口唇ヘルペスは市販薬で治せるのか 薬剤師が解説
疲れていたり、風邪をひいてしまったりして、気付くと唇周辺に水ぶくれのようなものができている……そんな経験がある方も多くいらっしゃると思います。これは口唇ヘルペスと呼ばれる疾患である可能性があります。よく発症する口唇ヘルペスですが、市販薬で治すことはできるのでしょうか。今回は、口唇ヘルペスの原因や症状、治療薬や再発予防について、薬剤師の齋藤さんに伺いました。
監修薬剤師:
齋藤 彩(薬剤師)
口唇ヘルペスとは 原因と症状を解説
編集部
よく口唇ヘルペスができるのですが、何が原因で発症するのですか?
齋藤さん
口唇ヘルペスは単純ヘルペスウイルス1型が原因の感染症で、口唇付近に水泡ができる病気です。初期の症状としては、口唇付近がピリピリと痛み、いくつかの水泡が現れます。多くは数日でかさぶたとなって治っていきます。
編集部
ウイルスが原因なのですね。珍しいウイルスなのでしょうか?
齋藤さん
決して珍しいウイルスではありません。幼少期に感染することが多く、日本人の7〜8割が感染していると言われています。はじめて感染したときはほとんどが無症状なので気付きませんが、一度感染すると完治することはなく、ウイルスは体内の三叉神経節に潜伏します。そして風邪や熱、ストレス等で免疫力が低下すると潜んでいたウイルスが暴れだし再発することから、「風邪の華」「熱の華」などと呼ばれます。
編集部
口唇ヘルペスはどういう治療が行われるのでしょうか?
齋藤さん
口唇ヘルペスの治療は、原因となっている単純ヘルペスウイルス1型の増殖を抑える薬での治療が行われます。治療薬には内服薬、外用薬、点滴薬があります。
口唇ヘルペスは市販薬で治るのか
編集部
口唇ヘルペスは市販薬で治すことはできますか?
齋藤さん
口唇ヘルペスは自然治癒しますが、薬を使った方が治りは早く、重症化せずに済みます。10日前後が治療の目安です。口唇ヘルペスは治療して症状は治まりますが、一度感染したウイルスは神経細胞の中に潜伏します。ウイルスを体から完全に排除することはできないので、風邪やストレスで免疫力が低下したり、皮膚に疱疹ができたりすると再発してしまいます。
編集部
再発の口唇ヘルペスは市販薬が使えるのですね。どんな市販薬があるのでしょうか?
齋藤さん
医療機関で処方してもらえる口唇ヘルペス治療薬は内服薬もありますが、市販薬は外用薬のみで、内服薬はありません(2022年8月時点)。有効成分はアシクロビルとビダラビンの2種類になります。いずれも第1類医薬品なので、薬剤師から販売してもらわないと入手できません。外用薬を塗るタイミングとしては、食事で薬がとれてしまわないように、食事の後や就寝前がおすすめです。
編集部
外用薬は軟膏とクリームがあると思いますが、どちらが良いですか?
齋藤さん
購入するときに軟膏とクリームどちらが良いか迷いますよね。アシクロビル含有製剤、ビダラビン含有製剤ともに軟膏とクリームがあります。軟膏は刺激が少なく皮膚を保護する作用があるため肌に優しいですが、べたつきがあります。クリームは伸びが良いので塗りやすいですが、軟膏と比べると少し刺激があります。症状が重かったり、水泡が裂けていたりするような場合はクリームだと刺激を感じることもあるので、軟膏がおすすめです。
口唇ヘルペスでの受診目安は? 再発予防法も併せて解説
編集部
口唇ヘルペスの感染が疑われたら、病院やクリニックを受診した方がいいのでしょうか?
齋藤さん
初感染の場合は医療機関を受診し診断してもらい、治療を早期に開始するようにしましょう。治療は早ければ早いほど、その後体内に潜伏するウイルスの量を減らすことができ、再発の回数を減らせる可能性があります。口唇の症状の程度によって、内服できそうであれば内服、難しそうであれば点滴での治療が行われます。
編集部
再発の場合はどうでしょう?
齋藤さん
再発の場合、頻度が少なく症状が軽度であれば外用薬での治療も可能です。口唇ヘルペス治療薬は市販薬もありますが、過去に医療機関で口唇ヘルペスと診断され治療を行ったことがある場合にのみ薬剤師から購入できます。再発頻度が高かったり、症状が重度だったりする場合は内服薬での治療がメインとなります。
編集部
再発予防のために何をすればいいですか?
齋藤さん
まずは適度な息抜きでストレス解消や疲労回避をすることが大切です。口唇ヘルペスはストレスや疲労で免疫力が低下したときに再発しやすくなります。忙しくてなかなかリラックスする時間がとれないという方もいるかもしれませんが、日常生活の中に少しでも息抜きの時間をつくれるよう工夫してみてください。また、強い紫外線を避けることも重要です。紫外線は皮膚が炎症を起こし、口唇ヘルペスが再発しやすくなります。外出するときは帽子をかぶったり、日焼け止めを塗ったりようにしましょう。紫外線をカットできるリップクリームも販売されているので、活用してみてくださいね。
編集部まとめ
本記事では口唇ヘルペスの原因と症状、治療に使用できる市販薬や再発予防についてお伝えしました。再発の症状が出たらできるだけ早く薬を塗り、改善がなければ医療機関を受診するようにしましょう。また、再発予防では日々の生活が大切です。仕事や家庭で忙しく時間に追われることの多い人もいるかと思います。ストレスをゼロにすることは難しいかもしれませんが、うまく息抜きして体を休めてくださいね。