【闘病】「やっぱり乳がんだったか…」左胸のしこりで気づいた自分の異変と信頼できる医師との出会い
「乳がん」の罹患率は年々増加しており、女性の部位別がんの罹患数ではトップ、死亡数も上位にあります。今回お話を聞いた津野采子さんも、乳がんと闘う一人。しこりには気づいていたものの、仕事が忙しく検査へ行けなかったそうです。激痛の組織診から闘病中の支え、仕事復帰後、そして医師との信頼関係の大切さをお話していただきました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年6月取材。
体験者プロフィール:
津野 采子
大阪府大阪市在住。1971年生まれ。訪問介護事業の所長として働く。2022年4月に3cmほどある乳がんが発覚し、抗がん剤治療がスタート。薬剤性間質性肺炎も発覚し、3週間の入院後に手術と放射線治療を行い、経口抗がん剤を受ける。現在は経過観察として半年に一度の検診を受けている。
記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
目次 -INDEX-
しこりに気付いて組織診を受けた結果「やっぱり乳がんだったか…」
※市民啓発の在宅医療介護推進の舞台風景。
最前列の真ん中が津野さん。
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
津野さん
乳がんが判明する半年以上前に、左胸のしこりに気付きました。職場のスタッフからも検査するように言われ、2022年4月の健康診断でマンモグラフィ検査と組織診をして、乳がんと診断されました。
編集部
病気が判明したときの様子や心境について教えてください。
津野さん
組織診が痛くてたまりませんでした。ですが、そのおかげでようやく自分の乳がんに気付くことができました。そして、「やっぱり乳がんだったか……」と思ったのが率直な気持ちでしたね。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
津野さん
特に変化はありませんでした。抗がん剤治療を受けながら働いている人がたくさんいることを知っていたので、自分もそうしたいと思ったんです。副作用に関する不安だけありましたが、もともと体力のある方でしたので仕事を続けられました。でもそれは、スタッフの理解があったことで、みんなが一緒に走ってくれたからだと今では思います。
がんは誰でもなる可能性がある。弱い自分を守ってくれる存在のありがたさ
編集部
闘病に向き合う上で心の支えになっているものを教えてください。
津野さん
仕事仲間と友人、頼りになる主治医、薬剤師さんです。とくに仕事では、スタッフを守るのが自分の役割だったので「強い自分」であることを意識していましたが、自分が病気になってからこんなにスタッフたちが頑張ってくれて、弱くなった自分を守ってくれるのか……と感動さえ覚えました。
編集部
息子さんにはどのように伝えたのでしょうか?
津野さん
息子には直接伝えました。「がんは誰でもなる可能性がある」「がんにならなくとも、明日事故で死ぬかもしれないから、特別なことと思わないように」と。ただ、がんになったからといってすぐ死ぬわけではありません。息子は私の病気をネットで検索したら悪い言葉が出たらしく、困惑していました。
編集部
その後、息子さんとはどんなやりとりをされましたか?
津野さん
「ネット上の情報は必ずしも正しいわけじゃない」と伝えました。また、乳がんの新しい抗がん剤が最近認可され、遺伝性乳がん卵巣がんの検査をする必要が出てきました。仮に私の検査結果が陽性だと、乳がんになりやすくなる遺伝子の変化が息子に遺伝する可能性が50%になります。息子は自分の乳がんの可能性を知っておきたいといったため、検査しました。結果は陰性でしたが、遺伝性乳がんかどうかを調べることは自分の家族にも関わることなので、知っておくとよいと思います。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
津野さん
「髪の毛が抜けるとき、引っ張ったらだめ」。抗がん剤治療の影響で毛髪が抜けだすと、つい引っ張って抜き切ってしまいたくなりました。でもそうすると、地肌が傷んでひりひりしました。頭皮の保湿につとめ、丁寧に扱うべきだと思い知りました(処方される保湿剤など)。それから、「息切れには注意」です。息切れが抗がん剤の重篤な副作用と気付かず、すごく辛い思いをしました。
幸せ・不幸せは健康かどうかと比例しない
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
津野さん
健康な時を10割だとすると、今は8割くらいの体調ですが支障はありません。少し前までゼローダを最大量服用していて、倦怠感と皮膚の乾燥、足と手のひらのただれに気を付けながら生活していました。皮膚は薄黒くシミが増えました。あと、間質性肺炎が気になるので息切れにも変わらず注意していました。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
津野さん
検査を早めに受診することをおすすめします。抗がん剤は根治治療ではなく「がん細胞の縮小」が目的であり、外科的手術で取り去らないとがんは治癒しません。腫瘍が大きくなってしまうと、抗がん剤で縮小できなかった場合、部分切除ではなく胸の全摘出となります。予後が大きく変わりますし、リハビリの期間も違います。早期発見・早期治療が何よりも大切です。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
津野さん
抗がん剤の点滴室の看護師さんはいつも忙しそうでした。患者側から声を掛けられるはずもありません。ですが、がん患者をまずは相談窓口につないで、支援を途切らせないようにしてほしいです。患者は治療のために生きているのではなく生きるために治療をしています。そこを医療従事者や多くの方にわかってもらいたいです。
編集部
抗がん剤の副作用が出た際に、医師とお話されたことが印象に残っているそうですね。
津野さん
私は抗がん剤治療でそれほど多くはない副作用である「薬剤性間質性肺炎」になりました。その入院中に担当医とお話をする時間があったのですが、「先生も強い薬を使うのは怖いのだ」とわかりました。「まさかこうなるなんて思わないよね」と言われ、先生と同じ気持ちだったことが嬉しかったです。人としても信頼できるなと感じました。
編集部
読者に向けてのメッセージをお願いします。
津野さん
私たちは好きでがんになったわけではありません。でも「幸せ・不幸せは健康かどうかと比例しない」ことが、乳がんになったからこそよくわかりました。また、医療現場にいる人と患者のお互いにリスペクトがあることで、幸せな治療につながることも知りました。ぜひ、自分に合った医師を見つけて、早期発見・早期治療に取り組んでほしいと思います。
編集部まとめ
仕事を精一杯に頑張る中で突然やってきた乳がんという病気。津野さんは仕事との両立や息子さんとの対話を重ねることで、病気を乗り越えられてきました。また、津野さんから検査時に強い痛みがあった体験を共有していただきました。もちろんそのようなこともありますが、組織診は全員が激痛を感じるような検査では決してなく、ほとんど痛みなく終わることも多いそうです。診断をつけるためには、避けては通ることができないとても大事な検査ですので、医師から提案を受けた時は勇気を出して受けてください。
なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。