「ペインクリニック」で受けられる治療や受診の流れ、注意点を医師が解説
痛みがあるというだけで、QOL(生活の質)は大きく下がります。その一方、「痛みはあるけど、何科に行けばいいのかわからない」「かかりつけ医に痛み止めをもらっているけれど、もう少し専門的に診てもらいたい」という人もいらっしゃると思います。そんな悩みを解決するために、「ペインクリニック」という診療科があるのをご存じでしょうか。今回は、ペインクリニックで受けられる治療や受診時の注意点などについて、「兵田クリニック」の兵田先生に解説していただきました。
監修医師:
兵田 暁(医療法人恒尚会兵田クリニック)
目次 -INDEX-
「ペインクリニック」って何をする診療科なの?
編集部
ペインクリニックについて教えてください。
兵田先生
「ペイン」とは「痛み」のことで、痛みに特化して診察・治療をおこなう診療科がペインクリニックです。「痛いけど、何科に行けばいいのかわからない」という人などの助けになると思います。
編集部
ペインクリニックでは、どんなことをするのですか?
兵田先生
まず、症状や身体所見から多角的に痛みの原因を診断します。そして、薬物療法だけでなく神経ブロックを始めとする様々な治療法を組み合わせて、痛みを軽減・消失させていきます。
編集部
怪我などだけでなく、慢性痛などにも対応しているのですか?
兵田先生
対応しています。たしかに慢性痛や神経の障害、がんによる痛みなどは、怪我や手術後の痛みといった回復段階にある症状とは異なり、治療が困難な場合もあります。そうしたケースでも、医師、看護師、薬剤師、理学療法士・作業療法士など、痛みの診療に関わる多くのスタッフが連携して、最適な治療へと導いていきます。
編集部
一口に痛みといっても、対応が異なるのですね。
兵田先生
そうですね。痛みの原因も種類もたくさんありますし、痛みとの付き合い方も様々です。痛みの種類によっては、苦痛をゼロにすることだけを目標にするのではなく、痛みを上手にコントロールして、日常生活に復帰することを目標にします。
痛いのに運動? 痛みに対する運動の効果を医師が徹底解説
編集部
色々な考え方があるのですね。
兵田先生
はい。ペインクリニックで受けられる治療は、それぞれの医療機関によって異なります。例えば、当院では薬物療法やブロック注射だけでなく、運動器リハビリテーション(以下、リハビリ)・低周波治療・鍼灸など、様々な手段を用いて治療しています。
編集部
運動もおこなうのですか?
兵田先生
おこないます。とくに、慢性的な痛みに対してはリハビリが効果的であるため、積極的に運動器リハビリの実施をすすめています。痛いからといって安静にしているだけでは、筋力も活動性も落ちてしまいます。適切な運動をすることで、痛みの改善や寛解、そして再発予防も期待できるのです。
編集部
なるほど。ある程度動いた方がいいのですね。
兵田先生
そのとおりです。「痛みには安静がいい」というイメージがありますが、じつは動いた方が改善します。運動の効果としては、筋力アップだけでなく、骨粗しょう症の予防や血行促進、体重コントロールなどがあります。骨粗しょう症や血行不良、過体重なども痛みの原因となりますので、これらを予防するためにも運動器リハビリの役割は非常に大きいと考えています。また、運動のさらなる効果として、「慢性疼痛の予防・緩和」が言われています。
編集部
なぜ、運動が慢性疼痛にいいのですか?
兵田先生
簡単に言うと、体を動かすことによって、痛みの感じ方に変化が出てくるのです。少し専門的になりますが、運動療法は、痛みがあっても動かすことができることを患者さんに成功体験として得てもらうことで、身体機能を向上させますし、精神状態の改善効果も期待できます。医療者の支援や共感、患者さんの期待に応えることによって、認知・情動要因が改善するという報告があります。また、安易に運動を指導すると、その運動に痛みを伴って患者さんが拒否的な行動をとってしまう恐れもあります。そのため、医療者が患者さんの身体機能をよく評価したうえで、プログラムを組む必要があります。慢性痛や慢性痛に対するリハビリの研究はまだまだ不明なことも多いので、今後もっと具体的なことが解明されてくると思います。
ペインクリニックでの流れは? 受診するときの注意点や費用も教えて
編集部
ペインクリニックの流れを教えてください。
兵田先生
整形外科と似た、最初に問診をして必要な検査をして、必要な処置や治療をおこなうという流れです。ペインクリニックだからといって、特別な流れがあるわけではありませんので、あまり気構えなくて大丈夫ですよ。
編集部
受診する際の注意点などはありますか?
兵田先生
「いつ頃から、どんな痛みがどのように続いているのか」「何かきっかけはあったのか」など、前もってまとめておいていただけると診察・診療がスムーズになります。また、現時点で既に診断がついている人や、薬を服用している場合などは、診断名や薬剤名がわかるようにしておいてください。
編集部
費用はどのくらいかかるのでしょうか?
兵田先生
基本的には、金額も整形外科の保険診療と同等です。処方する薬の種類やリハビリの時間などによって変わりますが、保険適用されるので3割負担の場合、1500円前後くらいかと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
兵田先生
ペインクリニックは、整形外科疾患や帯状疱疹後の痛みを伴う患者さんが多いのですが、基本的にはどんな痛みにも対応しています。痛みに対するケアを対症療法から開始することもできますし、必要に応じて運動を取り入れていくことで、脳から痛みを和らげていくことも期待できます。何科に相談すればいいのかわからない痛みに悩まされている人などは、ぜひお近くのペインクリニックに受診してみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
ペインクリニックで受けられる具体的な治療内容や期待できる効果などについて解説していただきました。薬物療法やブロック注射、低周波治療、鍼灸など、複数の選択肢の中から適切な治療を組み合わせることに加え、適切に運動を取り入れることで痛みを緩和していく効果も期待できるとのことでした。痛みがなくなると、QOLが大きく向上します。今、何らかの痛みにお悩みの人は、お近くのペインクリニックに相談してみてくださいね。
医院情報
所在地 | 〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1丁目1 番3-1800号 大阪駅前第3ビル18階 |
アクセス | 御堂筋線「梅田駅」 徒歩5分 JR「大阪駅」 徒歩5分 |
診療科目 | ペインクリニック、整形外科 |