【体験談】耳の聞こえにくさ、耳鳴りはやがて「メニエール病」と判明
「耳が聴こえにくい状態」というのは、症状としては比較的想像しやすいかもしれません。そしてそれは、多くの場合、そこまで辛い症状として認識されないかもしれません。akkoさん(仮)もそんな1人でした。「難聴というとただ耳が聴こえにくくなる印象だった」というakkoさんは、突発性難聴そしてメニエール病を経験して、初めて「音そのものが変質」したり、平衡感覚にも影響が出たりすることを実感したそうです。当時の体験を聞かせてもらいました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年2月取材。
体験者プロフィール:
akkoさん(仮称)
1977年生まれ。神奈川県在住。医療従事者。2021年に耳鳴りと平衡感覚の乱れを感じ耳鼻科を受診すると、突発性難聴と診断されるも、治療により症状は消失。その後、同様の症状が再発し、メニエール病と診断された。
記事監修医師:
磯野 志真(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会所属 耳鼻科医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
「換気扇どこか調子悪いの?」
編集部
最初に不調を感じたのはいつですか?
akkoさん
2021年8月初旬頃です。医療現場で仕事をしているのですが、平日は仕事に追われていました。さらに、義父の入退院や在宅介護に向けての調整を私が行なっていたり、娘の部活のこともあったり、週末もほぼスケジュールがいっぱいという生活が1カ月以上続いていました。そんなときでしたね。
編集部
具体的にどういった状況だったのでしょうか?
akkoさん
その日は、講義のための資料作りで一日中作業をしていて、ひと段落した16時頃に事務室に行った際、やけに換気扇の音が耳に響いてきました。「換気扇、どこか調子悪いの?」とほかの職員に聞いたところ、「気にならないですけど……」と返事されました。18時過ぎに仕事が終わり、帰宅する際のラジオの音もガンガンと響いて聞き取りにくく、耳鳴りかなと思いながら、その日は早く寝ました。もともと、疲れているときなどに、時々耳鳴りが出ていたので。翌朝起きると、明らかに右耳に水が溜まっているような違和感があり、突発性難聴だと思いました。早期の治療開始が改善率に影響することも知っていたので、急いで耳鼻科を受診しました。
編集部
耳以外の症状は何かありましたか?
akkoさん
平衡感覚が乱れるような症状がありました。一般的には「回転性のめまい」と表現されるのですが、私の場合はグルグル回転するようなめまいというよりも、飛行機に乗った時のように体の中に圧がググっと加わり、痛みはないのですがクラクラするような感覚になりました。
編集部
受診から診断までの経緯を教えてください。
akkoさん
聴力検査をしてもらうと、右耳の低音域の聴力が明らかに低下していて、「経過からも突発性難聴です」と診断され、すぐにステロイド点滴を開始することになりました。医師からは入院して治療するよう勧められましたが、とにかく忙しく、状況的にそれが難しかったので、通院させてもらうことになりました。3日間は外来で点滴をしてもらい、そのあと10日間のステロイド内服治療で症状は消失し、聴力も戻ったため、一旦治療が終了となりました。
編集部
ステロイドの治療が効いたのですね。
akkoさん
最初の3日間は常時ボワーンとした耳鳴りに加えて、換気扇の下など陰圧がかかる場所や重低音の音楽を聞くと、キーンとした強い耳鳴りや、先ほどのようなめまいが出てきて立っていられなくなるほどでしたが、治療が効いて徐々に軽減していきました。特に6日目あたりから良くなっている実感がありました。
治療終了から一転、突然の症状再発
編集部
その後どうなったのですか?
akkoさん
9月中旬に再び右耳の違和感が発生したのです。前回と同様にボワーンとした耳鳴りと、換気扇のそばに行くとクラクラする感じがしました。この時も急いで翌日に受診し、聴力検査でやはり低音域の聴力低下がみられました。「症状が再び出現したということは別の病気の可能性が高い」と言われ、検査の結果、メニエール病と診断がつきました。
編集部
メニエール病とは?
akkoさん
めまいや耳鳴り、難聴を主症状とする病気です。原因は不明ですが、疲労やストレスで誘発されやすいとされていて、内耳にあるリンパ腔に水が溜まり、腫れることで起きることが多いようです。
編集部
どのように治療するのですか?
akkoさん
ステロイドが使われることが多いようですが、私の場合は聴力の低下が軽度だったため、メニエール病の治療用に使われる利尿剤を内服して対応することになりました。「難聴で利尿剤?」と思われるかもしれませんが、内耳の中に溜まっている水を尿として排出するためだそうです。
編集部
その時の心境を教えてください。
akkoさん
利尿剤の内服のみで、ひとまずは大丈夫そうだと聞いてホッとしました。突発性難聴でステロイド治療を経験し、日常生活における制限や副作用が多いことを知っていたので、できれば使いたくなかったからです。
「変だな?」と思ったら、先送りにしないで検査することが大事
編集部
病気の前後で、何か変化しましたか?
akkoさん
もともと体調管理は気をつけている方でしたが、「一番大事なのは自分の身体」だと再認識しました。聴力も生活する上で本当に大事だということと、スケジュールが詰まってきた時はより体調に気を配ること、そして異常を感じたらすぐ対応することが大事だと強く実感しました。
編集部
現在の体調や生活はどうですか?
akkoさん
耳も含めて体調にはすごく気をつけているので、現在の調子は良好です。ただ、新型コロナウイルスの影響で、仕事の負荷が非常に重くなってきており、「そろそろまたどこかに異変が起きるかもしれない」という不安も持ちつつ、無理しないように生活しています。
編集部
医療機関や医療従事者に望むことはありますか?
akkoさん
命に別状はないものでも、例え症状が軽くても、原因が分からない病気になると不安を感じる患者さんは多いと思います。そういった不安を取り除くためにも、薬や治療について、どんな作用があるか、その都度丁寧に説明することはやはり大切だと思いました。
編集部
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
akkoさん
それまでは、難聴というとただ耳が聴こえにくくなる印象でしたが、音そのものが変質することもあり、それはとても苦痛を感じるということが分かりました。身体はどの部分でもやっぱり大事なので、「変だな?」と思ったら、先送りにしないで検査することが大事だと思います。
編集部まとめ
医療専門職であり、耳が平衡感覚を司っていることは知識として知っていたakkoさんも、実際に感じた症状の数々はとても苦痛だったとのことでした。そして、原因がわからない病気になる不安もあったと話してくれました。一番大事なのは自分の身体!と再認識したとのことですが、やはり「変だな?と思ったら、先送りにしないで検査することが大事」ですね。