【闘病】全身性強皮症 「もう少し受診が早ければ…」と医師が嘆いたワケ
2011年夏頃から身体の異変に気付き、さまざまな診療科で診察を受けたものの、「全身性強皮症」という確定診断には半年ほどかかったというnorikoさん(仮称)に、治療経過や現状などについて、話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年7月取材。
体験者プロフィール:
norikoさん(仮称)
京都府在住。1979年生まれ。既婚。22歳の娘と20歳の息子(ともに取材時年齢)は2人とも独立している。趣味は編み物。身体障害者手帳は、上肢1級と下肢3級を併せて1級。
記事監修医師:
副島 裕太郎(横浜市立大学医学部血液・免疫・感染症内科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
突然の浮腫から確定診断までの半年間
編集部
全身性強皮症とはどのような病気ですか?
norikoさん
皮膚や全身のさまざまな臓器が、だんだん硬くなっていく病気です。現在は病気をコントロールしやすくなってきたようですが、原因不明で治療方法が限られている指定難病です。
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
norikoさん
ある朝突然、指がソーセージのようにパンパンに浮腫み、痛みがありました。夕方には元に戻ったので、病院には行かず様子を見ていました。でも、なかなか治らなかったので近所の内科を受診しました。
編集部
診断結果はどうでしたか?
norikoさん
MRIを撮りましたが原因は不明で、重度の貧血ではないかと言われました。鉄剤を処方されましたが、飲んでも改善することはなく、日に日に浮腫がひどくなっていきました。そのうち、夕方になっても浮腫がとれなくなり、痛みも伴った状態がしばらく続きました。
編集部
どれくらいの期間でしたか?
norikoさん
1〜2ヶ月程度です。別の内科にも行きましたが、やはり原因は不明で、利尿剤を使って様子を見ていました。指の浮腫は少し改善されましたが、なくなることはありませんでした。次に、心臓の病気が疑われるとのことで、総合病院の循環器科を紹介されました。
編集部
循環器で確定診断を受けたのですか?
norikoさん
いいえ、循環器科からは膠原病内科で診てもらうように言われました。同じ病院の、膠原病内科を受診して採血をした結果、全身性強皮症の抗体が出たため、確定診断となりました。異変に気づいてから、半年ほど経過してのことです。
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
norikoさん
ネットでいろいろ調べていたので、少し予想はしていました。治療方法が無く、進行性の病気とわかりショックでしたね。まだ子どもも小さかったので、不安もありました。
編集部
症状はどのようなものがありますか?
norikoさん
強皮症は皮膚だけでなく内臓までもが硬くなる病気で、私の場合は特に皮膚の硬化が強く出ました。1年経過したころから徐々に硬化が進み、今では指のほとんどが90度程曲がっています。足はほとんど曲げることができないので、下に物を落としても拾うことができず、地べたに座ったり立ち上がったりすることもできません。
ステロイドを使った治療から合併症
編集部
どのように治療を進めていくと説明がありましたか?
norikoさん
「強皮症の治療方法はまだ無い」と説明があり、まずは炎症を抑えるために、ステロイドを内服することになりました。医師からも「進行状況を見て、ステロイドの量を調整していく」との言葉がありました。
編集部
治療の経過は良好だったのですか?
norikoさん
1年程治療をしてきましたが、悪化する一方だったので、病院を変えて入院することになりました。さらにステロイドを増量し、リハビリを始めたところ、少し体調が良くなりました。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
norikoさん
発症から1年ほどは、以前と変わらず動けていたので、あまり変化はありませんでした。しかし、徐々に可動域が狭くなり、歩くことも大変になってきて仕事もできなくなりました。
編集部
ステロイドによる副作用はありませんでしたか?
norikoさん
入院したときにステロイドを増量して、免疫抑制剤も服用しはじめました。ステロイドを長期間飲み続けているため、白内障になり、両目を手術することになりましたね。
編集部
ほかの病気も患ったそうですね。
norikoさん
はい。子宮頸部異形成になり、子宮は全摘しました。その後、強皮症の合併症である慢性偽性腸閉塞になり、何度も入院しました。現在は専門医に診てもらいつつ、自分に合う薬を探しているところです。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
norikoさん
現在は、慢性偽性腸閉塞のせいで口からの食事はほぼできません。身体にポートを埋め込み、毎晩点滴で栄養をとっています。皮膚の硬化が強いタイプのようで、足のうらにタコや魚の目ができてしまい、長く歩くこともできなくなっています。
編集部
介助が必要な状態なのでしょうか?
norikoさん
外出時は電動車椅子を使用しています。また、着替えや入浴も1人では難しく、夫に介助してもらっています。訪問看護師や訪問リハビリに来てもらい、支援を受けながら生活している状況です。
編集部
介護や医療サービスはどのような頻度で利用していますか?
norikoさん
週2日訪問看護、週1日訪問リハビリ、月2回往診に来てもらっています。
自身の経験から伝えたい思い
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
norikoさん
早く専門医にかかるようにと言いたいです。かなり回り道をしたため、「もう少し治療の開始が早ければ……」と医師からも言われました。今もリハビリを続けていますが、一度硬くなってしまったものを治すことはなかなか難しいようです。
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
norikoさん
原因がわからず、誰でも発症する可能性のある病気です。特に女性に多いようです。治療法はありませんが、早く分かれば進行を遅らせたり、予防ができたりします。身体の様子がいつもと違うなと思ったら、すぐに受診して、専門医に診てもらってほしいと思います。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
norikoさん
患者数が少ないことと、一人ひとりの症状が違うため、治療がとても難しい病気だと思います。それでも薬だけではなく、痛みやつらさに少しでも寄り添ってもらえるとありがたいです。東京大学病院では治験も行われているようで、今後に期待しています。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
norikoさん
全身性強皮症は、あまりよく知らないという人も多い病気だと思いますが、まずは存在を知ってもらいたいです。本記事を読んで、もし疑わしい症状があったらすぐに受診してください。進行性の病気は怖いし、治療法がないとなると絶望してしまいます。でも、先生や看護師さん、家族や行政も支えてくれます。病気にならないことが一番ですが、早くわかればあとが楽になるので、定期的に健康診断にも行ってほしいですね。
編集部まとめ
norikoさんは、現在も、通院しながら経過を見ているそうです。治療が困難な病気でも、早期に対応できれば、進行を遅らせることや予防が可能なため、体調の異変に気付いたときは早めに受診するようにしましょう。