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吐き気や不快感は難病指定の「好酸球性消化管疾患」が原因。違和感を放置せず胃カメラを受けて発覚…

 公開日:2023/11/29
吐き気や胃液がこみ上げるような不快感は「好酸球性消化管疾患」という難病…「少しの違和感も放置しなかったことが自分を助けた」

消化器官にアレルギー性の炎症が起こる好酸球性消化管疾患(好酸球性食道炎・好酸球性胃腸炎)は、医師に症状を伝えてもなかなか診断がつかない病気です。ですが、違和感を放置せずに検査や受診を進めたナオ(仮名)さんは、発症から短期間で診断が確定したそうです。そこで今回は、診断までの経緯や、ナオさんがどのように病気と付き合っているのかなどを聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年10月取材。

ナオさん

体験者プロフィール
ナオさん(仮称)

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1976年生まれ、岡山県在住。母と2人暮らし。2020年9月に好酸球性食道炎、同年10月に好酸球性胃腸炎と診断を受ける(特定医療費受給者証の病名は「好酸球性消化管疾患」)。現在は薬を服用し症状をコントロールしながら、発症前と変わらない日常生活を送る。発症後もフルタイムのパート勤務(事務)をしている。

梅村 将成

記事監修医師
梅村 将成(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

吐き気など不快感があり、健康診断で胃カメラを選択

吐き気など不快感があり、健康診断で胃カメラを選択

編集部編集部

病気が判明するまでの経緯を教えてください。

ナオさんナオさん

2022年9月に会社の健康診断があったのですが、その前から体の異変を感じていたのでバリウム検査から胃カメラに変更してもらいました。その時、医師から「好酸球性食道炎の疑い」を指摘され、その場で生検のためのサンプルを採取されました。その3週間後に検査結果で「好酸球性食道炎」と診断され、大学病院を紹介してもらいました。大腸カメラを受けたところ、「好酸球性胃腸炎」と診断されました。

編集部編集部

会社の健康診断を受ける前の自覚症状には、どのようなものがありましたか?

ナオさんナオさん

健康診断を受ける2カ月ほど前から、仕事終わりに突然吐き気を感じることが何回かありました。ただ、ちょうどコロナ禍だったので、「1日中マスクをつけて過ごすことに慣れていないせいで気持ち悪くなったのかな?」と思っていました。ところが、胃液が込み上げてくるような不快な症状も現れ、いよいよ精神的なものではないと確信したんです。当時、テレビのCMで「逆流性食道炎」という言葉がよく流れていたので、なんとなく自分も逆流性食道炎なのかとしか思っていませんでしたが、不安だったので健康診断のオプションであった胃カメラを受けました。

編集部編集部

では、医師からどのように治療を進めていくと説明がありましたか?

ナオさんナオさん

主治医からは「その時々の症状に合った薬を飲み続けることで、今まで通りの日常生活を送れるようにしましょう」と言われました。医療費受給者証も、医師から「新しい薬も出ているので、体質に合った薬を探すためにも、負担が少なくなるように申請をおすすめします」と言われ、申請しました。主治医自身もアレルギーを持っていたので、その説明にとても納得したのを覚えています。

編集部編集部

病気が判明したときの心境について教えてください。

ナオさんナオさん

実は、健康診断で胃カメラを担当して下さった医師は大学病院での主治医の先輩で、数年前まで好酸球性食道炎の研究をされていた方でした。年配の方でおだやかな先生だったのに、私の食道の炎症を見た瞬間「うわっ! これは珍しいよ」「大丈夫! 死なないからね」と明るい声で言われ、思わず笑ってしまいました。幸いにも耐えられないほどの症状はなく、長年患っている花粉症の延長のようなやや面倒くさい病気になったとは思いましたが、通院など生活状況の変化についていくのが精一杯、自分が難病という実感も湧きませんでした。

編集部編集部

発症後の生活変化を具体的に教えてください。

ナオさんナオさん

症状が酷い時はご飯を食べてもすぐ吐いてしまうので、「もう家族以外との外食や飲み会は無理なのかな」と悲観することもありました。ただ、当時はコロナ禍で食事の機会自体がなくなったので、寂しさを感じることはなかったです。今は症状が落ち着いたので、友人と食事にも行けるようになりました。また、会社の上司や同僚に病気の説明をしたのですが、ほかにも難病を抱えて働いている方がいたり、もともと障がい者雇用に積極的な会社だったこともあったりと、すんなりと受け入れてもらえました。その時、この会社や仲間で良かったと感じました。病名がついたことで、腹痛で遅刻する時も「自己管理ができていない人」ではなく「そういう病気だから仕方ない」と理解してもらっているので、助かっています。

薬をうまく活用しながら日常生活を送っている

薬をうまく活用しながら日常生活を送っている

編集部編集部

闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。

ナオさんナオさん

私の場合は、主治医と母の存在です。主治医からは「検査で数値には現れないようなことでも、自覚症状があるのならそれは気のせいではなく、現実に起こっていることだよ」という言葉に救われ、小さな変化や不安を何でも相談できています。あと、母の存在も大きく、せっかく外食しても嘔吐してしまう私に母が言った「8割吐いても2割はお腹に残っていたら栄養になるし、何より美味しいと思って食べられたのならそれだけで幸せだよ」という言葉は本当にありがたかったですね。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

ナオさんナオさん

健康診断で胃カメラを選択したのは良い判断だった」「何の心配もなく、好きな物を好きなだけ食べられることは幸せなことだから今を楽しんでね」と言いたいです。

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

ナオさんナオさん

朝食後に3種類、昼食後に1種類、夕食後に2種類の薬を毎日服用しています。薬の種類や量が多いですが、副作用などは特に感じていません。寝落ちしてうっかり服用を忘れると胃の不快感や調子の悪さがあるので、薬には効果がちゃんとあるんだと感じます。

編集部編集部

あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。

ナオさんナオさん

好酸球性食道炎や好酸球性胃腸炎は、見た目で分からない病気です。体調のコントロールは完璧にはできませんし、朝トイレから出られなくて遅刻したり、仕事中にトイレへ駆け込むこともあったりします。「自己管理ができていない人」ではなく、「そういう病気なんだ」という目で見ていただけるとありがたいです。

自分に合った治療方針に出会えるかどうかが大切

自分に合った治療方針に出会えるかどうかが大切

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

ナオさんナオさん

最初に胃カメラをして下さった先生や大学病院での主治医には、感謝の言葉しかありません。検査の数値や医学的知識で切り捨てるのではなく、ご自身の体験も踏まえながら患者の些細な悩みや不安に寄り添って下さる姿勢に勇気付けられていました。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

ナオさんナオさん

病気が判明したころ、ほかの大学病院についても調べていましたが、アレルゲンを徹底的に排除するという治療方針があることを知りました。以前の私なら薬を極力使用しないようにする方針に魅力を感じたと思います。ですが、今の私にとっては食事や日常生活に制限を加えることの方がよほどストレスになるので、主治医の方針を選択できて良かったです。自分に合った、納得した治療方針との出会いこそが、この病気だけでなくさまざまな病気と前向きに付き合っていく秘訣だと思います。

編集部編集部

そのほかで何か伝えたいことはありますか?

ナオさんナオさん

医療受給者証の申請のために訪れた保健所で、保健師さんから「発症から確定診断まであまりに早いですが、自身で思うところがあって医師(主治医)を直接訪ねたのですか?」と聞かれ、巡り合わせだと答えるととても驚かれたんです。あとから、この病気は確定診断までに時間がかかり、症状を訴えてもなかなか見つけてもらえない病気だと知りました。専門医や大学病院を直接訪ねることはハードルが高いかもしれませんが、自分で思うところがあるのなら思い切って行動してみることが大切だと思います。

編集部まとめ

病気に対する治療方法の選択肢は、医師によって変わるものもあります。ですが、ナオさんが言われていたように、自分に合った納得のできる治療方針と出会うことで、病気と前向きに付き合うことができることを学びました。また、健康診断の結果で数値的に異常がなくとも、違和感があれば早めに病院を受診するようにしてください。

この記事の監修医師