牛乳の栄養素はカルシウムだけではない! 管理栄養士が牛乳の栄養と健康効果を徹底解説
牛乳=カルシウムのイメージを持っている人が、ほとんどではないでしょうか? しかし、実は牛乳には私たちが思っている以上にいろいろな栄養素が含まれています。とはいえ、牛乳も人によっては合わなかったり、間違った飲み方をしてしまうと不調の原因になってしまったりすることもあります。そこで、今回は、牛乳の正しい選び方と飲み方について、管理栄養士の亀崎さんに解説していただきました。
監修管理栄養士:
亀崎 智子(管理栄養士)
目次 -INDEX-
牛乳にはカルシウムなどどんな栄養が含まれているのか 大人も知っておきたい牛乳コップ1杯あたりの栄養素・健康効果を解説
編集部
はじめに、牛乳に含まれる主な栄養素を教えてください。
亀崎さん
カルシウムのイメージが強い牛乳ですが、実はいろいろな栄養素が含まれている栄養素の宝庫の飲み物なのです。牛乳には、私たちの生命活動に欠かすことができない3大栄養素の炭水化物・タンパク質・脂質がバランスよく含まれています。そのため、体の材料やエネルギー源としても優れています。加えて、現代人が不足しがちなミネラルやビタミンも豊富に含まれていることから、別名「準完全栄養食品」と呼ばれることもあります。
編集部
カルシウム以外のミネラルやビタミンなども豊富に含まれていますか?
亀崎さん
・ビタミンB2:3大栄養の代謝(特に脂質代謝)のサポートに関与
・ビタミンB12:葉酸と一緒に摂取することで、赤血球の合成に関与するため貧血予防に役立つ
・パントテン酸:三大栄養のエネルギー代謝のサポートに関与し、イライラ予防にも効果的
また、骨や歯の材料としても大切なミネラルの一種のリンも豊富に含まれています。ただし、リンは不足することはほとんどなく、過剰摂取するとカルシウムと鉄の吸収を妨げる危険性もあるため、少し注意が必要です。
編集部
コップ1杯の牛乳には、どのくらいの栄養素が含まれていますか?
亀崎さん
・カルシウム:1日に必要な量の1/3
・ビタミンB2とB12 :1日に必要な量の1/4
※参照:厚生労働省【「日本人の食事摂取基準」(2020年版)】
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
牛乳の栄養・効果を活かすおすすめの飲み方・自分にあった牛乳の選び方を管理栄養士が解説 普通の牛乳と低脂肪牛乳の違いは?
編集部
普通の牛乳と低脂肪牛乳は、何が違いますか?
亀崎さん
一般的に、牛乳とは生乳100%のものを指します。この生乳100%の中に含まれているのが、普通の牛乳と低脂肪牛乳です。普通の牛乳と低脂肪牛乳の大きな違いは、その名前の通り「脂肪の含有量」です。普通の牛乳は、生乳100%のものを加熱殺菌したものです。一方、普通の牛乳の乳脂肪分を減らしただけで、それ以外の成分は普通の牛乳をほぼ同じものを低脂肪牛乳とよびます。ほかにも、成分調整牛乳や無脂肪牛乳、生乳に乳製品を加えた加工乳や乳飲料などもあるため、好みにあわせて選ぶとよいでしょう。
編集部
牛乳におすすめの飲み方がありますか? 朝・昼・夜のどの時間帯に飲むのがおすすめか教えてください。
亀崎さん
基本的に、牛乳はどの時間帯に飲んでも問題ありません。飲む目的にあわせて時間を意識してみるのもおすすめです。朝食時に牛乳を飲むと、眠っている胃腸を起こして、体内時計をリセットするとともに、便秘解消も期待できます。トレーニング効果をアップさせたいという場合、昼間に牛乳を飲むとカルシウムの補給に、夕方に飲むと良質なタンパク質、カルシウム、リンの補給に繋がります。また、睡眠中の骨や骨格形成のサポートとして、材料となる良質なタンパク質やカルシウムが含まれているため、夕食時に飲むのもおすすめです。特に、成長期にはより意識をしてあげるとよいでしょう。
編集部
牛乳を選ぶ時に、注目したいポイントはどこですか?
亀崎さん
いろいろな種類がある牛乳ですが、選ぶ時におすすめなのは、生乳100%で加熱殺菌だけした「普通の牛乳」です。パッケージには、成分無調整と記載されているものも多いですね。決して、ほかのものを否定するわけではありませんが、健康のために飲むという意識が強い場合は、原材料がシンプルで、できるだけ加工されていないものを選ぶ方がよいでしょう。さらに、こだわりたいという方は、乳牛の飼育方法にこだわっているものや分離しやすい脂肪の均質化を行っていないノンホモジナイズ牛乳、低温殺菌のものなどを選ぶのもおすすめです。
牛乳を飲む際の注意点はある? 栄養面では毎日飲むべき?お腹が弱い人はどのように飲むのがいい?
編集部
牛乳は1日何杯まで、毎日飲んでも大丈夫ですか?
亀崎さん
【男性】18~29歳:800mg、30~74歳:750mg、75歳以上:700mg
【女性】18~74歳:650mg、75歳以上:600mg
コップ1杯(約200ml)の牛乳には、約200mgのカルシウムが含まれています。食事からもカルシウムを摂取することも考慮すると、牛乳を飲む場合、基本的にはコップ1杯を目安にするとよいでしょう。ただし、活動量が多い人に関しては、2杯までを限度として飲むのも問題ありません。
編集部
整腸作用のある牛乳は、飲む時に注意することはありますか?
亀崎さん
牛乳は5大栄養素がバランスよく含まれている飲み物ですが、タンパク質の一種であるカゼインやβラクトグロブリンなどを原因とする牛乳アレルギー を発症する人も、一部ですが存在します。アレルギーの程度には個人差がありますが、人によってはアナフィラキシーショックを起こし、死に繋がることもあります。そのため、初めて飲む時には、アレルギーがないかを確かめるためにも、少量からスタートする必要があります。牛乳のアレルゲンは、加熱によってほとんど変化しないともいわれています。そのため、アレルギーの疑いがある場合、大量の牛乳を飲むことを避けるのはもちろんですが、医療従事者に相談することをおすすめします。
編集部
ほかにも、牛乳を飲む際に注意するべき人はどのような人ですか?
亀崎さん
・一度の飲む量は少量で
・温めて飲む
・乳糖の量が少ないものを選ぶ
・発酵させたヨーグルトやチーズに代える
・腸内細菌叢を整える
あまりにひどい症状が出る場合には、医療従事者に相談してくださいね。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
亀崎さん
栄養バランスのよい牛乳ですが、牛乳ばかりに頼りすぎるのもよくありません。あくまでも、食事の補助的なものであり、選び方や飲み方のポイントもおさえながら上手に付き合っていけるとよいでしょう。ただし、不調の引き金になる場合もあるため、その点にだけは気をつけてくださいね。
編集部まとめ
牛乳の栄養と飲む時に気をつけたいポイントについて解説いただきました。栄養バランスのよい牛乳ではありますが、人によっては、体調を崩してしまう原因になってしまうことも。そのため、自分や家族の体質にあわせて、それぞれに合った方法で、牛乳と付き合っていけるとよいですね。不調を感じてしまう人は、医療従事者に相談してみるのもよいでしょう。