「辛い胃カメラが楽になるコツ」を専門医が解説 内視鏡検査は鼻と口や鎮静剤の有無でも変わる?
胃カメラの検査を受けたとき、「痛い・苦しい・不快」といった印象を持った人もいるのではないでしょうか。そのため、「もう検査を受けたくない」と思っている人も多いと思います。しかし、検査の方法を見直せば、胃カメラの辛さを軽減できるのをご存知でしょうか。今回は、胃カメラを楽に受けるコツについて、「青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック」の金沢先生に教えていただきました。
監修医師:
金沢 憲由(青葉台かなざわ内科・内視鏡クリニック)
目次 -INDEX-
従来の胃カメラ・内視鏡検査が辛い原因を専門医が解説 「苦しい・痛い・不快・吐きそう」と感じるのはなぜ?
編集部
「胃カメラの検査が辛い、不快」という声をよく耳にします。一体なぜ、辛いと感じるのでしょうか?
金沢先生
一般に、胃カメラの検査が辛いと言われるのは、「嘔吐感」があるからです。カメラが喉を通過するとき、舌の根元に触れることで嘔吐反射が起き、吐き気を催してしまいます。
編集部
そのほかにも、患者さんから「辛い」と聞くことはありますか?
金沢先生
通常、胃カメラの検査をおこなう際は、胃の中に空気を送りながらシワを伸ばして隈なく観察します。この空気で検査中、お腹が張るため辛いと聞くこともありますね。
編集部
そもそも、胃カメラとは体内をどのように通過していくのですか?
金沢先生
胃カメラは胃内視鏡とも呼ばれ、口からカメラを挿入して「喉→食道→十二指腸→胃」、もしくは「喉→食道→胃→十二指腸」の順番に観察します。
編集部
胃カメラとはどのようなものですか?
金沢先生
細く柔らかいチューブの先にカメラがついており、そのチューブを口や鼻から挿入します。臓器を直接観察することで病気の早期発見・早期治療が可能になります。
編集部
検査中、嘔吐感を覚えたらどうなるのですか?
金沢先生
吐き気を強く感じるとチューブを喉に通しにくくなってしまいます。また、体が力んでしまい嘔吐反射が強くなったり、ゲップが出ることで胃がしぼんだりしてしまうので、再び空気を入れながら観察しなければなりません。そのため、検査時間が長くなってしまうのです。
編集部
嘔吐反射やお腹の張り以外にも、胃カメラが辛いと感じる原因はありますか?
金沢先生
ほかにも、「医師の技量や経験が不足している」「使用しているカメラが太い」なども、辛さの原因になります。通常、胃カメラを口から入れる場合には、9〜10mmの太さのカメラを使用するため、人によっては太いと感じるようです。
辛い胃カメラを楽に受けるコツや対処法 内視鏡検査で麻酔や鎮静剤は使える?鼻からと口からで辛さは変わる?
編集部
胃カメラの検査を楽に受けるコツを教えてください。
金沢先生
一番大事なのは「検査中に力まない」ことです。力が入ると喉がしまり、余計に嘔吐反射が起きやすくなります。そのため、首や肩の力を抜き、腹式呼吸でリラックスするように意識しましょう。
編集部
検査を受けるとき、麻酔や鎮静剤は使えるのですか?
金沢先生
口から胃カメラを挿入する場合には、喉に麻酔をかけます。麻酔はゼリー状の薬やスプレーによるもので、この処置をおこなうことにより、喉の違和感が軽減されます。しかし、これだけで嘔吐反射を完全にストップさせることはできません。麻酔だけでは不十分という人は、「鎮静剤」を併用することもできます。
編集部
鎮静剤を併用すると、どうなるのですか?
金沢先生
鎮静剤を用いることで、反射や恐怖感を可能な限り軽減することができます。検査後に安静時間が必要だったり、検査当日は車の運転や仕事に影響が及んだり、検査による注意点などもありますが、胃カメラに対して強い不安を抱いている人にはおすすめです。
編集部
鎮静剤を使用するのとしないのとでは、そんなに違いがあるのですか?
金沢先生
鎮静剤を使用して胃カメラを経験した患者さんからは、「こんなに楽に受けられるとは思わなかった」「いつ検査したのかわからず、あっという間に終わってしまった」といった声を聞きます。実際、私のクリニックでも鎮静剤を使用して検査を受ける人が圧倒的に多いのです。胃カメラの検査に苦手意識を持っている人は、ぜひ鎮静剤の使用を検討してみてください。
編集部
口からでなく、鼻からカメラを入れることもできるのですよね?
金沢先生
はい。胃カメラには経口のほか、経鼻の検査もあります。鼻からカメラを挿入することによって、嘔吐反射を軽減することができます。経鼻カメラは経口カメラと比べて画質が劣るとされていましたが、現在では内視鏡も進化しており、ほとんど違いはありません。
編集部
経鼻カメラの方が楽と聞きましたが、本当ですか?
金沢先生
たしかに、喉の嘔吐反射が断然少なくなるので、楽に受けられるかもしれません。しかし、経口カメラは経鼻カメラよりも操作性が優れていたり、胃内の汚れを洗いやすかったりと、色々なメリットもあります。当院では喉の反射がそれほど強くない人や、精密な検査を望まれる人には、経口での検査を推奨しています。
従来と比較して辛さを軽減できる胃カメラの流れや費用、内視鏡検査を受ける際の注意点を専門医が紹介
編集部
極力、不快感を軽減して胃カメラの検査を受けるには、どうしたらいいでしょうか。
金沢先生
できるだけ辛い思いをしたくない人には、鎮静剤を使った胃カメラ検査がおすすめです。人間ドックなどを予約するときに鎮静剤の有無を問われることもあるので、その際に「鎮静剤有り」で申込みましょう。
編集部
検査の流れや準備について教えてください。
金沢先生
食事は前日の21時までに済ませてください。検査当日の朝食は摂らず、検査1時間前以降は水以外禁止となります。検査室では胃の中の泡や余分な粘液を除去する液体を飲み、ゼリー状またはスプレーの麻酔薬で喉の麻酔をしてから、点滴で鎮静剤を投与しながら検査をおこないます。眠ったことを確認してからカメラを入れて、食道、胃、十二指腸を観察します。なお、検査時間は4分程度です。
編集部
費用はどれくらいかかりますか?
金沢先生
保険適用なので、胃カメラのみであれば1割負担で2000円前後、3割負担で6000円前後です。もし、ピロリ菌検査や組織検査もおこなう場合には、その分の費用が上乗せされます。
編集部
鎮静剤を使用すると、費用は上がるのですか?
金沢先生
保険適用で検査を受ける場合、鎮静剤の有無で金額はほとんど変わりません。
編集部
検査を受ける際の注意点はありますか?
金沢先生
胃カメラの検査の辛さの度合いは、医師の技量も大きく影響しています。検査を受ける際には内視鏡の専門医が担当するかどうかなど確認するといいでしょう。あるいは、総合病院など大きな医療機関よりも院長自身が検査や診察をおこなうクリニックの方がいいという意見もあります。クリニックのホームページなどで院長の経歴や実績などを確認できるため、安心感につながるからでしょう。もし、どこで検査を受けようか迷っている場合には、こうした情報も参考にしてください。
編集部
鎮静剤の使用にリスクはありませんか?
金沢先生
鎮静剤の使用後は、薬の効果が切れるまで院内で安静にしていただく必要があります。また、稀に呼吸が一時的に弱くなったり、血圧が低下したりするといったリスクはあります。ただ、呼吸状態や血圧を測定しながら安全に検査がおこなわれますし、患者さんの体格などをみながら、使用する薬剤の種類や分量を調整するので、安心してくださいね。
編集部
鎮静剤を使用できない人はいますか?
金沢先生
例えば、普段からお酒をたくさん飲む人や睡眠薬、抗不安薬などを常用している人は、薬理作用の影響で鎮静剤に耐性ができていることもあります。鎮静剤が効きにくくなりますが、鎮静剤が使えないというわけではありません。検査前に医師にご相談ください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
金沢先生
胃カメラで発見できるがんに、胃がんや食道がんがあります。これらは早期のうちに発見すれば、内視鏡で治療できる可能性が非常に高いのです。そのため、定期的に胃カメラの検査を受けると、食道がんや胃がんで命を落とすリスクを極力、軽減することができるでしょう。また、胃の検査にはバリウムもありますが、胃カメラの方が早期のうちにがんを発見しやすいということが研究によって判明しています。「胃カメラが辛いから検査を受けたくない」という人が1人でも少なくなるよう、私自身も普段から苦しくない胃カメラ検査の普及に努めています。もし、胃カメラの検査で不安やお困りのことがあったら、率直に担当医に相談してみてください。一人ひとりに適した、苦しくない胃カメラ検査の方法を提案してくれると思います。
編集部まとめ
胃がんや食道がんの早期発見に役立つ胃カメラの検査。「辛い」「苦しい」という理由で検査を受けずにいた結果、がんがすでに進行しているがんが見つかる人も少なくありません。辛さを軽減できる方法はありますから、ぜひ定期的に胃カメラの検査を受けて、がんを予防しましょう。
医院情報
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診療科目 | 消化器内科、肝臓内科、内科 |