん=死」や「がん=仕事ができない」というわけではありません。今や誰もががんになってもおかしくない時代ですので、早期発見を目指すためにも皆さんに検診を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
田中さんは早期発見により術後1カ月で職場復帰し、現在は月1回の通院をしながらも、以前と変わらない日常を過ごされています。むしろ、今は以前よりも睡眠や食事などの生活習慣に気を付けており、健康管理を重視した生活を送っているそうです。すべてのがんを早期発見することは難しいですが、田中さんのように検診で発見できるケースも多くあります。今回の記事をきっかけに、みなさんも毎年の健康診断や検診を受けて、早期発見・早期治療を心かけましょう。