「肝斑」の予防法を美容皮膚科医が解説 食事やサプリメントで改善できる?
「肝斑」ってよく耳にするけど、どんなものなのか専門家からきちんと説明を受ける機会はあまりないと思います。そこで今回は、肝斑の原因や予防法、できてしまったときの対策などについて、美容皮膚科医の中野希先生(NIメディカルクリニック 院長)に解説していただきました。
監修医師:
中野 希(NIメディカルクリニック)
気になるシミの一種「肝斑」の原因は?
編集部
「シミ」と「肝斑」は違うのですか?
中野先生
はい、厳密に言えば違います。シミは色素斑、肝斑は色素沈着と、異なる機序によるものです。肝斑は女性に多くみられる病変で、ほほ骨や目尻の下などに左右対称にできるとされています。「シミ」なのか「肝斑」なのか、ご自身での判断は難しいかもしれませんが、左右対称のくすみ・モヤモヤがあれば、肝斑かもしれません。
編集部
肝斑ができる原因はなんでしょうか?
中野先生
「メラニン細胞の不安定性」と「肌への刺激」が原因であると言われています。また、ホルモンバランスが乱れる40代以降、とくに閉経前の女性は要注意ですね。あとは、妊娠中の女性やピルを飲んでいる人も肝斑ができやすいとされています。加えて、肝斑を隠そうとしてメイクやコンシーラーを厚く塗る人ほど、肌に刺激が入るので悪化しやすい傾向にあります。
編集部
「メラニン細胞の不安定性」について、もう少し詳しく教えてください。
中野先生
メラニン細胞は、表皮の「基底層」というところに、まだらに存在しています。肌への摩擦などが刺激になって、肌を守ろうとしてメラニン細胞がメラニンを出すのですが、このメラニン細胞が不安定だと過剰にメラニンが出てしまい、肝斑となってしまうのです。
編集部
ほかに肝斑を悪化させる要因はありますか?
中野先生
紫外線とホルモンバランスの乱れは、肝斑を悪化させる要因です。ホルモンバランスが乱れると、色素細胞が活性化されて、メラニンが生成されるためです。肝斑が閉経後に薄くなったり、高齢者にはほとんど発症しなかったりするのは、閉経後、女性ホルモンの乱れが落ち着くからだと言われています。
編集部
肝斑ができてしまった場合、どうしたら消えますか?
中野先生
できてしまった肝斑をセルフケアだけで綺麗にするのは難しいので、予防が大切になってきます。どうしても消したい場合は、やはり美容皮膚科などの医療機関で治療を受けることをおすすめします。
食事やサプリメント・紫外線対策など 知っておきたい肝斑の予防法
編集部
肝斑の予防法について教えてください。
中野先生
まずは「肌への刺激」を減らすよう心がけましょう。20~30代で肝斑ができてしまう女性は、肌への刺激が原因であることが多いように思います。そのため、毎日のメイクや洗顔などで、強く擦るのを控えるようにしましょう。メイクの際、例えばチークを塗るときにブラシを横に動かすのではなくポンポンと優しくのせる、クレンジングや洗顔のときは、手で強く擦らずにたっぷりの泡で優しく洗うなどを心がけてみてください。また、洗顔後のタオルドライも、水分を「拭き取る」のではなく「吸い取る」イメージで丁寧にしてあげてください。
編集部
正直、結構ゴシゴシ洗っていました……。
中野先生
意識しないと、どうしても力が入ってしまう人は多いと思います。そういう場合は、こすらなくてもいい泡タイプの洗顔料や化粧水に変えてしまうのも効果があると思います。あとは、紫外線対策をしっかりおこないましょう。「日焼けをしない」のは、肝斑予防の鉄則です。
編集部
スキンケアを変えるだけで効果があるのですね。
中野先生
そうですね。セルフケアで肝斑を完全に消すのは難しいとされていますが、薄くするにはスキンケアを変えるのが効果的です。ホームケアとしては、飲み薬を飲んだり、肝斑を消す成分が入っているドクターズコスメを使ったりするのも効果的です。これらは、美容皮膚科で処方してもらえます。
肝斑の治療法を美容皮膚科医が解説
編集部
美容皮膚科などの医療機関を受診した方が改善できますか?
中野先生
そうですね。先ほどご紹介した2つの原因を取り除きながら、医療機関での治療もおこなっていくと、かなり薄くなることが期待できます。
編集部
具体的に、どのような治療をするのですか?
中野先生
内服薬、外用薬、ドクターズコスメ、シルファーム、トーニングなどの選択肢があります。内服薬だとトラネキサム酸、外用薬だと、メラニンの合成を抑えるハイドロキノンや、ビタミンA(レチノール)の誘導体であるトレチノインなどを処方します。
編集部
トラネキサム酸とはなんですか?
中野先生
トラネキサム酸は、人工合成されたアミノ酸の一種です。喉の止血や炎症を抑えるときに使う薬なのですが、メラニン色素細胞を活性化させる「プラスミン」の働きを阻害する作用があるため、肝斑の改善に有用だとされています。最近はサプリメントも出ていますね。ちなみに、「トラネキサム酸を飲み続けるとどうなるの?」というご質問をいただくことも多いのですが、基本的には飲み続けても問題がないケースがほとんどです。ただし、心筋梗塞や脳梗塞などの持病のある人などには、血を止めやすくしてしまう作用もあるため、おすすめしていません。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
中野先生
肝斑は医療機関の治療も有効ですが、それだけでは不十分で、ご自宅でのセルフケアが大事になってきます。いくつかに分類されるシミの中でも、毎日のご自身のケアに左右されるのが肝斑です。何十年もかけてできたものが多いため、治るのにも時間がかかることが多いですが、ケアすれば改善するので続けていただきたいと思います。そのうえで、画像診断や写真などで肝斑が悪化していないか、改善しているかの効果を確認しながら治療してくれる医療機関へ受診するのがおすすめです。
編集部まとめ
今回は、「肝斑」の予防法・対処法について、お話を伺いました。レーザーで消せるタイプのシミとは異なり、肝斑は、治療とホームケアでじっくりと治療していくのが大事とのことでした。写真や画像診断などで効果が確認できれば、モチベーションを保ってより前向きに続けられると感じました。
医院情報
所在地 | 〒464-0850 愛知県名古屋市千種区今池5丁目1-5 名古屋センタープラザビル12階 |
アクセス | 名古屋市営地下鉄「今池駅」直結 |
診療科目 | 皮膚科、美容皮膚科 |