「肩こりに効く薬」を薬剤師が解説 原因ごとの選び方も紹介
パソコンやスマートフォンの画面を注視することが多くなり、近年「肩こり」に悩まされている方が急増しています。肩こりになってしまうと、肩の痛みのみならず、頭痛や不眠につながることもあり、QOLが下がってしまっている方も少なくないでしょう。本日は肩こりに対してどのような薬剤が用いられるのか、薬剤師の栗原さんにお話しを伺いました。
監修薬剤師:
栗原 徹(薬剤師)
目次 -INDEX-
肩こりに効く薬にはどんな種類がある? 内服薬・湿布薬・塗布薬それぞれの特徴を紹介
編集部
肩こりには、どのようなタイプの薬剤が用いられるのでしょうか?
栗原さん
大きく3つのタイプがあります。一般的に飲み薬と呼ばれる「内服薬」、肌に直接貼り付ける「湿布薬」、痛みがある箇所に直接塗り込む「塗布薬」が基本的に用いられています。クリニックや病院では、上記以外ですと筋肉や神経に直接作用させるために「注射剤」を用いることもあります。
編集部
それぞれのタイプの特徴にはどのようなものがありますか?
栗原さん
内服薬には様々な成分のものがあります。炎症を抑え、痛みを軽減させる「消炎鎮痛剤」、筋肉の緊張を緩和する「筋弛緩薬」、筋肉疲労を和らげ神経機能の回復を促す「ビタミン剤」があります。その他、漢方でも適応のあるものがあります。湿布薬には2種類あります。ハッカやメントール成分が含まれ、冷たく感じる「冷湿布」では痛みや炎症の緩和、カプサイシンが含まれる「温湿布」では血流をよくすることで筋肉の緊張を緩和が期待できます。塗布薬では、手に薬を出して塗る「軟膏」や、スティック型などで、手を汚さずに使用することができる「チック剤」などがあります。
編集部
使い分けはどのようなケースがありますか?
栗原さん
成分によって使い分けがされます。痛みの改善に即効性を期待する場合は「消炎鎮痛剤」を選択し、筋緊張や疲労の改善を目的「筋弛緩薬・ビタミン剤」が選択されます。内服薬・湿布薬・塗布薬については使いやすいものを選択していただければと思います。
肩こりを和らげる薬の選び方は「肩こりの原因」から探す 原因ごとにあった薬とは
編集部
そもそも、肩こりはどういった人に多く見られるのでしょうか?
栗原さん
肩こりは、主に血行不良によって引き起こされます。血行不良の原因としては、眼精疲労や筋肉疲労、冷えなどが挙げられます。原因によって薬剤を選択し、適切に治療することが重要です。痛みにアプローチする「消炎鎮痛剤」、筋肉の緊張にアプローチする「筋弛緩剤」、筋肉の疲労回復を促す「ビタミン剤」など様々な種類あります。
編集部
眼精疲労・筋肉疲労が原因では、どのように対応するのでしょう?
栗原さん
原因となっている疲労に対するアプローチが必要となり、「ビタミン成分」が含まれる薬剤が選択されるでしょう。ビタミンB1、B6には筋肉疲労の回復を早める効果、ビタミンEには血流改善、ビタミンB12には神経機能の回復が期待されます。
編集部
冷えによる血流悪化が原因の場合も教えてください。
栗原さん
血流改善に効果が期待されるビタミンEが含有され、痛み止め成分が含まれる薬剤が選択されるでしょう。背景によっても治療選択が異なりますので、ご自身の肩こりの原因を理解されてから薬剤の選択を行いましょう。
肩こりに効く薬を使用する際の注意点を解説 毎日薬を使用しても大丈夫?
編集部
薬の使用について注意すべきポイントなどはありますか?
栗原さん
それぞれのタイプによって注意すべき項目が異なってきます。内服薬では、妊婦や妊娠している方には注意が必要な成分が含まれることがあります。湿布薬・塗布薬では皮膚のかぶれの可能性があります。その他、副作用の可能性もありますので、薬剤師・登録販売者に購入前に相談してみてください。
編集部
肩こりにならないように、予防的に薬を服用するのはどうですか?
栗原さん
薬剤による予防方法はありません。肩こりの予防としては、適切な姿勢やストレッチ、運動、ストレス管理、十分な睡眠、冷え対策などが重要となります。肩こりの症状が表れたら、薬剤の出番となります。
編集部
薬を服用しても、なかなか改善しない場合はどうすればよろしいでしょうか?
栗原さん
症状が改善しない場合には、医師・薬剤師に相談してください。特に、肩こり以外に頭痛やしびれ、吐き気などを伴う場合はすぐに受診してください。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
栗原さん
薬剤による肩こりの予防は現状できません。適切な姿勢・ストレッチを行っても、肩こりがある場合に内服薬・湿布薬・塗布薬を原因に応じて選択しましょう。わからないことは薬剤師・登録販売者に相談してみてください。
編集部まとめ
様々なタイプの薬を、症状に合わせて使い分けしていくことについて解説いただきました。予防的な漫然投与や注意点について再度ご確認いただき、適切に対応することが重要です。市販薬にて改善が認められない場合には、むやみに種類を増やすのではなく、受診し医師の判断を仰ぎましょう。
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