【闘病】かゆみの原因は「全身性強皮症」だった 『まさか自分が』膠原病になるとは…
指先が変色する自分の症状をネットで検索し、膠原病の疑いを持ったというはるさん(仮称)。全身性強皮症(指定難病)の診断の後も、皮膚の痒みと闘いながら、子育てや仕事に奮闘しています。そこで、これまでの闘病体験や病気に対する意識の変化などについて、話を聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年9月取材。
体験者プロフィール:
はる(仮称)
神奈川県在住、39歳。夫、長男(取材時5歳)、長女(同2歳)との4人暮らし。診断時の職業は自営業(オンラインサロンを運営)。2021年10月にレイノー症状を覚え、2021年12月に全身性強皮症の診断を受けた。
Instagram@yurupura_haru
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
長女出産後の異常
編集部
最初の症状は痒みだったそうですね。
はるさん
2020年5月に長女を出産したのですが、同年7月頃から頭皮、上半身に湿疹を発症し、みるみるうちに全身に広がっていきました。痒みの強い湿疹が、背中から腕、顔、頭、耳、首など上半身に強く現れました。最初はストレスによるものだと思い込んでいましたが、次第に湿疹の痒みが生活に支障をきたすレベルになり、皮膚科に通っても一向に良くなりませんでした。
編集部
診断までの経緯を教えて下さい。
はるさん
2021年10月頃から寒さを感じると指先が白く変色していることに気が付きました。全身の湿疹も悪化し、痒み・痛みでどんどん日常が辛くなっていきました。2021年12月に旅行先で雪が降り積もるなか、とてつもない寒さを感じ、いつもは白くなる指先が黒紫色に変色していました。
編集部
それは異常ですね。
はるさん
変色した指先を見て、凍傷だと思ってネットで検索したところ、レイノー症状に該当しそうなことを知り、膠原病の可能性に気が付きました。近所のリウマチ内科を受診したところ、診察してすぐに総合病院を紹介されました。今通っている総合病院の血液検査で、やっと全身性強皮症と診断されました。
編集部
医師から受けた治療方針はどのようなものでしたか?
はるさん
私の全身性強皮症は「限局皮膚硬化型」ではなく「びまん皮膚硬化型」というもので、進行すると内臓が硬化する可能性があると言われました。治療は全身性強皮症の症状が本格的に発症してから開始するとのことでした。しばらくは経過観察と皮膚科の受診のため、1ヶ月に1度の通院をすることになりました。
編集部
病気が判明した時の心境について教えて下さい。
はるさん
「膠原病」と言う名前は聞いたことはあったものの、勝手に高齢の方が発症するものというイメージを持っていました。まさか、自分がという気持ちと、体調不良が長く続いていたので原因が判明してほっとした気持ちの半々でした。診断を受けてからしばらくは現状を受け入れることができず、1週間ほど毎日泣いて過ごしました。
編集部
気持ちを切り替えることはできましたか?
はるさん
次第に「泣いていても仕方ない。治らないのであれば病気と向き合って生きていくしかない」という気持ちに変わりました。育休中にはじめた副業がきっかけで自営業として仕事ができている現在の環境に、ありがたみを感じているところです。
全身性強皮症診断後の取り組み
編集部
診断後の生活の変化について教えて下さい。
はるさん
膠原病は治療法がないとわかっていても、担当医に何かできることはないか聞いたところ、「食生活の改善」「グルテンフリー」(グルテンを含まない食生活)を勧められ、その後すぐにはじめました。すると徐々に体調の変化を感じられたので、Instagramで情報発信も行っています。
編集部
どんな食生活になりましたか?
はるさん
和食中心で、小麦は米粉に置き換えて料理をしています。うどんなどの小麦メインの食事は食べていません。もともとパンは大好きなので、米粉100%のパンを毎週焼いて食べています。
編集部
現在の様子はどうですか?
はるさん
全身性強皮症の症状に進行はないものの、湿疹は徐々に広がっています。体感としては、とにかく疲れやすく、寝ても疲れが取れにくくなりました。全身性強皮症の初期症状の手足指のむくみが出てきたら診察をうけるよう言われています。YouTubeを見ながら、自宅でトレーニングをして、運動を心がけるようにはしていますね。
編集部
発症してからの心の支えはなんですか?
はるさん
心の支えは子どもの存在です。病気が判明してしばらくは泣いていましたが、子どもたちが大きくなった姿を見たいし、子どものためにいつまでも元気でいたいと思っています。今後、病気が進行してステロイドなどを用いた治療が始まっても心の支えとなってくれるのは間違いなく子どもです。
編集部
もし、健康な時の自分に声をかけられたら、なんと言ってあげますか?
はるさん
毎日ちゃんと寝てください。身体の不調を「ストレスのせいだ」と片付けず、膠原病の疑いを持ってリウマチ内科の診察を早めに受けてください。小麦の摂取量を減らして身体にいい食生活を意識してください。
膠原病は誰にでもなりうる病気
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
はるさん
もし、お友達やお知り合いの方や、会社や電車の中で手の指先が真っ白で具合が悪そうな方がいたら気にかけてあげてください。その症状はレイノー症状といって、膠原病患者によく見られる症状です。膠原病は決して高齢者だけがなるものではなく、私のように30代から発症する事例もあります。寒い場所が苦手で、疲れやすく、外から見てもなかなか気づいてもらえない難病です。実際には体調が悪くても、カミングアウトしていない方のほうが多いのではないかと思います。「指先が白く変色するレイノー症状」を知っているだけでも膠原病の方にとっては嬉しいことだと思います。
編集部
医療従事者に伝えたい事はありますか?
はるさん
これは医療従事者に言うことではないかもしれませんが、膠原病は国の指定難病ではあるものの、私のように本格的に症状が発症していない状態では「難病医療費助成制度」が適用されません。月に一度の検査でも毎回1万円を超える医療費がかかる状況は改善してほしいです。医療従事者には、患者の状況や症状をしっかりと診察、ヒアリングしていただき、「症状が進行しても適切な治療法はあるよ」と安心させてもらえると嬉しいです。
編集部
最後に読者に向けてのメッセージをお願いします。
はるさん
膠原病は誰もがなりうる可能性がある病気です。膠原病は人によって進行スピードも症状も様々です。しかし、膠原病という診断にたどり着けるまでが大変だと感じています。私のように、診断されないまま「ストレス」と思い込んで不調に悩む方が数多くいるのではないかと思います。疑うべき症状があればすぐにリウマチ内科などを受診して検査を受けてください。病名がわかれば、それに伴う治療を受けることができます。この記事をきっかけに全身性強皮症、膠原病をひとりでも多くの方に知ってもらえると嬉しいです。
編集部まとめ
発症の不安を抱えつつ、子育てにも奮闘しながら、自分でできる努力も続けているはるさん。そうした様子などもInstagram(プロフィール参照)にあげているそうです。こうした情報発信から、膠原病についての理解や認知が若い人たちにも広がることを期待します。