【闘病】「遠位型ミオパチー」 筋肉が萎縮していく治療法のない病 姉に続いて発症…
遺伝的な筋肉の病気である「遠位型ミオパチー」。筋疾患の多くは、体幹に近い筋から萎縮していきますが、遠位型ミオパチーは体幹から遠い筋から萎縮していくのが特徴です。発症から10年ほどで車椅子生活になると言われていますが、上田智子さんは、発症から11年が経過した今でも、一人で生活できているそうです。そんな上田さんに、病気が判明した経緯や、日頃どのようなことに気をつけて生活しているのかなどについて、話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年6月取材。
体験者プロフィール:
上田 智子
1973年生まれ、兵庫県神戸市在住。2011年11月、姉と同じ「遠位型ミオパチー」と診断される。診断時の職業はメイクや着付けなど。治療法がないため、筋力が落ちないよう気をつけながら経過観察を続けている。現在の職業は医療系のショールームで見学の案内係。
記事監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
姉に続き自分も「遠位型ミオパチー」に
編集部
まず初めに、「遠位型ミオパチー」とはどのような病気なのでしょうか?
上田さん
体幹部から遠い部分の筋肉が萎縮していく病気です。命に別状はないようですが、手足の筋力が落ちていくので、将来的には歩けなくなり車いす生活になる可能性の高い病気です。
編集部
病気が判明した経緯について教えてください。
上田さん
先に姉が遠位型ミオパチーだと診断され、そういえば自分もおかしいかもしれないと思うところもあったので検査した結果、自分もそうであることが判明しました。診断されたのは2011年11月のことです。
編集部
どのような検査を行ったのでしょうか?
上田さん
筋電図と遺伝子検査を受けました。本来なら筋生検で筋肉の一部を採取して組織を調べるそうですが、姉が同じ病気で先に筋生検を行って診断されていたからなのか、私は筋電図と遺伝子検査のみでした。
編集部
具体的にどのような部分で「おかしいな」と思っていたのでしょうか?
上田さん
つま先が上がらないのでスリッパが脱げやすかったり、つまずきやすくなったりするようになったことですね。診断される数年前に運動不足でテニススクールに通ったことがあったのですが、準備運動で軽く走っていただけで何度か転ぶこともありました。よくよく考えてみると、その頃から症状が出ていたのだと思います。姉が診断された時の症状を聞いて、自分も同じようなことがよくあったので、すぐに病院に行くことができました。
編集部
どのように治療を進めていくと医師からは説明がありましたか?
上田さん
今のところ治療法がないため、経過観察を続けています。激しい運動や筋肉を使いすぎると萎縮が進んでしまうため、気をつけながら、疲れが残らない程度に動くようにしています。
編集部
病気が判明したときの心境についても教えてください。
上田さん
姉が診断されたときにいろいろと調べていたので、そこまでの不安はありませんでした。どちらかというと姉が診断されたときの方がショックでした。
編集部
不謹慎かもしれませんが、同病の理解者が近くにいることはどう感じますか?
上田さん
姉とは住んでいる所が離れているので、年に2回ほどしか会いませんが、会うと進行具合の話をします。姉の方が進行具合は少し早いので、私はそれを参考に今後どう対策していこうか考えることができます。お互いに明るい性格なのであまり落ち込むことはなく話しています。
編集部
発症後、生活にどのような変化がありましたか?
上田さん
学生のころからスポーツをしていたのですが、まったくできなくなりました。年々重たいものを持つことができなくなってきているので、人にお願いすることが多くなってきました。
同じ病気の人の存在が心の支えに
編集部
病気に向き合う上で、心の支えになっているものを教えてください。
上田さん
同じ病気の患者の方でとても意欲的に活動してらっしゃる方や、車いすでもヘルパーさんに助けてもらいながら一人暮らしをしてらっしゃる方がいることを知ったことです。「進行しても大丈夫!」という気持ちになることができました。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
上田さん
「やりたいこと、できることを今のうちに全部やっておくように」ですね。私自身は中学時代から社会人までスポーツをしていて、やり切ったというくらいやったので後悔はあまりないですね。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
上田さん
私は幸い同じ病気の方に比べて進行は遅いようで、診断されてから11年経った今でも一人暮らしで普通に生活できています。しかし、年々確実に筋力は落ちているので、適度に動きながら今の生活を維持できるように気をつけています。薬や治療法がないので、今は筋力が落ちないように気をつけるしかないですね。
筋肉を鍛えると進行が早まってしまう危険性も
編集部
あなたの病気を意識していない人に一言お願いします。
上田さん
この病気はよくつまずくのが特徴ですが、運動不足と勘違いし、トレーニングをしてしまう方がいるかもしれません。筋肉を鍛えようとすることによって、逆に萎縮して進行が早まってしまうかもしれないので、おかしいと思ったらまずは病院を受診してみてほしいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
上田さん
現在は治療法がないので、薬の開発を頑張ってほしいです。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
上田さん
この病気になってから、様々な障害を抱えている方や病気の方と出会いました。それぞれの苦労はあるでしょうが、とても楽しそうに活発に生きていらっしゃいます。その姿を見て、とても勇気をもらいました。私もその人達のように勇気を与えられるような存在になれるよう、日々楽しんで生きていきたいと思います。突然の病気やけがで動けなくなっても、今はコミュニケーションツールが発達しているので、同じような障害と闘っている方とすぐに繋がることができます。繋がってみることで、助けてくれる人や楽しく生きていくためのヒントをくれる人など、自分にとってプラスになる人ときっと出会えると思います。
編集部まとめ
症状に個人差はあるものの、発症から11年経った現在でもお一人で生活できている上田さんの体験談は同じ病気を抱えている人に勇気を与えるのではないでしょうか。そんな上田さんが最も伝えたいことは「いつなんどき、どんな病気か発症するか予測はできません。動けるうちにやりたいことをやって、後悔のないように生きてほしいです」というメッセージでした。自分が夢中になれることに邁進し、上田さんが言うように後悔のない毎日を過ごすことができたら素敵だなと感じました。