【闘病】風邪のようなダルさは「命を落とす可能性もある」ギラン・バレー症候群だった
28歳でギラン・バレー症候群を発症したyokoさん(仮称)。発症から11年経過した今でも後遺症が残り、体調万全の日はないそうです。そんなyokoさんが伝えたいことは「手足に重りがついているようなだるさを感じたらすぐに受診してほしい」ということ。風邪と似ているので初めは気づきにくいですが、早ければ早いほど後遺症は残らないそうです。そこで、ギラン・バレー症候群の症状や医療従事者への思いなど詳しく聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年4月取材。
体験者プロフィール:
yokoさん(仮称)
東京都在住、1983年生まれ。夫、子ども、姑と同居。診断時の職業は3tトラック運転手。2011年6月にギラン・バレー症候群(軸索型)を発症。入院し、免疫グロブリン療法を開始。現在も後遺症やほかの病気の併発などで体調に波があり、多くの薬を服用しながら生活を続けている。
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
全身のだるさに見舞われ、ギラン・バレー症候群を発症
編集部
ギラン・バレー症候群と診断されたときの経緯について教えてください。
yokoさん
体がだるかったので、クリニックを受診して尿検査と血液検査を受けましたが、風邪とは診断されず、大きい病院(内科・外科・整形外科などがあり、救急にも対応できる病院)へ行くように指示され、その日に受診しました。そこではレントゲンを撮り、今度は大学病院へ行くように指示され、翌日に大学病院を受診したところ、風邪ではなくギラン・バレー症候群かもしれないと言われました。
編集部
そのときはまだ「可能性」の話だったのですね。
yokoさん
はい。ですが、2日後に再度受診し、MRIなどの検査を受けて、正式に軸索型のギラン・バレー症候群の診断がつき、入院と治療が始まりました。ギラン・バレー症候群には軸索型と脱髄型の2種類あるそうです。日本ではほぼ同じくらいの割合で発症しているそうです。
編集部
具体的にどのようなだるさだったのか教えてください。
yokoさん
全身がだるかったです。特に両手足にはそれぞれ5kgくらいの重りをつけているようなだるさがあり、階段を降りられず、母が帰宅するまで飲み物を飲みに行ったり、トイレに行ったりすることもできませんでした。
編集部
大学病院ではどのような検査をしたのでしょうか?
yokoさん
初めて受診した日は診察のみで、ビタミン剤とリリカ(神経系の薬)を処方されました。生の鶏肉を食べていないか、下痢などの症状がなかったかを聞かれました。また、握力や手足の力の入り具合、振動が分かるか、手足首・肘・膝をコンコンと軽く叩いて反応があるか(腱反射)などを調べました。2日後に受診した際は、初日同様、握力、手足首・肘・膝の腱反射の検査に加えて髄液検査、造影剤を使用してのMRI検査、レントゲン検査を行いました。
編集部
医師からはどのように治療を進めていくと説明がありましたか?
yokoさん
まずは免疫グロブリン療法を行い、症状次第で血しょう交換に変更すると言われました。私は免疫グロブリン療法で症状が落ち着いたので、血しょう交換はしませんでした。
編集部
入院中はどのような治療をしたのでしょうか?
yokoさん
大学病院受診2日後に自宅で歩くことがままならなくなり、階段を降りることもできなくなったため、母と母の友人の車で救急病院を受診しました。診断がついた当日から約2週間はICUに入院し、1回目の免疫グロブリン療法を行いました。その後一般病棟へ移動し、リハビリをしながら回復の様子を見ましたが、体が思うように動かなかったため、2クール目の免疫グロブリン療法を開始しました。
編集部
2回目の免疫グロブリン療法は効果がありましたか?
yokoさん
はい。2回目の免疫グロブリン療法後、リハビリを続け、体調も安定するようになりました。あとはリハビリを頑張るのみとなったので、8月上旬にリハビリ病院へ転院しました。その後、ストレスによるメニエール病を発症してしまいましたが、10月には退院することができました。入院していた大学病院でリハビリを2か月行いましたが、その後はやっていません。
現在も多くの薬を飲みながら生活している
編集部
病気が判明したときの心境について教えてください。
yokoさん
初めて聞く病名だったので、驚きと「治るのか」という不安がありました。
編集部
現在の体調や生活の様子について教えてください。
yokoさん
ギラン・バレー症候群の後遺症が残り、体調が万全な日はありません。体力や腕力などは元に戻らないので役職を変更しての復職でしたが、体調にも波があり続けられませんでした。また、3〜4年前に多発性硬化症になり、現在は慢性疲労症候群も患っています。そのせいもあって、今でも朝・昼・晩にたくさんの薬を飲んでいます。大変なことも多いですが、それでも家族と友達に支えられながら日々を過ごしています。
編集部
ギラン・バレー症候群は治っていないということでしょうか?
yokoさん
当初に現れた強い症状からは回復しましたが、ギラン・バレー症候群の後遺症で手足の痺れや感覚障害が残っています。手で触って洗濯物が乾いているのか、濡れているのか判断できなかったり、熱さが分からず火傷したりすることもあります。
後遺症の程度や症状が一人ひとり違うということを知ってほしい
編集部
ギラン・バレー症候群を意識していない人にメッセージをお願いします。
yokoさん
ギラン・バレー症候群になる確率は低いですが、いつどんな病気になるかは誰にも分かりません。難病になると生命保険に加入したり、内容を変更したりもできないので、そうなる前にお守りだと思って生命保険は加入した方がよいと思いました。ギラン・バレー症候群は、発見や治療が早ければ早いほど後遺症は残りづらくなります。手遅れになると命を落とす可能性のある病気なので、手足に重りがついているようなだるさを感じたらすぐに病院へ行ってほしいです。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
yokoさん
トイレに行く介助をお願いするためにナースコールを押したのですが、来て早々に看護師さんが「忙しいんだから女の人が良いとかワガママなこと言わないで」と言われたことは悲しかったです。多くの患者さんは病気で自由を奪われ、傷ついていると思うので、冷たい言葉や態度はしないでほしいなと思いました。ただ、その人以外はとても優しく、嫌な顔はまったくせず「遠慮しないでナースコールしなさいよ」と言ってくれて、転院先にお見舞いに来てくれた人もいました。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
yokoさん
ギラン・バレー症候群は、後遺症の度合いや症状が人によって違います。まれに、ギラン・バレー症候群からほかの病気へ移行することもあるそうです。実際私が入院していたリハビリ病院の5人のギラン・バレー症候群患者は、全員発症状況、経過、治療、リハビリ内容、後遺症は違いました。そういう病気だということを知っておいてもらいたいです。
編集部まとめ
yokoさんの話を聞いて、自分の体調を日頃から把握し、少しでも違和感があったら早めに受診することが大切だということに改めて気づかされました。また、お守り代わりとして生命保険に入っておいた方がよいというyokoさんの言葉は、とても説得力がありました。何事も起きてから行動するのではなく、備えておくことが大切です。