【体験談】「自傷行為に走ったことも…」 3つの難病を抱え子育てするシングルマザー
子どもの頃から運動神経が鈍かったという闘病者の三浦さんは、やがて大人になり、結婚して子どもも授かったものの、後に離婚を経験。母子家庭となりながら、3つの病気(シャルコー・マリー・トゥース病[CMT]、シェーグレン症候群、関節リウマチ)が見つかりました。複数の病を抱えながらエステティシャンとして仕事も頑張る彼女に、病気との生活について話を聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年4月取材。
体験者プロフィール:
三浦 綾音
埼玉県在住。11歳(取材時)の息子と二人暮らし。エステティシャンとして働いている。11年前にシャルコー・マリー・トゥース病を患い、そこから2年後の9年前にシェーグレン症候群と関節リウマチを抱えることになった。
記事監修医師:
村上 友太
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
3つの難病が解るまで
編集部
病気が判明した経緯について教えて下さい。
三浦さん
長男の出産後より手先の痺れが気になりだし、近くの神経内科のクリニックを訪ねました。すると、大学病院を紹介され、そちらを受診することになりました。言われるままに受診したところ、「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」と診断され、血しょう交換療法と免疫グロブリン静注療法を受けましたが、まったく改善は見られませんでした。
編集部
聞いていた病名とは異なりますね。
三浦さん
はい。その後、電気生理学的検査や遺伝子検査を行い「シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)」だという事がわかり、同じ大学の脳神経内科のお世話になることになりました。
編集部
シェーグレン症候群と関節リウマチはどのように発覚したのですか?
三浦さん
脳神経内科にて、CMTの投薬治療が始まりました。その頃は、手足の痺れ以外に、トンカチで叩かれたような痛みが出るようになっていて、ほぼ寝たきりの生活になっていました。そこで骨のがんの可能性があると医師から指摘され、抗がん剤などの投薬が始まりました。抗がん剤の副作用と戦いながら、数ヶ月が経ちましたが痛みは取れず良くなりませんでしたね。治療方針に納得が出来なかったのでセカンドオピニオンをお願いし、紹介状を書いていただきました。
編集部
セカンドオピニオンはどうでしたか?
三浦さん
はじめて訪ねた日に、エコー検査、血液検査を行い、その日のうちに「関節リウマチ」と診断されました。ガムテストにてシェーグレン症候群も診断されました。即日免疫抑制剤の注射や投薬が始まり全身の痛みが弱くなって来ました。
3つの難病治療と薬の副作用
編集部
CMTはどのような病気ですか?
三浦さん
この病気は遺伝子異常の病気で、現在100種類以上の原因遺伝子が見つかっています。原因の遺伝子の型によりますが、私の型は1A型という型で、約20%の方が将来車椅子になると言われています。主に手足の痺れ、感覚の鈍り、筋肉の萎縮があり、階段に躓きやすかったり、スリッパが脱げやすかったり、よく転んだりします。治療法がないので緩やかに進行していきます。私は亡くなった母からの遺伝ではないかと考えています。
編集部
シェーグレン症候群についても教えて下さい。
三浦さん
自己免疫疾患で膠原病の一種です。涙腺、唾液腺をはじめとする全身の外分泌腺に慢性的に炎症が起こり、外分泌腺が破壊されてドライアイやドライマウスなどの乾燥症状が出現する病気です。私は関節リウマチとの合併なので二次性シェーグレン症候群です。ドライマウスなので食事をとる時に口がパサパサするので大量の水分がないと食事がとれません。
編集部
関節リウマチについて教えて下さい。
三浦さん
こちらも自己免疫疾患です。痛み、倦怠感、こわばりが全身におきます。関節の痛みが酷く、階段の昇り降りペットボトルの蓋を開ける時ドアノブを回す時など日常のちょっとした動きに痛みが伴います。特に指や手首の関節を動かす時ギシギシ言う感じがして、自分がロボットになったみたいです。関節が炎症を起こし軟骨や骨が破壊されて関節の機能が衰えてきます。動かさなくても痛みがあり、私の場合リウマトイド結節というしこりのような物が、掌にできています。
編集部
どんな治療を受けていますか?
三浦さん
CMTについてはアスコルビン酸を投与しています。神経痛のお薬も飲んでいます。シェーグレン症候群も治療法がまだありませんので、症状に応じた対症療法を行っているほか、ビタミンCを摂ったり、目と口が乾くので目薬や人工唾液を使用したりしています。また、口内炎が酷いので塗り薬を使っています。リウマチには毎日の投薬のほか、免疫抑制剤の自己注射を2週間に1度打っています。
編集部
治療薬の副作用などはありますか?
三浦さん
免疫抑制剤の注射をしているので、感染症には弱いですね。以前、体内に細菌が入り一気に体内に広がり腎盂腎炎になった事もあります。腎臓だけでなく肺などにも炎症が広がり4週間以上の入院をしました。入院中は免疫抑制剤の治療を止めなければならなかったので、リウマチの治療を始める前の辛さを久しぶりに味わいました。
病気が判明してから現在までの暮らし
編集部
病気が判明したときの心境を教えてください。
三浦さん
CMTが見つかった時、死に至る病気ではないと知り、最初は安堵しました。ただ、将来車椅子になるかもしれないことや、装具を付けたり、生活に様々な支障が出たりする病気だと知ったときに、かなり落ち込みました。
編集部
発病後に離婚も経験されたと聞いています。
三浦さん
はい。息子が5歳のころに離婚することになり、「難病を抱えたまま私が1人で子育てができるのか」という不安から、自傷行為に走ってしまったこともあったのですが、主治医さんや訪問看護の方が支えてくれました。
編集部
そんな中での心の支えは何でしたか?
三浦さん
息子の存在は大きいです。手作りでお守りを作ってくれたり、優しい言葉をかけてくれたり、本人も寂しいはずなのに、私の事ばかり心配してくれます。また、私のエステサロンに来てくださる常連のお客様もとても心配してくれて、励まされています。
編集部
最近の体調はどうですか?
三浦さん
よく物を落とし、よく転ぶのは変わらずなので、注意して生活しています。足先の感覚も鈍く、怪我にも気付きにくいです。特に感染症には注意をしながら日常生活を送っています。関節の痛みは治療によって悪化はしていないものの、常に関節が痛く、普通の身体ではないと日々実感しています。
編集部
あなたの病気を知らない人に伝えたいことがあれば聞かせてください。
三浦さん
困っている人やヘルプマークをつけている人がいたら、声をかけ、助けてあげていただきたいです。障害がある人への理解を少しでも深めていただけたら幸いです。私の場合、見た目だけだとまさか難病を3つ抱えている患者には見えないと思います。公共交通機関を使う時は『ヘルプマーク』を鞄につけますが、気が付かない方がほとんどです。あとこれも経験からですが、疑問に思うことがあればセカンドオピニオンも受けてほしいと思います。
編集部
医療従事者へのメッセージなどはありますか?
三浦さん
医療従事者様には本当に感謝しています。入院した際、看護師さんは一晩中背中をさすってくれました。優しい声と笑顔に本当に救われました。また、心から信頼できる医師だったからこそ今の生活があり、今の私があると思っています。
編集部まとめ
三浦さんは、壮絶な人生と3つの難病を持ちながら、プライベートでも大変な経験を乗り越え、現在、サロンを開いてエスティシャンとして頑張っています。今後、医療が発展し、治療法も確立され、三浦さんがご子息と共に幸せな人生を送られることを心より願っております。